ロイヤルストレートフラッシュ

高梨

文字の大きさ
上 下
5 / 6
ダイヤモンド王国

ディーヴァ・クァエダム③

しおりを挟む
「ぼうけんのしょ…?」
イマイチ状況が掴めない。とりあえず、トマトは今まで聞いたことを整理してみることにした。
「つまり、この本は俺の世界とお前たちの世界を繋ぐもので」
「はい」
「お前たちの世界が危険に晒されたら俺の世界から『勇者』が呼び出されて」
「はい」
「俺の爺さんはかつての勇者で」
「はい」
「それが俺の手に渡って、また『勇者』が呼び出されたと」
「はい!さすが2代目トマトさん、飲み込みが早くてありがたいです!」
無邪気に笑うレタス。正直、理屈ではわかっていても頭がついていかない。

「…で、俺の行動がここに記されるってわけか。にしてもこの文字は俺には…ん?」
どうしたことだろうか。
なんとなくではあるが、トマトは本の中身が理解できるようになっていた。
「『勇者様が 妖精の街に 降り立った』…!?なんだこれ!?」
文字はさっぱりではあるが、なんとなくわかる気がする。
「まあ!この国の文字まで!さすが、勇者様!」
「勇者様!!!!」
家の外からも歓声があがる。どうやら相当期待されているようである。

「…んな期待されても…俺ただの庶民だぞ…」
トマトは自分の着ている「No,シャケ No,LIFE」と大きく書かれたTシャツを見つめた。
「それでもこうしてここへ来て、文字を理解した。貴方はこの世界を救う、立派な勇者様なのです!!」
「だからって…待った」

「お前ら、世界が危険だとか、言ったな。どういう意味だ?そんなにこの世界はやばいのか?」
「!」
レタスの顔が曇る。外の歓声はやまない。
明るかった先ほどとは対照的な表情に、一般小市民トマトは動揺せずにはいられなかった。
「…おいそんなやばいのかよ」
「スペード国を止めなくちゃ」
かぶせるようにレタスが言う。その声は、震えていた。


「スペード国を、止めなくちゃ。世界は、滅びてしまう」


しおりを挟む

処理中です...