食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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6章 不吉な気配

06 逃亡開始!

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 杖の先に魔力が集まっている。
 ……のが、ハッキリと分かるんだけど!?

 あの、僕、魔力関連は異世界人なのでからっきしなハズ。

 それなのに、めちゃくちゃ魔力が集まっているのが見えて怖いー!

「恐怖に震えていますね。ですが、今更撤回しても遅いです」
「……安心してよ。それだけは何があっても絶対にしてやらない」

 怖いけど、少なくとも僕を死なせるわけにはいかないはずだ。
 彼らの目的を達成するためには。
 だから、下手に僕を傷つけることだけはしないよ。

「ふふっ……まさか、死なないとタカをくくってはいませんか?」
「え?」
「半分正解。半殺し程度まで痛めつけるのは、許可されていますので」

 前言(下手に傷つける件)撤回。
 やっぱり痛いのは嫌です。

「さて、どこから貫いて差し上げましょうか」

 集まった魔力が、次々と刃に変化してゆく。
 う、うわぁ……これに1本刺さるだけでゾッとしかしない。

(いや? 待てよ)

 絶体絶命の大ピンチではあるけど。

(逃げ出すチャンスは、今しかない!)

 両足首にあるこの鎖を、ラテジアさんの攻撃で破壊できれば……!

「そうですね。手が使えなくなれば、下手な気も起こさないでしょう」

 くるっ!
 ラテジアさんが、杖を振り下ろすと僕に向かって魔力の刃が飛んできた。

 僕は自分の足元にある鎖を掴む。

 バチッ、と痛みが走るけど……ここは我慢だ!
 向かってくる刃へ、鎖を引っ張って前に出す。

 ―――ガキンッ! バリバリ!

 魔力の刃が、鎖と衝突すると同時に、一瞬で砕け散った。

「よしっ! うまくいった!」
「喜ぶのはよろしいですが」

 ジリジリと、ラテジアさんは僕との距離を詰めてくる。
 そう、ここまでは第一段階といっていい。
 問題はここから。

「鎖が破壊される程度で、逃げられるとでも?」

 先ほどとは異なり、複数の魔力の刃が、僕を包囲する。
 ……さてと、落ち着け僕。

 冷静に、リベールとの自衛特訓を思い出せ。

(大丈夫。大丈夫。逃げ足だけならば、サッカー部で鍛えた脚力と体力がある)

 決意と共に、ラテジアさんを睨む。

(リベールたちと合流するまでは、絶対に逃げ切ってみせる!)

 作戦? もちろん、ノープラン!
 そもそも、こんなことになること自体が僕は想定外。

 リベールたちなら、ワンチャン想定していたかもだけど。

 そんなことを今さら悔やんでも仕方ない。

「さぁ、貫かれなさい」

 次から次へと魔力の刃が僕に向かってくる。
 1本、また1本と順番に回避するけど……やっぱり素人じゃきつい。
 次々と、腕に、膝に、顔に、赤い筋が増えてゆく。

「意外に粘りますね」
「伊達にサッカー部やってないんでね。身のこなしだけは自信があるんだ」

 とはいえ、限度はある。
 まずはこの部屋から脱出をしないとだけど……

 距離を詰められたせいで、既に壁際。
 わずか左に窓が見えるけど、高さ的に2階、かな。

(正面突破が厳しいのはわかるけど……他には……)

 僕は再び窓を見る。
 そのまま、周囲の様子を確認。
 日も落ちて、真っ暗だけど……中庭っぽいかな。

(……、ココに逃げるしかないか)

 中庭っぽい場所には、少し背の低い木や茂み。
 中央には噴水があって、そこから水があふれ出ている。
 意を決して、僕は窓に向かってダッシュする。
 そのまま、勢いよくジャンプして

「おーりゃ!」
「なっ!?」

 ラテジアさんの驚きの声を背に、僕は窓を蹴り破る。
 いやー、憧れるよねこういうのってさ。
 こう、バリーン! と窓を割って、味方のピンチに駆け付ける主人公。

 現状の問題点は、窓を割って室内に入る、ではなく、窓を割って外に飛び出す、だけど。

「あとは、近くの木を掴んで、落下速度を少しでもマシに……!」

 落下しながらも、目的の木が見えて、僕は手を伸ばした。
 がしっ、と掴むと同時に、右腕に相当な負荷がかかる。

「いっつ」

 痛みで思わず眉を顰める。
 そりゃそうだよね。
 腕でこんな無茶なことを……滅多にないわけだし。

 だけど、これで……!

「よい、しょっと!」

 自分の右腕を犠牲にしつつ、なんとか地面に着地する。
 これで本格的に逃げられる!

 そう思って、駆け出そうとした瞬間、あちこちに魔法陣が現れる。

「ずいぶんとお転婆な子ですね」

 追いかけるように、ラテジアさんも窓から飛び出して追いかけてきた。

「しかし、この程度で逃げ切ることができると本当にお思いで?」
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