食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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7章 大規模異世界召喚

01 発動

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 魔法陣の中央に、触手で拘束されてしまった僕。
 目の前には、ラテジアさんや黒ローブの人を含め、5名が集まっていた。

 みんな、融合してしまった異世界の人たち。

(100人は呼ばれていたって話なのに、これだけしか……)

 ぱっと見は、普通の人にしか見えない。
 冒険者風の人や、ごくごく一般人として過ごしていた人。
 見覚えのある鎧の人までいたのには、ちょっと驚いたというか。

(ディルのいた騎士団にも、紛れ込んでいたってわけか)

 リベールたちも注意を払っていたわけだ。
 思った以上に、いろんな場所に伏兵がいたのか。

(で、そういう人が近くにいる以上、下手に動けなかった)

 ギルド襲撃事件。
 あの時、ディルがあの場に居合わせたのは偶然じゃなく、敵の策略。
 どおりで情報が妙におかしかったわけだ。

 ……さて、そろそろのんきに状況考察するのをやめよう。

「あのさ、僕のコレ、外してほしいんですけど!」
「逃げるでしょう?」
「まぁ、逃げるけどさ、全力で」
「却下します。我々の帰還にチカさんは付き合っていただきます」

 わかっちゃいたけど、一刀両断すぎる。

「というか、せめて教えてよ。今から何をやることの詳細ぐらい!」
「……黙れ。お前はそこにいるだけで終わる」
「あなたは我らの帰宅を手助けする道しるべですからね」

 ラテジアさんが近づいてくる。
 右手に、わずかに魔力を貯めながら。

「さて、最後の仕上げです。本当に、逃げなければよかったものを」
「なにを……ッッ!」

 ドンッと体に衝撃が走る。
 同時に喉に熱いものがせりあがってきた。
 苦しくなって、げほっ、と吐き出すと……それは血だった。

「……ッ、つっ!」

 遅れて、腹部から痛みが伝わってきた。
 僕は視線を下に向けると……ラテジアさんの魔力で貫かれた右腹が見えて……

 ズキズキズキズキ

 怪我を認識した瞬間、さらに痛みが増す。

「これで準備は整った」

 ポタポタ、なんて可愛いものじゃない。
 ボトリという音が似合うほど、僕の血が床に広がってゆく。
 それが呼び水なのか。
 魔法陣が、強く光り輝きだした。

「……これ……けほっ」
「君の血は、遠い遠い、無限ともいえる世界の中から、目的地へまっすぐと続く」

 そこから、無数の光が現れ、僕の右腹へ向かって、さらに貫いた。

「ッッ……!」

 体から力が抜ける。
 なんだ、これ。
 何かが、抜き取られる……よう……な。

「……すけ……て……リベ……」

 意識が……途切れそうだ。
 何とかしたくても、何も、できない。

 胸元にあるペンダントが、わずかに光る。

(ペンダント……何だろう、温かい……?)

 その光の影響なんだろうか。
 少しだけ、ほんの少しだけ、痛みが引く感じがする。
 いや、もう痛みで感覚が麻痺しただけかもしれないけれど。

「さぁ、準備は整った! 我が主よ、我々を元の世界へ!」
「うむ」

 カツン、カツン、と足音が響く。
 視界がぼやけて、誰がやってきたのか、分からない。

「ご苦労だったな」

 痛みが和らいだおかげで、視界が戻ってきた。
 僕が正面を見ると……

「エスピ……オン王弟……殿下……」

 そこにいたのは、エスピオン王弟殿下。
 そうだよね。
 タイミング的に、完全にグルだったもん。

 ただ、僕らにとって露骨な情報が多すぎたせいで、うまくごまかされていた。

「やっと帰れる!」
「あぁ、子供たちは元気にしているのかしら。早く会いたい!」
「元の世界に戻ったらジャンクフードを食べまくるんだ!」
「エスピオン様! 早く!」

 融合された人たちが、次々と声を上げた。
 エスピオン王弟殿下は、右手を軽く振って静かにするように伝える。

「あぁ、今からやるとしよう。お前たち、兵器の姿になりなさい。それでは分離できない」

 その言葉に従って、彼らはそれぞれ姿を変える。
 天使だったり、悪魔だったり、龍だったり、鬼だったり。
 様々な種類のモンスターに、彼らは変化した。

 全員の変化を見届けると、エスピオン王弟殿下は杖を構え。

「これより、そなたらを生贄に、第二次大規模異世界召喚を行うッ!」

 ガシャン! と、魔法陣の外周から鉄の棒がせり上がってきた。
 そのまま僕らがいる中心、その頂点で結合。

 これは、閉じ込める為の檻。

 もしくは、鳥かごの完成である。

「なっ!? エスピオン王弟殿下!?」
「15年の献身、ご苦労であった。安らかな死と、新たな素材を呼びこむための栄誉を与える」
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