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chapter:3.
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その日の戦況は、いつもとは打って変わった緊張感がそこら中にひしめいていた。
いつもは俺達白の軍が優勢なハズなのだが、今日は黒の軍がやたらと強かった。特に前線に出ている兵たちにとっては驚異的な敵将が出てきたのだ。恐らくは、これまでの戦況に対しての敵側の戦力増強というのが俺達白の軍の共通意見だった。
今日の黒の軍でまず一番の脅威はエレンという黒のビショップだ。俺とブレイドと同じ僧正階級の男で、武器はブレイドと同じ鎌だった。後方で軍全体の戦況を観察していた俺は、そのエレンの立ち振る舞いや戦い方にブレイドに似たものを感じたが、彼の金の髪に紫の瞳を確認して、一瞬浮かんだ「ブレイドが黒に寝返ったのでは」という考えは払拭された。エレンの固有能力は未だに確認出来てはいないが、昼日中の行軍で確認できないという事はおそらく影や闇に関した能力か治癒系の能力ではないかと推測できる。
次に脅威となったのはリンゲージという黒のルーク。メルセデイズと同じ『戦車番』のはずの彼だが、今回は戦車と自身の武器であろう鎌を手に前線へ乗り込んできた。彼の登場により、こちらの軍も戦車の投入を余儀なくされ、リンゲージとメルセデイズの戦車による砲弾合戦が始まってしまい、敵味方関係なく歩兵は逃げ惑うしかないという地獄絵図と化してしまった。
さらに、砲弾合戦の際、メルセデイズの固有能力である「音を操る能力」が使用されたことにより、やはり敵味方関係なく「声」による軍統制が取れなくなり敵軍の連携を解除出来たのは好都合だったが、同時に敵側にメルセデイズの固有能力がバレてしまったという懸念もある。
レオンハルトは最初こそいつもの様に優勢に闘っていたが、エレンの登場によりかなり苦戦を強いられたようだ。互いの武器である鎌を交わえながらの戦いこそ互角だったが、レオンハルトはさらに固有能力も使用しての戦闘で、何とか五分五分な戦闘。エレンの固有能力の内容次第では、最悪前線で我が軍の実質的エース・レオンハルトが討ち取られる危険性すら出てきたのだ。これには軍上層部も大いに慄(おのの)いたことだろう。
結局のところ、今日の戦果としてはガートレイの作った結界を利用しての我が軍の敗走、と言うのが正しい見解なのではないかと思っている。
そしてそれは、現段階で軍を任されているシエル騎士官も同様に思っているのではないかという俺の見解は間違いではないだろう。
事実、俺達に撤退の指示を出したのは他でもないシエル騎士官なのだから。
「シエル騎士官、どういう事ですか」
今日の戦果を報告しに行くと、仁王立ちしている女性に声を掛けられた。シエル騎士官と同じナイト階級のアルテミシア……実はあのメルセデイズの実姉でもある、女性にして騎士官にまで上り詰めた女傑。どうやら怒っているようだが、今日の戦果では仕方のないことなのかもしれない。ちなみに、アルテミシアは騎士という身分にもかかわらず、固有能力の都合により主に後方支援に回ることが多いという、かなり変わった戦歴の持ち主でもある。
「どうもこうも、俺は軍の損害を最小限に留める為に決を下しただけだが」
「確かに、生きてさえいれば私の能力で再び戦場に兵を戻すことは可能です。しかし、私が言っているのは、今日、戦車を投入する意味はあったのかという事です。戦車は温存しておいた方が資源も節約できますし、」
「では、君は、戦車を投入せず、無意味に兵を死なせるべきだった、と言いたいのか。それは采配としてはおそらく最悪の部類だ。愚策とすら言えんよ」
正直に言うと、騎士官二人に板挟みにされ口論をされている上に、さらに言えば戦果報告に同伴するような身分ですらない俺は、かなり居辛い空気だ。しかも、口論している二人は我が軍屈指の毒舌家二人と来ている。
「……シエル騎士官、自分は席を外しましょうか」
「構わんウェイルド、そこに居ろ」
逃亡を試みようとしたが、与えられた指示はその場で待機、つまりはこの生き地獄で突っ立っていろという事だ。
