食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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6章 不吉な気配

07 準備は整った

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 さすがに、この数の魔法陣をなんとかする手段はないんだけど!?
 インクも持ってきてない、というか、持っているわけもないし。

「鬼ごっこをご希望のようですし、これならどうです?」

 魔法陣が光りだすと同時に、触手のようなものがあちらこちらから現れた。
 いやいやいや、なんだよこれー!

「うわっ!? いや、さっきよりもこれ、きっつい……!」

 致命傷にならない代わりに、もっと厄介というか。
 普通に捕まるだけでもかなりマズイ予感しかしないんですけどー!

「どこか、触手が追ってこれなさそうな……あそこ!」

 少し先に別の場所へと続く扉を発見した。
 屋敷の構造はサッパリだけど、まずは外に出ないと始まらない。

 逃げ切るためにも、まずはあの扉を通る!

(魔法陣の場所から、伸びる距離にだって絶対に限界があるはずだし!)

 無かったら怖すぎるのであってください。
 扉に辿り着き、ドアノブをひねる。
 予想に反してアッサリと開き、僕は中へ逃げ込む。

 振り返り、即座に扉を閉めると、すさまじい衝突音が聞こえてきた。

 思ったより頑丈な扉で助かった……

「ふぅ……一安心。いや、できないよねこれ」

 大ピンチだったけど、予想以上にうまく逃げられてしまった。
 その点だけが、引っかかる。

(……ここ最近、同じような違和感ばかり。ということは)

 まだ、なにかある。
 しかも、ここへ逃げ込んだことで発動するなにかが。

「もしかしなくても……僕、誘導されちゃった、よね」

 けど、進むしかない。
 薄暗い中、右手を壁にあてながら、慎重に前に進んでゆく。
 明かりがあればいいけど……どこだ?

「室内の暗さ……これはこれで、めっちゃ怖いよな」

 僕、閉所恐怖症とか、暗所恐怖症はないはずなんだけど。
 それでも、明かりの無さと不安は、ホラー的な恐怖を煽ってくる。

(リベール……)

 ふと、脳裏に彼の顔が浮かぶ。
 今ごろ、僕が帰っていないことに気づいたのだろうか。
 心配して、国内を走り回っていたりする、のかな。

(彼に連絡する手段があればいいのに……)

 無意識に自分の左手が、胸元へゆく。
 すると、急にネックレスが光りだした。

「まぶっ!? え、どうして急に」

 慌てて胸元から宝石部分を取り出すと、赤と青の部分が光り輝いている。
 理由はわからないけど……これは助かった。

「……ありがとう、リベール」

 これで、早く移動ができる。
 僕はネックレスの光を頼りに、足早に室内を進んでいく。

 ……んだけど、ここ、広すぎ!

 中庭があった時点で、かなり広い場所だと気付くべきだった。

「見取り図でもあれば、少しは……ん?」

 歩き続けた先で、突然、開けた場所に出た。
 扉とかも一切なく、本当に急に。

 まるで体育館のように広くて、なんでもできそうな感じがする。

 分かりやすく説明すると、小学校の1年生~6年生全員が入ってもOK、ぐらいの。

「どこだろう、ここ」
「どこだと思う? 最後の鍵」

 僕の独り言に対し、返事があった。
 思わず身構え、周囲を確認するけど、声の主は見当たらない。

(……どこかで聞いた声だったような)

 しばし考え込み、気付く。

「あの時の、黒いローブの! どこだ、どこにいる!?」
「君の後ろさ」

 え!?
 慌てて振り返ると、そこには見覚えのある黒いローブがあった。
 フード部分から、わずかに覗かせる目は、歓喜の色で染め上がっている。

「ようこそ。まさか自らココに来るとは……ラテジアはうまくやったようだ」
「みずから……? なにを」
「気づいていないのかい? こんな広さの場所を用意している理由が」

 まぶしい光が、一瞬で視界をおおう。
 思わず目をつむり……少しの後、ゆっくりと目を開けると。

「……なっ!?」

 巨大な魔法陣。
 その大きさは、人が1人収まる程度じゃない。

 百人単位で入りそうなほど、すさまじく巨大な魔法陣の上に、僕はいた。

(まずい!)

 本能が危険だと、警告している。
 慌てて引き返そうとしたが……

「おっと、逃げるな。ラテジア」
「はい。逃がしませんよ、チカさん」

 いつの間に!?
 声のする方を見ると、おかしそうに笑うラテジアさんの姿が。
 彼が杖を振ると、先ほどまで中庭にいた触手たちが、再び現れる。

「くっ……!」

 何とか逃げようとしたけれど

「うわっ!? くそっ、離せ……!」

 回避しきれず、ついに捕まってしまった。
 ズルズルと魔法陣の中央まで引き戻され、きつく束縛される。

「さて、準備はこれでよろしいでしょう」
「そうだな。今から他の仲間たちを呼んでくる、鍵の見張りを頼むぞ」
「もちろんです」

 そういうと、黒いローブの人は姿を消した。
 会話の内容からするに、同じ生き残りたちを連れてくるんだろうけど……

(どうしよう……逃げる方法が、思いつかない……ッ!)
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