CHECK!

華月蒼.

文字の大きさ
5 / 9

chapter:4.

しおりを挟む



 俺は召喚した#飛龍_ワイバーン_#に跨り、空から戦況を眺める。黒の軍からエレンとリンゲージという二人の兵士が出現した日から、白の軍が優勢に翻ることはなかった。温存していた戦車は全て駆り出され、各兵の異能力も出し惜しみは無し。

 レオンハルトもまだ辛うじて戦線から離脱してはいないが、ここのところの負傷具合から、彼の戦線離脱は時間の問題だろう。彼(エース)の離脱はすなわち、白の軍の敗北を認めるようなモノではあるため、軍上層部はなかなかその判断を下さないでいるが。

 戦線の佳境から、オレの「ブレイド捜索」の行動は打ち切らざるを得なくなり、元々戦場に出ていたシエル騎士官だけではなく、あのアルテミシア騎士官までもが現場に出てくるという、かなり苦しい状況。当然、騎士官からの情報の横流しは途切れ、オレは最近では大斧を手に召喚した魔物に跨り前線に出張ることが多くなっていた。

 今日召喚した魔物の中には、高位魔族の一種であるエルフやドワーフ等もいた。エルフは身体能力のみならず魔法にも長けていると聞くし、ドワーフも(理由は良くわからないが)敵対しているらしいエルフとさえ距離を置かせれば斧やハンマーなどでの物理攻撃力が強い。
 他にも今跨っている飛龍のようなドラゴンも召喚出来たので、兵が減り戦力が削がれつつある戦場にとってはかなりの戦力になるのではないかと思い、彼らには自由に黒兵を狩るように指示を出し基本的に放置することにしている。
 下手にオレが指示を出して統制するよりも、魔物たちの本能に任せた方が良いことを、オレはとうに学んでいた。



 上空にいるオレや飛龍たちに向けて放たれた黒軍の砲弾を適当にあしらい、手軽に潰せそうな黒兵を探す。
 戦場の脇に潜んでいる#歩兵_ポーン_#を発見した。青い頭髪のその兵士目掛けて大斧を上空10m程から投げ落とす。地上に降りて、その歩兵が息絶えている事を確認する。見開かれた亜麻色の瞳に生気は既に宿っておらず、オレの大斧は彼の項(うなじ)から足元までをまっすぐに貫いた様子。この#歩兵_ポーン_#は何も異能を発動させなかったのだろうか? そんな疑問をふと感じたが、退場した兵士の事を思っても何にもならない。
 オレは大斧を回収するとすぐにまた飛龍に跨り、上空へと飛び立つ。
 次の#黒兵_エモノ_#を見つけなければ。

 と思った矢先、飛翔したオレの顔のすぐ横を、槍がかすめていく。どうやら他の黒兵が近くに潜んでいたらしい。
 槍が飛んできたと思しき方向を見やると、そこには紺色の頭髪の女兵士がいた。こちらを睨んでいるその瞳は薄くてよくわからないが桃色だ。桃色の瞳を見て、自軍の騎士官を思い出すが、今は己を発見した敵兵の排除を急ぐべきだ。

「何処に潜んでたんだ? 気配も無かったな」

 彼女の近くに降り立つと、暗に歩兵を見殺しにしたのかと問う。
 女は2本目の槍を構えると、こちらを見据えて言う。――兵装を見る限りでは、彼女は#騎士官_ナイト_#のようだ。

「我々の目的はあくまでも『この戦争に勝利すること』だ。歩兵一人に構ってなどいられまい」

 桃色の瞳がわずかに潤んでいるようにも見えたが、女兵士は一人気丈にふるまっている。それに、彼女の言う事も正論だ。自分の願いを叶えるためとはいえ、どのみち戦争に「勝たなければ」その願いだって叶わないのだ。……もっとも、歩兵を失い過ぎても戦況は著しく苦しいモノになるのだが。

「我が名はツクヨミ。黒軍#騎士官級_ナイトクラス_#にして一番槍」
「我が名はウェイルド。白軍#僧正官級_ビショップクラス_#にして参謀」

 オレは彼女の意志を汲み、飛龍を空へと飛び立たせ、大斧を構える。

 互いに相手の呼吸を読み、出撃のタイミングを計る。
 ……相手は接近戦と機動力に長けた#騎士官_ナイト_#、こちらは奇襲と策略を得とする#僧正官_ビショップ_#。……どちらが勝つかはまさに神のみぞ知るというところか……。

「いざ参らん!」

 ほぼ同時にそう言うと、オレ達は動き出す。細かな動きが出来る槍に比べ、大斧は一撃の破壊力こそ高いモノの動作に隙が出来る。そして接近戦に置いて、微かな隙の一つが命取りともなる。





 時間にしてほんの数秒、オレは荒い呼吸と共に仰向けに地に倒れていた。呼吸をするたびに傷口から鮮血が噴き出す。

「もう終わったのかしらぁ?」

 ガサリと音を立て、青髪の歩兵が潜んでいたのと反対側の茂みから黒の兵装を纏った男が出てくる。口調は女性のようなものだが、ランスを持つその腕には隆々とした筋肉が付いている。

「……#女王_クイーン_#陛下、お言葉ですがこのような場所は陛下には似つかわしくはないかと」
「やだわぁツクヨミちゃんったらぁ。『レイン』って名前で呼んでって、いつも言ってるじゃないのぉ」

 白緑の髪に紫の瞳の「レイン」という男は「黒の#女王_クイーン_#」だという。

「……ギルはやられちゃったみたいねぇ……歩兵にしておくのはもったいないくらいのオトコだったんだけど」
「……ギルドレイはしっかりと己に与えられた責務を全うしたと存じます」
「だから、カタいわよぉ、アナタってばぁ」

 2人の茶番のようなやり取りを聴いているうちに、噴き出ていた血が酸素に触れ、白の兵装を黒く染め上げていく。
 いつまでこいつらの茶番劇を聴いていなければいけないのだろう。

 槍を手に敬礼を崩さない女兵士と、ランスをだらだらと弄びふわふわとしたその上官。

「でも、ギルも愛弟子の手でとどめを刺してもらえて、光栄でしょうねぇ」

 レインがそう言いながら、くるりとこちらを振り向く。

「いい加減起きたらどうかしらぁ? ……『ブレイド城将官』?」

 名を呼ばれたオレはツクヨミから受けた傷を自身の異能である「闇」を使って塞ぎ、黒の女王レインにひれ伏す。

「黒軍城将官ブレイド、ただ今を以って、敵陣視察の任から帰還しました」






【後書き】



人物データ

ツクヨミは黒のナイト。紺の髪に薄桃色の瞳。武器は槍。未来予知をする事が出来る。八方美人な性格。黒のポーンとは悪友。願い事は「過去に戻る事」です 

レインは黒のクイーン。白緑の髪に紫の瞳。武器はランス。五感を奪う事が出来る。病んだ性格。白のキングとは師弟関係。願い事は「未来を知る事」です 

ブレイドは黒のルーク。黄緑の髪に水色の瞳。武器はダガー。闇を操る事が出来る。二重人格な性格。黒のポーンとは師弟関係。願い事は「世界征服」です 

チェス盤戦争http://shindanmaker.com/286476より


2015年1月20日 初出、小説家になろう投稿
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...