「あら、もしかして、メルの言っていた『面白いヒト』って、そこの#僧正_ビショップ_#さんかしら?」
どうやらメルセデイズは姉に俺の事を話していたらしい。思わぬ方向からの追撃に、シエルがあからさまに舌打ちする。
「は、メルセデイズ城将官からどのような報告がなされているかは解りかねますが、自分は僧正階級の兵であることに間違いは」
「あら、堅苦しいお話の仕方は止して? メルのお友達なら、#私_わたくし_#のお友達も同然ですわ」
そう言って、シエルには向けることの無かった笑みを向けてくるアルテミシア騎士官。やはり血は争えないのか、戦場という場には似つかわしくない上品さを兼ね備えている姉妹だと思う。
「ねぇ、#メル_妹_#のお友達の#僧正_ビショップ_#さん。お名前を教えて下さらない?」
「は、自分は……」
「あら、堅苦しいのはナシってさっき申したばかりでしょう? 今のは上官命令ではなく、友人としてお尋ねしたのだけれど?」
「……僕はウェイルド。消えた友人を捜している」
「改めまして、アルテミシアよ。大切な人を守りたいの」
扱いづらい姉妹だ。心の底からそう思う。そして、常日ごろからこんなやり取り(いや、多分もっと火花の散った激しいモノだろう)をしているであろうシエルが憐れに思えてしまった。
「ところで、今は王も女王も出かけているのだけれど。……戦果報告なら私が承るわよ、シエル騎士官?」
あぁ、最悪だ。
【後書き】
人物データ
エレンは黒のビショップ。金の髪に紫の瞳。武器は鎌。闇を操る事が出来る。厳しい性格。黒のナイトとはライバル。願い事は「不老不死」です
リンゲージは黒のルーク。オレンジの髪に黄緑の瞳。武器は鎌。未来予知をする事が出来る。二重人格な性格。白のポーンとは親友。願い事は「過去をやり直す」です
アルテミシアは白のナイト。白の髪に亜麻色の瞳。武器はハンマー。怪我を癒す事が出来る。夢見がちな性格。白のルークとは血縁関係。願い事は「大切な人を守る」です
チェス盤戦争http://shindanmaker.com/286476より
2014年11月7日 初出、小説家になろう投稿
いつもは俺達白の軍が優勢なハズなのだが、今日は黒の軍がやたらと強かった。特に前線に出ている兵たちにとっては驚異的な敵将が出てきたのだ。恐らくは、これまでの戦況に対しての敵側の戦力増強というのが俺達白の軍の共通意見だった。
今日の黒の軍でまず一番の脅威はエレンという黒のビショップだ。俺とブレイドと同じ僧正階級の男で、武器はブレイドと同じ鎌だった。後方で軍全体の戦況を観察していた俺は、そのエレンの立ち振る舞いや戦い方にブレイドに似たものを感じたが、彼の金の髪に紫の瞳を確認して、一瞬浮かんだ「ブレイドが黒に寝返ったのでは」という考えは払拭された。エレンの固有能力は未だに確認出来てはいないが、昼日中の行軍で確認できないという事はおそらく影や闇に関した能力か治癒系の能力ではないかと推測できる。
次に脅威となったのはリンゲージという黒のルーク。メルセデイズと同じ『戦車番』のはずの彼だが、今回は戦車と自身の武器であろう鎌を手に前線へ乗り込んできた。彼の登場により、こちらの軍も戦車の投入を余儀なくされ、リンゲージとメルセデイズの戦車による砲弾合戦が始まってしまい、敵味方関係なく歩兵は逃げ惑うしかないという地獄絵図と化してしまった。
さらに、砲弾合戦の際、メルセデイズの固有能力である「音を操る能力」が使用されたことにより、やはり敵味方関係なく「声」による軍統制が取れなくなり敵軍の連携を解除出来たのは好都合だったが、同時に敵側にメルセデイズの固有能力がバレてしまったという懸念もある。
レオンハルトは最初こそいつもの様に優勢に闘っていたが、エレンの登場によりかなり苦戦を強いられたようだ。互いの武器である鎌を交わえながらの戦いこそ互角だったが、レオンハルトはさらに固有能力も使用しての戦闘で、何とか五分五分な戦闘。エレンの固有能力の内容次第では、最悪前線で我が軍の実質的エース・レオンハルトが討ち取られる危険性すら出てきたのだ。これには軍上層部も大いに慄(おのの)いたことだろう。
