23 / 54
4 寝室の壁と婚約指輪
七* 一目惚れ(※)
「おや、文弥」
と、教会の建物から誰かが出てきた。小柄なそのひとには見覚えがある。昨日、文弥さんと小箱を覗き込んでいたひとに違いない。
朝の光の中で見ると、ずいぶん年上のようだった。
文弥さんが頭をさげた。
「りじちょー先生。おはようございます」
「お、おはようございます」
俺も頭を下げる。
「おはようございます。よく眠れたかな」
「寝れなかったです。尚くん。理事長先生は、教会の神父様」
「宮下尚です。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「近くの幼稚園の理事長をしてるんだ。僕もそこに通ってたの。りんごも作ってる。そしてうちの別荘の管理もしてくれてる、手広い守銭奴なんだ。婚約指輪を見つけた見返りに金銭を要求されてる。贖宥状もびっくりのお金儲け主義」
理事長先生は、呵々と笑った。
「はねっかえりの暴君文弥が一目惚れした尚くん」
「あっ! 僕の秘密を!」
「はねっかえりの暴君?」
「文弥はね、山を駆け回ったり、遊泳禁止の湖で遊んでは落ちて泳いだり。いまはすました顔してるけど、むかしは手がつけられない野生児のガキ大将だったんです」
「えっ」
「しかも文弥ときたら昔から頭がいいせいで妙に姑息で、裏工作にも余念がない」
俺が見ている文弥さんからは考えられない。そういう、俺の知らない顔を、俺が仰いだ横顔に少し滲ませながら、文弥さんは俺の手を取った。
「さぁて、ご挨拶は終わり。帰ろ帰ろ~」
理事長先生は手を振ってくる。先を歩く文弥さんに強く引かれながら、俺は理事長先生に頭を下げた。
「あのっ、りんご、ありがとうございました! 美味しかったです!」
「おぉ。今度たくさん送ってあげよう。代引きで」
「えっ!?」
「送りつけ商法だよ」
湖畔の教会から遠ざかるように、遊歩道を歩いていく。朝の空気は冷たく、気持ちいい。
文弥さんは何事もなかったかのように振り返ってにっこり笑った。
「今日は街のほうに散策にいこうか。すごくおいしいフルーツジャムのお店があって、尚くんに食べてもらいたいな」
俺は文弥さんを見つめる。
「さっきの理事長先生の話は、話半分にしようね。小さい頃はちょっとジャイアンだったけれど、いまは中間管理職で上からは潰され下からは突き上げられて悲鳴をあげてる。可哀相なんだよ。ほんとだよ」
文弥さんは、よよよ……としなった。
俺は笑った。
「あっ、そうだ。揚げたてカレーパンと、焼き立てカスタードアップルパイ。出来立てのプリン、ハンバーグ。ソフトクリームやジェラートはまだ寒いかなぁ。美味しいチーズもあるよ。ドーナッツ、ピロシキ。僕、おなかすいてきちゃった!」
「俺も」
別荘にたどり着いた。でも、散策は後回し。
キスをしながら、ニット帽を脱いだり、手袋を外したり、コートを脱いだり。
転がるように二階に駆け上がると、すぐにシャツや下も脱いで、裸になって、ベッド。
文弥さんは俺の胸を食べてる。俺は文弥さんの頭を抱えて、額を舐めたり、髪を食んだりする。
「んっんっ、文弥さんっ」
「あー、尚くんのここ本当に可愛い……」
可愛い可愛いと乳首をつまみながら肌のあちこちを滑るみたいに口付けられて、大きな手のひらであちこちをさすられて、とろとろ。文弥さんの潤んだ瞳と見つめ合う。
抱きしめると、熱くて汗ばんで、溶けそうだった。
「尚くん」
耳元でささやかれるたびに、このひとのもっと余裕のない声が聞きたいと思う。
足をあげさせられて、屈曲位。深く差し込まれて息ができない。
「っ、んん……」
「尚くん……」
