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16 リハビリ
しおりを挟む学園のクラスメイト達も、入れ替わり立ち替わり見舞いに来てくれた。毎日、誰かしら訪ねてくれるので、思ったほど療養生活は退屈なものではなかった。
そのうち、私は立ち上がれるようになり、歩行の訓練を始めた。
なぜかマーガレット様が歩行訓練の計画を細かく立てて指導してくださっている。マーガレット様が作った計画書には《リハビリ計画》と書かれていた。”リハビリ”って何だろう? 何かの略語だろうか?
王宮医師にもご自分の意見をどんどんおっしゃるマーガレット様。医師もたじたじだ。”リハビリ計画”は、完全にマーガレット様主導で行われることになった。マーガレット様は「昔取った杵柄なのよ」と意味不明のことをおっしゃっていた。「キネヅカ」って何? 異国語かしら?
マーガレット様が考案されて職人に作らせたという不思議な”リハビリ器具”なる物が我が家に運び込まれ、私は毎日歩行訓練に取り組んだ。
訓練が終わった後、私の足を丁寧にマッサージしてくださるマーガレット様。
「申し訳ありません。マーガレット様にこんなことまでして頂いて」
私は恐縮していた。他人をマッサージするなど、公爵家令嬢がすることではない。
「いいのよ。マッサージはコツが要るから、侍女に任せたくないの」
「……ありがとうございます」
私の為にこんなに一生懸命になってくださって……フローラ、感激!
「マーガレット様、一生ついていきます!」
「ほほほ。やだわ。フローラは王太子妃になるのよ。私は公爵夫人になるのだから、ついていくのは私の方よ」
「そういう立場は関係ありません。気持ちの問題ですもの」
「まぁ、フローラったら。でも、そうね。気持ちの上では私にとって貴女は可愛い妹だものね。貴女が王太子妃になっても、ずっと可愛い妹だわ」
い・も・う・と? マーガレット様の妹!? きゃ~っ!!
「嬉しい! マーガレット様が私のお姉様ならどんなに幸せだろう、って子供の頃から夢想しておりましたの!」
「ほほほ。フローラは本当に昔から私を慕ってくれているのね。嬉しいわ」
幸せ~。マーガレット様~。好きです~。マーガレット様のマッサージがあまりにも気持ち良くて、私はそのままヨダレを垂らして寝てしまった。
私はすっかり以前と同じように歩けるようになった。王宮医師とマーガレット様のおかげである。医師は王宮に戻り、マーガレット様のリハビリ指導も終了した。私は休学していた学園に復学し、中断していた王宮での王妃教育も再開された。
今日は王妃教育の授業の後、バルド様と王宮の南庭を散歩している。
「バルド様、もう痛みも全くありませんの。ほら、スイスイ歩けますのよ」
得意気に歩いてみせる私。
「フローラが歩いてる……可愛い」
「ほほほほほ。歩けるって素晴らしいですわー!」
「良かった。フローラが完治して本当に良かった」
私を抱きしめるバルド様。
「やっと思いきりフローラを抱きしめられる」
私もバルド様の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。また一段とガッチリして逞しくなられましたのね。ドキドキしますわ。
「フローラ」
「はい」
「お前、また胸がデカくなったな」
このセクハラ野郎!
手を繋いで南庭を歩く私たち。
「フローラ、キスしていいか?」
「勿論ですわ」
バルド様は、私の唇にほんの少し触れるだけの口付けをした。バルド様のキスはいつもそう。正直、物足りない。私は不満気な表情を浮かべていたようだ。
「どうした? フローラ?」
「いえ、別に」
「俺とキスするのがイヤか?」
何故そうなる?
「逆ですわ」
「えっ?」
「もっと情熱的なキスをしてくださいませ」
言っちゃったよ。はしたないと思われたかな?
バルド様は、相変わらずの鋭い目で私をじっと見つめた。
「お前、その台詞、後悔しても知らないからな」
へっ? どういう意味?
「フローラ、遠慮していた俺がバカだった」
そう言うと、バルド様はいきなり私に噛み付くようなキスをしてきた。ひぇ~!? 何度も何度も私の唇をむさぼるように激しいキスをするバルド様。ついには、バルド様の舌が私の口をこじ開けて侵入し、私の舌をとらえて絡みつく。んん? 腰に……腰にキますわ。
身体に力が入らなくなった私は崩れ落ちそうになる。なのにバルド様は私の腰を支えて抱きかかえると、なおも私の唇をむさぼろうとする。
「殿下! いい加減になさいませ!」
少し離れたところで見守っていた従者が止めに入った。
「やり過ぎです! フローラ様がぐったりされているではありませんか!」
その言葉にバルド様はハッとした表情になり、
「フローラ、すまない。大丈夫か?」
と、私に声をかけた。
「だ、大丈夫ですわ……ゼィゼィ……今日はこのくらいで勘弁して差し上げますわ」
自分から「情熱的なキス」を求めたのだ。虚勢を張る私。
「フローラ、無理しなくていい。すまなかった。俺がやり過ぎた」
バルド様はそう言うと、優しいキスを一つ私の額に落とした。
何だかちょっと悔しいですわ。同い年なのに、何、その余裕!?
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