結局のところ、今日の戦果としてはガートレイの作った結界を利用しての我が軍の敗走、と言うのが正しい見解なのではないかと思っている。
そしてそれは、現段階で軍を任されているシエル騎士官も同様に思っているのではないかという俺の見解は間違いではないだろう。
事実、俺達に撤退の指示を出したのは他でもないシエル騎士官なのだから。
「シエル騎士官、どういう事ですか」
今日の戦果を報告しに行くと、仁王立ちしている女性に声を掛けられた。シエル騎士官と同じナイト階級のアルテミシア……実はあのメルセデイズの実姉でもある、女性にして騎士官にまで上り詰めた女傑。どうやら怒っているようだが、今日の戦果では仕方のないことなのかもしれない。ちなみに、アルテミシアは騎士という身分にもかかわらず、固有能力の都合により主に後方支援に回ることが多いという、かなり変わった戦歴の持ち主でもある。
「どうもこうも、俺は軍の損害を最小限に留める為に決を下しただけだが」
「確かに、生きてさえいれば私の能力で再び戦場に兵を戻すことは可能です。しかし、私が言っているのは、今日、戦車を投入する意味はあったのかという事です。戦車は温存しておいた方が資源も節約できますし、」
「では、君は、戦車を投入せず、無意味に兵を死なせるべきだった、と言いたいのか。それは采配としてはおそらく最悪の部類だ。愚策とすら言えんよ」
正直に言うと、騎士官二人に板挟みにされ口論をされている上に、さらに言えば戦果報告に同伴するような身分ですらない俺は、かなり居辛い空気だ。しかも、口論している二人は我が軍屈指の毒舌家二人と来ている。
「……シエル騎士官、自分は席を外しましょうか」
「構わんウェイルド、そこに居ろ」
逃亡を試みようとしたが、与えられた指示はその場で待機、つまりはこの生き地獄で突っ立っていろという事だ。
「あら、もしかして、メルの言っていた『面白いヒト』って、そこの#僧正_ビショップ_#さんかしら?」
どうやらメルセデイズは姉に俺の事を話していたらしい。思わぬ方向からの追撃に、シエルがあからさまに舌打ちする。
「は、メルセデイズ城将官からどのような報告がなされているかは解りかねますが、自分は僧正階級の兵であることに間違いは」
「あら、堅苦しいお話の仕方は止して? メルのお友達なら、#私_わたくし_#のお友達も同然ですわ」
そう言って、シエルには向けることの無かった笑みを向けてくるアルテミシア騎士官。やはり血は争えないのか、戦場という場には似つかわしくない上品さを兼ね備えている姉妹だと思う。
「ねぇ、#メル_妹_#のお友達の#僧正_ビショップ_#さん。お名前を教えて下さらない?」
「は、自分は……」
「あら、堅苦しいのはナシってさっき申したばかりでしょう? 今のは上官命令ではなく、友人としてお尋ねしたのだけれど?」
「……僕はウェイルド。消えた友人を捜している」
「改めまして、アルテミシアよ。大切な人を守りたいの」
扱いづらい姉妹だ。心の底からそう思う。そして、常日ごろからこんなやり取り(いや、多分もっと火花の散った激しいモノだろう)をしているであろうシエルが憐れに思えてしまった。
「ところで、今は王も女王も出かけているのだけれど。……戦果報告なら私が承るわよ、シエル騎士官?」
あぁ、最悪だ。
【後書き】
人物データ
エレンは黒のビショップ。金の髪に紫の瞳。武器は鎌。闇を操る事が出来る。厳しい性格。黒のナイトとはライバル。願い事は「不老不死」です
リンゲージは黒のルーク。オレンジの髪に黄緑の瞳。武器は鎌。未来予知をする事が出来る。二重人格な性格。白のポーンとは親友。願い事は「過去をやり直す」です
アルテミシアは白のナイト。白の髪に亜麻色の瞳。武器はハンマー。怪我を癒す事が出来る。夢見がちな性格。白のルークとは血縁関係。願い事は「大切な人を守る」です
チェス盤戦争http://shindanmaker.com/286476より
2014年11月7日 初出、小説家になろう投稿
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