文弥さんは俺の太ももの裏を押すようにして、上から、ペニスを根元まで挿入する。毛が当たり、恥骨ごと、こすりつけてくる。文弥さんは、ふぅ、と息を吐いた。
「尚くん、こことろとろ。こんなに深くて大丈夫?」
「きもちい、です」
「これ、好き?」
「好きです……あっ、なかで、大きく……」
「尚くんが可愛いせい」
そんなふうに甘く優しくいうくせに、すごく凶暴に、杭を打つみたいに奥を突いて、抉って、みだらな水音を立てる。
「いっ、あっ」
「ここ食らいついて離さないね。もう僕の形になったかな。誰のものでも満足できないように」
ぶちゅぶちゅぶちゅぶちゅと、高速で突かれて、俺のペニスは勝手に射精。ピストンの強さに振り回されながら、精液を垂れ流してびくびく震えている。
「んあっ、あっ、ああっ」
覆いかぶさってきた文弥さんの胴体にしがみつく。にゅく、といちばん奥に達した文弥さんの先っぽを感じる。
「尚くんの、赤ちゃん作るところ」
「ひっ、あっあっ」
「でしょ?」
「うっ、あっ、は、はい、あっあっ」
「いきそう……」
根元の部分まで嵌められて、串刺し。身動きがとれない。
文弥さんは腰をこすりつけるみたいにして激しく動く。射精するみたいだ。夢中になってる。中で更に固く、大きくなった。俺は足首をきつく掴まれて、しっかり嵌められてる。
真っ赤になって汗だくの文弥さんを見ていると、俺もすごく熱い。
「あっ、締まる、尚くん」
「っ、んっ、好き……」
「尚くん……!」
ひとつになりながら、かき抱き合って、唇を押し付けあった。
文弥さんは、俺の頭を抱く。
心臓の音がすごい。叩くみたいに打つ鼓動、激しい息遣い、噴き出した汗、唇を離して、一センチの距離。
まつげ長いな。大きな瞳。
俺のこと見てる。
「尚くん、愛してる……」
「文弥さん……俺も……」
俺は文弥さんの広い背中に腕を回した。
〈寝室の壁と婚約指輪 終わり〉
と、教会の建物から誰かが出てきた。小柄なそのひとには見覚えがある。昨日、文弥さんと小箱を覗き込んでいたひとに違いない。
朝の光の中で見ると、ずいぶん年上のようだった。
文弥さんが頭をさげた。
「りじちょー先生。おはようございます」
「お、おはようございます」
俺も頭を下げる。
「おはようございます。よく眠れたかな」
「寝れなかったです。尚くん。理事長先生は、教会の神父様」
「宮下尚です。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「近くの幼稚園の理事長をしてるんだ。僕もそこに通ってたの。りんごも作ってる。そしてうちの別荘の管理もしてくれてる、手広い守銭奴なんだ。婚約指輪を見つけた見返りに金銭を要求されてる。贖宥状もびっくりのお金儲け主義」
理事長先生は、呵々と笑った。
「はねっかえりの暴君文弥が一目惚れした尚くん」
「あっ! 僕の秘密を!」
「はねっかえりの暴君?」
「文弥はね、山を駆け回ったり、遊泳禁止の湖で遊んでは落ちて泳いだり。いまはすました顔してるけど、むかしは手がつけられない野生児のガキ大将だったんです」
「えっ」
「しかも文弥ときたら昔から頭がいいせいで妙に姑息で、裏工作にも余念がない」
俺が見ている文弥さんからは考えられない。そういう、俺の知らない顔を、俺が仰いだ横顔に少し滲ませながら、文弥さんは俺の手を取った。
「さぁて、ご挨拶は終わり。帰ろ帰ろ~」
理事長先生は手を振ってくる。先を歩く文弥さんに強く引かれながら、俺は理事長先生に頭を下げた。
「あのっ、りんご、ありがとうございました! 美味しかったです!」
「おぉ。今度たくさん送ってあげよう。代引きで」
「えっ!?」
「送りつけ商法だよ」
湖畔の教会から遠ざかるように、遊歩道を歩いていく。朝の空気は冷たく、気持ちいい。
