エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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4 ある休み明け(和臣視点)

一 早く帰りたい①

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 午後七時半。
 残業を終えて社員が徐々に減っていく。俺もそろそろ帰ろうと、デスクの上を片付けはじめる。今日は予備校はなく、真っ直ぐ帰宅予定。
 そのとき、三分の一ほどが残っている総務部のフロアに、営業部の下っ端がひとり入ってきた。
 総務部の端の島に俺の姿を見つけて、直線距離で堂々と歩いてくる。嫌な予感しかしない。営業部のときの後輩男A。

「小野寺主任、じゃなかった。小野寺係長ー」

 呼ばれて見る。
 スタイリッシュだな。自信満々で堂々としている。

「あ、なんか雰囲気変わりましたね。合コンの覇王になりそう」
「……」
「タイのプラント、稼働してるんですよね。早かったですね。大きなトラブルもなく。羨ましいっす」
「……」
「小野寺係長、運がいいですよね。何かあるんですか? 顔以外で」

 俺は訊ねる。

「何か用?」

 帰りたい。一分一秒も惜しい。

「前に係長が担当してたカンキョウの専務おばさんと会食なんすけど、専務おばさん、お気に入りの小野寺係長が帰国してるって誰かに聞いてるみたいでー。課長が二次会に小野寺を呼べって」

 その用件で嫌味から話題に入るなんて頭悪いんじゃないの?

「まさか今夜?」
「はいです。今まさに。やー。捕まってよかったー」

 よくない。ふざけるな。失言野郎。

「……僕にも営業成績がつくなら。あとうちの課長にも話を通して」

 言いながら課長を見ると、視線があった。課長同士で根回し済み。行ってこい。仕方ない。遅いのはこの担当、後輩男Aのみ。

「専務をおばさん呼びしないように。態度に出るよ」

 口を滑らせそうだし、釘刺し。

「サーセン」
「店は?」
「会食の後、いつものホテルバーラウンジです」
「食事は?」
「会席」
「コースに甘味でる?」
「水物っす。梅と枇杷とメロン」
「手土産なに?」
「カステラ」
「何売るの?」
「まさか。トレーディングなんて。俺いま事業投資チームっすよ? 新規事業立ち上げに増資。じゃ、よろしくっす!」
「君の分も俺に付けてほしいな」
「CAと合コンはどうっすか? 小野寺係長呼べって言われるんすよ」

 俺のメリットの話をしていたのに、その条件で俺に何の得があるのか。

「今から言うもの今すぐ買ってきて」

 帰りたい、いますぐ。
 誰でもいいからこいつを絞めてほしい。
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