陸国について

蓬屋 月餅

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オメガバース編

【男性オメガの妊娠について】

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 本来 妊娠することのない男性体である男性オメガは、その妊娠も特殊な状況下でのみ可能となっている。
 まず絶対的な条件として《番がいること》そして《相手のアルファか自分が発情していること》が必須だ。

 そもそも、女性体よりも体全体が筋肉質である男性オメガは子宮に相当する器官の入口も非常に固く閉じられており、さらにその上痛みがなければ排卵しないということもあって、通常の行為で射精されたのでは妊娠に至ることはまずないと言っていいだろう。
 そのため、男性オメガは【香り】を巧みに操ることで自らの妊娠を可能にさせた。

 番のどちらかが発情しているとその【香り】は相手の発情をも促すのだが、それによって双方が発情した状態になると男性オメガは体内を潤わせてアルファのものを奥深くまで受け入れる準備を始める。
 普段は肉壁によって閉じられている部分を開き、奥深くにある器官への道を作り出した男性オメガの体はアルファによって中を擦られるうちに興奮を高め、次第に【香り】を濃くしてさらなる結合を求めるのだ。
 発情したオメガの【香り】にはアルファの理性を失わせるだけの力があり、すでに本能に従って体を動かしているアルファはしきりに奥を突いて器官の入口をこじ開けようとするのだが、当然それではうまくいかない。
 そこで男性オメガはアルファからも濃い【香り】が放たれたことを感じ取ると、さらにわずかに成分を変えた【香り】を放つ。
 そのオメガの【香り】はアルファの性器を肥大(ノッティング)させ、動かすこともできないほどにしてしまうとそのまま射精を促していく。
 アルファは男性オメガによって通常よりも多い量の精液を射精するのだが、それを一滴残らず腹の中に溜め込まされるオメガは、大きな性器を咥えこんでいるということもあって非常に苦しく、強い痛みに晒され、それまで放っていた【香り】をピタリと止めてしまう。
 すると【香り】によって理性を失わされていたアルファも苦しんでいる男性オメガを目にして我に返る。
 男性オメガの体内ではその時点ですでに排卵が済んでいて、後は中に放出された精液から精子が器官内に入り込んでくるのを待つのみとなっているのだが、痛みによって体に力が入っている男性オメガはその奥の入口を緩めることができない。
 そこでアルファは男性オメガを労わり、安心させ、愛を伝えてその痛みを和らげようとするのだ。
 激痛のさなか、番として認めた相手が自らの体内で果てながらも数々の愛の言葉を囁いていることに喜び、幸福を感じた男性オメガは大きな快感と共に無意識のうちに体の力を抜いて溜め込んでいた精液を奥深くへと受け入れていく。
 こうした一連の流れを経て、男性オメガは妊娠する。

 さらに妊娠に至る過程上、ほとんどの男性オメガはアルファと『番になった瞬間』に第一子を妊娠し、そうして産まれた子は一般的に【番 子つがい ご】とも呼ばれる。


 また、上記の過程を2~3回程度経験する(2人、もしくは3人の子をもうける)と、男性オメガが行為の痛みに慣れるためか次第に排卵しづらくなり、妊娠する確率も大きく減っていく。
 そのため通常は2、3人の子持ちであることがほとんどだ。
 しかし、行為の際にアルファが別の方法で男性オメガに痛みを感じさせるとさらに多くの子をもうけることがある。
 (例として『うなじをさらに咬む』『胸などの敏感な部分を強く刺激する』等)
 事実、陸国には6人の子を産み育てた男性オメガの番の記録が残っている。


 男性体である男性オメガは妊娠の継続自体も難しく、女性体よりもずっと流産する可能性が高かった。
 そこで、出産まで無事に至れるようにと いつしか男性オメガが備えるようになったのが『極端に重いつわり』だ。
 食べづわり、眠りづわりなどその種類は様々なものの、男性オメガはみな一様に重いつわりに悩まされることになる。
 まともに動くことさえままならないほどのつわりを引き起こすことにより、男性オメガが動き回ることを抑制し、絶対安静を強いることで妊娠の継続の成功率を飛躍的に上昇させたのだ。
 その間、アルファは身の回りの世話をし、適度に【香り】を放って男性オメガの心と体の健康を守る。
 つわりは一定の期間を経た後はいくらか動き回れる程度に軽くなり、今度は出産に備えて体力をつけさせるのだ。

 男性オメガがそうして重いつわりと共に過ごす妊娠期間は8ヶ月半ほど。
 女性体とは異なり、妊娠した日が確実に分かる&赤子の成長速度がほぼ一定である男性オメガはほとんどの場合が予定日に沿って出産に至るとされている。
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