文弥さんは何事もなかったかのように振り返ってにっこり笑った。
「今日は街のほうに散策にいこうか。すごくおいしいフルーツジャムのお店があって、尚くんに食べてもらいたいな」
俺は文弥さんを見つめる。
「さっきの理事長先生の話は、話半分にしようね。小さい頃はちょっとジャイアンだったけれど、いまは中間管理職で上からは潰され下からは突き上げられて悲鳴をあげてる。可哀相なんだよ。ほんとだよ」
文弥さんは、よよよ……としなった。
俺は笑った。
「あっ、そうだ。揚げたてカレーパンと、焼き立てカスタードアップルパイ。出来立てのプリン、ハンバーグ。ソフトクリームやジェラートはまだ寒いかなぁ。美味しいチーズもあるよ。ドーナッツ、ピロシキ。僕、おなかすいてきちゃった!」
「俺も」
別荘にたどり着いた。でも、散策は後回し。
キスをしながら、ニット帽を脱いだり、手袋を外したり、コートを脱いだり。
転がるように二階に駆け上がると、すぐにシャツや下も脱いで、裸になって、ベッド。
文弥さんは俺の胸を食べてる。俺は文弥さんの頭を抱えて、額を舐めたり、髪を食んだりする。
「んっんっ、文弥さんっ」
「あー、尚くんのここ本当に可愛い……」
可愛い可愛いと乳首をつまみながら肌のあちこちを滑るみたいに口付けられて、大きな手のひらであちこちをさすられて、とろとろ。文弥さんの潤んだ瞳と見つめ合う。
抱きしめると、熱くて汗ばんで、溶けそうだった。
「尚くん」
耳元でささやかれるたびに、このひとのもっと余裕のない声が聞きたいと思う。
足をあげさせられて、屈曲位。深く差し込まれて息ができない。
「っ、んん……」
「尚くん……」
文弥さんは俺の太ももの裏を押すようにして、上から、ペニスを根元まで挿入する。毛が当たり、恥骨ごと、こすりつけてくる。文弥さんは、ふぅ、と息を吐いた。
「尚くん、こことろとろ。こんなに深くて大丈夫?」
「きもちい、です」
「これ、好き?」
「好きです……あっ、なかで、大きく……」
「尚くんが可愛いせい」
そんなふうに甘く優しくいうくせに、すごく凶暴に、杭を打つみたいに奥を突いて、抉って、みだらな水音を立てる。
「いっ、あっ」
「ここ食らいついて離さないね。もう僕の形になったかな。誰のものでも満足できないように」
ぶちゅぶちゅぶちゅぶちゅと、高速で突かれて、俺のペニスは勝手に射精。ピストンの強さに振り回されながら、精液を垂れ流してびくびく震えている。
「んあっ、あっ、ああっ」
覆いかぶさってきた文弥さんの胴体にしがみつく。にゅく、といちばん奥に達した文弥さんの先っぽを感じる。
「尚くんの、赤ちゃん作るところ」
「ひっ、あっあっ」
「でしょ?」
「うっ、あっ、は、はい、あっあっ」
「いきそう……」
根元の部分まで嵌められて、串刺し。身動きがとれない。
文弥さんは腰をこすりつけるみたいにして激しく動く。射精するみたいだ。夢中になってる。中で更に固く、大きくなった。俺は足首をきつく掴まれて、しっかり嵌められてる。
真っ赤になって汗だくの文弥さんを見ていると、俺もすごく熱い。
「あっ、締まる、尚くん」
「っ、んっ、好き……」
「尚くん……!」
ひとつになりながら、かき抱き合って、唇を押し付けあった。
文弥さんは、俺の頭を抱く。
心臓の音がすごい。叩くみたいに打つ鼓動、激しい息遣い、噴き出した汗、唇を離して、一センチの距離。
まつげ長いな。大きな瞳。
俺のこと見てる。
「尚くん、愛してる……」
「文弥さん……俺も……」
俺は文弥さんの広い背中に腕を回した。
〈寝室の壁と婚約指輪 終わり〉
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。