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5話
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ちょっと!ちょっと!なんですの!?その顔!?やめて、顔が赤くなっちゃうわ。
そもそもがグリッツ・アレン様は私の好みど真ん中なのですわよ?
なにより強い殿方ですもの。
私の理想だわ。
そんな方にこんな甘い表情されたら結婚して!とつい口走りたくもなるわ!!
そもそもなんでそんな表情を私に向けてくれてるのかが分からないわ!!
あら、これは私の妄想なのかしら?
アレンの表情があまりにも破壊力があり、グレイシアは脳内でパニックに陥る。
それでも表情が変わらないのは流石に侯爵令嬢といったところだろうか。
「私は、グリッツ・アレン辺境伯です。ご令嬢、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「え?あ…申し遅れました。私はユール侯爵が娘のグレイシアと申します。グリッツ辺境伯様の輝かしいお噂は予々…」
グレイシアは綺麗なカーテシーをしながら挨拶をした。
「私の事はどうかアレンとお呼び下さい。グレイシア嬢とお呼びしても?」
「ぜひ、グレイシアとお呼び下さいませ。では、私はアレン様と呼ばせて頂きますわ」
アレンの薄く笑った笑顔はまるで魔性の男のようだ。
グレイシアは見惚れるのを必死に我慢して1番の笑顔を浮かべた。
やったわ!何故か分からないけどアレン様とお近付きになれたわ!
内心ウハウハである。
ちらりと令嬢達に目を遣ると悔しそうな表情を前面に、なんだか複雑な表情をしている。
「話は聞かせて貰ったぞ。まったく…嘆かわしい…」
ホールの最奥から重々しい、威厳のある声が聞こえた。
グレイシアとアレン、そして令嬢達と周りの貴族達は声の主に視線を集める。
この国の国王、リンデール・シン王だった。
その傍らには王妃であるカレン様と王太子であるジルバート様。
周りとアレン、グレイシアはその姿を認めた瞬間に頭を下げた。
「よい、面を上げよ」
顔を上げたグレイシアは陛下と視線が交わる。
厳つい顔だが、目尻は優しく下がっていた。
「ユール・グレイシア嬢、そなたは正しい事をした。本当に悪習というのは頭が痛いよ…」
やれやれと頭を押さえながらグレイシアに声を掛ける王は本当に頭が痛い思いだった。
辺境伯が田舎者だなんだのは本当にどこから捻じ曲がったんだと独りごちる。
確かに国境を守っているからなかなか中央には戻っては来れないが、この国が平和なのはひとえに辺境伯のお陰と言っても過言ではないのだ。
特に、この様な情勢になってからは特に辺境伯のお陰だというのに中央の貴族共は…と悪態も吐きたくなる。
「いえ、本当の事を申しただけでございます」
グレイシアはカーテシーをしながら頭を下げた。
「ユール家にはいつも世話になっておる。アレン殿。この様な空気の悪い場所に呼び出してすまなかった」
王はグレイシアには和やかに笑い、アレンには頭を下げた。
周りは王が頭を下げるなんて…と騒めき出す。
「いえ、元々こうなる事は分かっていましたから。陛下、頭を上げて下さい。私はむしろこうなったお陰でグレイシア嬢を知る事が出来ましたから」
アレンはグレイシアを見ながらそう応えた。
相変わらず澄んだ青い瞳をとろりと蕩けさせている。
私はそんな表情をされる事を何かしたかしら?本当に謎になってきたわ。
あまり手放しに喜ぶのも如何なものか…
グレイシアは内心首を傾げる。
「なんだ、アレンもグレイシア嬢狙いなのか?グレイシア嬢は是非とも俺の妃にと思っていたのだが、アレンには敵わないからなぁ」
ジルバートは理想の王子様そのままの金髪に金色の瞳の素晴らしい美貌を持った風貌をやれやれと肩を竦めながらアレンに気安く話しかけた。
そもそもがグリッツ・アレン様は私の好みど真ん中なのですわよ?
なにより強い殿方ですもの。
私の理想だわ。
そんな方にこんな甘い表情されたら結婚して!とつい口走りたくもなるわ!!
そもそもなんでそんな表情を私に向けてくれてるのかが分からないわ!!
あら、これは私の妄想なのかしら?
アレンの表情があまりにも破壊力があり、グレイシアは脳内でパニックに陥る。
それでも表情が変わらないのは流石に侯爵令嬢といったところだろうか。
「私は、グリッツ・アレン辺境伯です。ご令嬢、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「え?あ…申し遅れました。私はユール侯爵が娘のグレイシアと申します。グリッツ辺境伯様の輝かしいお噂は予々…」
グレイシアは綺麗なカーテシーをしながら挨拶をした。
「私の事はどうかアレンとお呼び下さい。グレイシア嬢とお呼びしても?」
「ぜひ、グレイシアとお呼び下さいませ。では、私はアレン様と呼ばせて頂きますわ」
アレンの薄く笑った笑顔はまるで魔性の男のようだ。
グレイシアは見惚れるのを必死に我慢して1番の笑顔を浮かべた。
やったわ!何故か分からないけどアレン様とお近付きになれたわ!
内心ウハウハである。
ちらりと令嬢達に目を遣ると悔しそうな表情を前面に、なんだか複雑な表情をしている。
「話は聞かせて貰ったぞ。まったく…嘆かわしい…」
ホールの最奥から重々しい、威厳のある声が聞こえた。
グレイシアとアレン、そして令嬢達と周りの貴族達は声の主に視線を集める。
この国の国王、リンデール・シン王だった。
その傍らには王妃であるカレン様と王太子であるジルバート様。
周りとアレン、グレイシアはその姿を認めた瞬間に頭を下げた。
「よい、面を上げよ」
顔を上げたグレイシアは陛下と視線が交わる。
厳つい顔だが、目尻は優しく下がっていた。
「ユール・グレイシア嬢、そなたは正しい事をした。本当に悪習というのは頭が痛いよ…」
やれやれと頭を押さえながらグレイシアに声を掛ける王は本当に頭が痛い思いだった。
辺境伯が田舎者だなんだのは本当にどこから捻じ曲がったんだと独りごちる。
確かに国境を守っているからなかなか中央には戻っては来れないが、この国が平和なのはひとえに辺境伯のお陰と言っても過言ではないのだ。
特に、この様な情勢になってからは特に辺境伯のお陰だというのに中央の貴族共は…と悪態も吐きたくなる。
「いえ、本当の事を申しただけでございます」
グレイシアはカーテシーをしながら頭を下げた。
「ユール家にはいつも世話になっておる。アレン殿。この様な空気の悪い場所に呼び出してすまなかった」
王はグレイシアには和やかに笑い、アレンには頭を下げた。
周りは王が頭を下げるなんて…と騒めき出す。
「いえ、元々こうなる事は分かっていましたから。陛下、頭を上げて下さい。私はむしろこうなったお陰でグレイシア嬢を知る事が出来ましたから」
アレンはグレイシアを見ながらそう応えた。
相変わらず澄んだ青い瞳をとろりと蕩けさせている。
私はそんな表情をされる事を何かしたかしら?本当に謎になってきたわ。
あまり手放しに喜ぶのも如何なものか…
グレイシアは内心首を傾げる。
「なんだ、アレンもグレイシア嬢狙いなのか?グレイシア嬢は是非とも俺の妃にと思っていたのだが、アレンには敵わないからなぁ」
ジルバートは理想の王子様そのままの金髪に金色の瞳の素晴らしい美貌を持った風貌をやれやれと肩を竦めながらアレンに気安く話しかけた。
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