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chapter:4.
しおりを挟む俺は召喚した#飛龍_ワイバーン_#に跨り、空から戦況を眺める。黒の軍からエレンとリンゲージという二人の兵士が出現した日から、白の軍が優勢に翻ることはなかった。温存していた戦車は全て駆り出され、各兵の異能力も出し惜しみは無し。
レオンハルトもまだ辛うじて戦線から離脱してはいないが、ここのところの負傷具合から、彼の戦線離脱は時間の問題だろう。彼(エース)の離脱はすなわち、白の軍の敗北を認めるようなモノではあるため、軍上層部はなかなかその判断を下さないでいるが。
戦線の佳境から、オレの「ブレイド捜索」の行動は打ち切らざるを得なくなり、元々戦場に出ていたシエル騎士官だけではなく、あのアルテミシア騎士官までもが現場に出てくるという、かなり苦しい状況。当然、騎士官からの情報の横流しは途切れ、オレは最近では大斧を手に召喚した魔物に跨り前線に出張ることが多くなっていた。
今日召喚した魔物の中には、高位魔族の一種であるエルフやドワーフ等もいた。エルフは身体能力のみならず魔法にも長けていると聞くし、ドワーフも(理由は良くわからないが)敵対しているらしいエルフとさえ距離を置かせれば斧やハンマーなどでの物理攻撃力が強い。
他にも今跨っている飛龍のようなドラゴンも召喚出来たので、兵が減り戦力が削がれつつある戦場にとってはかなりの戦力になるのではないかと思い、彼らには自由に黒兵を狩るように指示を出し基本的に放置することにしている。
下手にオレが指示を出して統制するよりも、魔物たちの本能に任せた方が良いことを、オレはとうに学んでいた。
上空にいるオレや飛龍たちに向けて放たれた黒軍の砲弾を適当にあしらい、手軽に潰せそうな黒兵を探す。
戦場の脇に潜んでいる#歩兵_ポーン_#を発見した。青い頭髪のその兵士目掛けて大斧を上空10m程から投げ落とす。地上に降りて、その歩兵が息絶えている事を確認する。見開かれた亜麻色の瞳に生気は既に宿っておらず、オレの大斧は彼の項(うなじ)から足元までをまっすぐに貫いた様子。この#歩兵_ポーン_#は何も異能を発動させなかったのだろうか? そんな疑問をふと感じたが、退場した兵士の事を思っても何にもならない。
オレは大斧を回収するとすぐにまた飛龍に跨り、上空へと飛び立つ。
次の#黒兵_エモノ_#を見つけなければ。
と思った矢先、飛翔したオレの顔のすぐ横を、槍がかすめていく。どうやら他の黒兵が近くに潜んでいたらしい。
槍が飛んできたと思しき方向を見やると、そこには紺色の頭髪の女兵士がいた。こちらを睨んでいるその瞳は薄くてよくわからないが桃色だ。桃色の瞳を見て、自軍の騎士官を思い出すが、今は己を発見した敵兵の排除を急ぐべきだ。
「何処に潜んでたんだ? 気配も無かったな」
彼女の近くに降り立つと、暗に歩兵を見殺しにしたのかと問う。
女は2本目の槍を構えると、こちらを見据えて言う。――兵装を見る限りでは、彼女は#騎士官_ナイト_#のようだ。
「我々の目的はあくまでも『この戦争に勝利すること』だ。歩兵一人に構ってなどいられまい」
桃色の瞳がわずかに潤んでいるようにも見えたが、女兵士は一人気丈にふるまっている。それに、彼女の言う事も正論だ。自分の願いを叶えるためとはいえ、どのみち戦争に「勝たなければ」その願いだって叶わないのだ。……もっとも、歩兵を失い過ぎても戦況は著しく苦しいモノになるのだが。
「我が名はツクヨミ。黒軍#騎士官級_ナイトクラス_#にして一番槍」
「我が名はウェイルド。白軍#僧正官級_ビショップクラス_#にして参謀」
オレは彼女の意志を汲み、飛龍を空へと飛び立たせ、大斧を構える。
互いに相手の呼吸を読み、出撃のタイミングを計る。
……相手は接近戦と機動力に長けた#騎士官_ナイト_#、こちらは奇襲と策略を得とする#僧正官_ビショップ_#。……どちらが勝つかはまさに神のみぞ知るというところか……。
「いざ参らん!」
ほぼ同時にそう言うと、オレ達は動き出す。細かな動きが出来る槍に比べ、大斧は一撃の破壊力こそ高いモノの動作に隙が出来る。そして接近戦に置いて、微かな隙の一つが命取りともなる。
時間にしてほんの数秒、オレは荒い呼吸と共に仰向けに地に倒れていた。呼吸をするたびに傷口から鮮血が噴き出す。
「もう終わったのかしらぁ?」
ガサリと音を立て、青髪の歩兵が潜んでいたのと反対側の茂みから黒の兵装を纏った男が出てくる。口調は女性のようなものだが、ランスを持つその腕には隆々とした筋肉が付いている。
「……#女王_クイーン_#陛下、お言葉ですがこのような場所は陛下には似つかわしくはないかと」
「やだわぁツクヨミちゃんったらぁ。『レイン』って名前で呼んでって、いつも言ってるじゃないのぉ」
白緑の髪に紫の瞳の「レイン」という男は「黒の#女王_クイーン_#」だという。
「……ギルはやられちゃったみたいねぇ……歩兵にしておくのはもったいないくらいのオトコだったんだけど」
「……ギルドレイはしっかりと己に与えられた責務を全うしたと存じます」
「だから、カタいわよぉ、アナタってばぁ」
2人の茶番のようなやり取りを聴いているうちに、噴き出ていた血が酸素に触れ、白の兵装を黒く染め上げていく。
いつまでこいつらの茶番劇を聴いていなければいけないのだろう。
槍を手に敬礼を崩さない女兵士と、ランスをだらだらと弄びふわふわとしたその上官。
「でも、ギルも愛弟子の手でとどめを刺してもらえて、光栄でしょうねぇ」
レインがそう言いながら、くるりとこちらを振り向く。
「いい加減起きたらどうかしらぁ? ……『ブレイド城将官』?」
名を呼ばれたオレはツクヨミから受けた傷を自身の異能である「闇」を使って塞ぎ、黒の女王レインにひれ伏す。
「黒軍城将官ブレイド、ただ今を以って、敵陣視察の任から帰還しました」
【後書き】
人物データ
ツクヨミは黒のナイト。紺の髪に薄桃色の瞳。武器は槍。未来予知をする事が出来る。八方美人な性格。黒のポーンとは悪友。願い事は「過去に戻る事」です
レインは黒のクイーン。白緑の髪に紫の瞳。武器はランス。五感を奪う事が出来る。病んだ性格。白のキングとは師弟関係。願い事は「未来を知る事」です
ブレイドは黒のルーク。黄緑の髪に水色の瞳。武器はダガー。闇を操る事が出来る。二重人格な性格。黒のポーンとは師弟関係。願い事は「世界征服」です
チェス盤戦争http://shindanmaker.com/286476より
2015年1月20日 初出、小説家になろう投稿
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