食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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7章 大規模異世界召喚

05 攻防戦(※リベール視点)

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 チカがラテジアたちを説得している間、リベールたちは苦戦していた。

「兄様! 大丈夫ですか!?」
「気にするな。お前はそのまま攻め続けろ、ディアルソート」

 吹き飛ばされたリベールは、唯一抵抗していたディルにそう指示する。

「ちぇっ、やっぱ現役の騎士団長様の方が強いわな」
「それには同意するよ、アフェク。常に訓練しているディルに利があって当然だ」

 自身に回復の魔術を使いながら、リベールは立ち上がった。

「しかし、あの強さは……やはり複数のモンスターと融合したせいか」
「よくもまぁ、でたらめなことするよな。薬の飲み合わせ、みたいなノリかよ」

 デメリットがん無視とか、こえぇ……と、アフェクは愚痴る。
 口には出さないものの、リベールも同意見だ。

 メリットとメリットだけを得ることは、難しい。
 必ず、何かしらのほころびが出てくるのは明白。

「異世界の人たちが1種のモンスターだけに留めたのも、それが禁忌である故だしな」
「あー……最初期に複数やって、ズタボロ案件ってやつか」
「よく覚えてたな、ディル。どちらにしろ、早く決着をつけないといけない」

 最悪のパターンは、エスピオンを捕獲しそびれること。
 これは『この場から逃亡され、逃がしてしまう』という意味ではない。

(おそらく、叔父上は相当なリスクを負っている)

 逃亡先となるのは、国外などと生易しいものではない。
 死人に口なし。
 黄泉への逃亡ともなれば、さすがのリベールたちもどうしようもない。

「行くぞ、アフェク……いや、アルフェクエール」
「おうよ」

 2人は同じタイミングで床を蹴り、戦闘へと再び参加した。

「避けろ! ディアルソート!」
「はい!」

 後ろを振り返ることなく、ディルは自身の軸をずらす。
 リベールは右から、アフェクは左から。

 僅かにタイミングをずらし、払い抜けのようにエスピオンを攻撃した。

 2人の攻撃に続くように、ディルも魔力を練り上げ

「"雷よ、貫け!"」

 それを投げるように、エスピオンに向けて放った。
 バチバチと火花を散らしながら、四肢に雷が突き刺さるのだが

【くっ、くくく……容赦がない。だが、生かすことが前提ゆえに】

 余裕の笑みを浮かべるエスピオン。
 痛覚を感じていない雰囲気に、リベールたちの表情が悪くなる。

【ぬるい!】

 膨大な魔力から放たれた衝撃波で、3人の動きが止まる。

【そんな部分は、兄と同じだな。愚かな甥っ子たちよ】

 停止した瞬間を狙い、複数の触手がリベールたちに向かってくる。

「くっ……アルフェクエール、合わせてくれ。"風の刃よ、切り裂け!"」
「あいよ! "氷結よ、散らばれ!"」

 互いに別属性の魔術を放つことで、吹雪が触手に向かって吹き荒れる。
 動きが鈍くなった瞬間を突いて、ディルが一瞬で近づいてきた分を切り裂いたが……

「兄様。正直、まずいと思います」
「あぁ、わかっている。叔父上の体が、少しずつ崩れているからな」

 見ると、複数体のモンスターと融合した代償なのだろうか。
 ボロボロと、エスピオンの体が崩れ始めていた。
 それに気づいているのか、いないのか。
 エスピオンは攻撃の手を緩めず、時に魔術で、時に触手でリベールたちを攻撃する。

【なかなかに粘る。なら、そんなお前たちに1つ、プレゼントでもやろう】

 パチン、と指が鳴らされる。
 その音に反応するかのように、エスピオンの隣に魔法陣が現れ……

「なっ!?」
「……叔父上、良くも我々の神経を逆なでしますね」
【懐かしいだろう。今となっては肖像画だけでしか微笑まない存在は】

 1人の女性が姿を現した。
 意思を宿さない目。
 人形のように、ピクリとも動かないが……その人物は

「母上……!」
【さて、こいつは盾だ。従順な盾。これを殺さなければお前たちは……】

「リベ……じゃなかった。王子様たち、避けてください!」

 そこに、チカの声が響いた。
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