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4 ある休み明け(和臣視点)
五 その後(※)
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午後十一時過ぎ。ベッドの上。
ここ半月ほどで、多紀くんは積極的になった。以前ならば恥ずかしがっていたことも自分からしている。
ベッドに座った俺の股に顔を埋めて必死にぺろぺろと舐めてむぐむぐ咥えて、一度飲んで、また美味しそうに咥えて……。
多紀くんの口に吐精すると、多紀くんはかならず飲む。喉を通って、胃に俺の精液が流れ込んだと思うと、ぞくぞくする。
下からも頻繁に注ぎ込んでいるのだから、上からも下からも犯していて、多紀くんはすっかり俺のもの。
「多紀くん、エッチ好きだね。平日なのに。明日も仕事なのに。たくさん運動したでしょ。汗だくになってさ。なのにいっぱいされたいんだね?」
バックで挿入しながら問いかける。
腰をあげる多紀くんの下半身を抱え込むように、ベッドに両手をつく。
多紀くんの背中に時々キスする。きれいな肌、背筋、骨格。皮膚。唇でなぞる。舌を這わせる。汗ばんでいる。
なめらか。しょっぱい。美味しい。
突くたびに喘ぎ声を洩らしている。高い鳴き声。シーツを掴んで耐えている。
這いつくばって、下半身をこすりつけてくる。全身で重なる。思い切り掻き抱く。
温かくて気持ちいい。溶けそう。溶けてしまえばいいのに。
強く押しつける。結ばれてる。
多紀くんと結ばれていると思うとさらに昂ぶってくる。我ながら棍棒みたい。がちがち。
多紀くんに思う存分突き刺して、押し広げて、誰も知らない多紀くんの内側を知る。奥深く、届くところまで蹂躙する。余すことなく味わい尽くす。
「あっ、あっ、か、かず、せんぱ……あ、ひい、い、そこ、あう、お、奥……」
「もっと奥? 届くかな……」
「あ……そこ、だ、だめ……だめ、です、だめぇ……」
「だめなの?」
俺はくすくす笑いながら、浅くする。
「あ……」
「どこがいい? 多紀くんの好きなところ、してあげる」
「っ……さっきの……とこ……」
「だめじゃなかったの? ここがいいんだ」
「あああ、いい、いいです……そこ、して……」
おねだりされるとなんでもしてあげたくなる。だめといわれてもなんでもしたくなる。
「こんなところ犯されていいなんて、多紀くん、やらしいね」
「や、あ……あ……イ、イく……イく、あああああ、せんぱい、か、カズせんぱ、あうぅ……」
多紀くんはイきやすい。
だが今夜は、引き抜いたら倒れて気を失ってしまった。
疲れているせいか。大丈夫だろうか。
様子を見つつ、背中の上に射精する。ティッシュで拭い、倒れ伏した多紀くんに問いかける。
汗だく。濡れた額。へとへとで可愛い。
「多紀くん、大丈夫?」
「は……はい。大丈夫です……」
隣に横たわると、多紀くんからのキス。
「せんぱい、好き……」
可愛い……愛しい……。以前はほとんどなかった愛情表現。
「俺も好き。多紀くん、無理しないでね。気持ちよかった?」
「気持ちよかったです……もっとしたいです……」
「俺も。だけど、疲れてそうだから、また今度にしようね。またいっぱいしよう」
「はい……」
開発したなぁ。俺も気持ちいいけれど、多紀くんのほうがずっと気持ちよさそう。どんなだろう。想像すると痛そうなんだけど……。
髪を撫でつつ、体力切れの多紀くんの局部などをウェットティッシュで拭っていく。中に出してないから拭くだけでいいか。
シャツと下着、半パンを履かせて、上掛けをかける。自分はシャワーを浴びにいく。
洗って戻ると、多紀くんは幸せそうな顔で、すぴすぴ寝息を立てていた。
よく寝てる。ほっとする。
常夜灯を限界まで暗くする。
多紀くんが寝ていると俺も眠くなってくる。俺の隣で安心しきって眠る様子に安心する。自然体で嬉しい。
俺の近くにいる人は、大抵の場合、俺に対して緊張する。だけど多紀くんは違う。俺の外見に興味がない。むかしからそうだった。太郎次郎と同じ。
死ぬまで一緒にいられるんだったら、死ぬまでの時間は可能な限り長いほうがいいな。
多紀くんのほうが年下だから順当にいけば多紀くんに看取られる。それがいいね。まあ、たかだか二歳、三歳なんて誤差の範囲か。
多紀くんは長生きしそう。時代を重ねるという名前。
大病をしないように定期的に健康診断を受けてもらわないと。肉体関係も考えもので、あまり無理はさせられないな……。
万一多紀くんが先に死ぬようなら、その一秒後に俺も死んでしまいたい。悲しみや絶望を自覚する前に。
仕事についてよく考えないと。六十歳、七十歳まで働いていたら、多紀くんといられる時間が短くなってしまう。気づいたら老後になっている。
時間は有限だ。できるだけ二人でいられるようにしたい。ハードな働き方はできない。
いまの勤め先のまま一生を過ごすのも考えたけれど、もう少しプライベートの時間を大切にしたい。転職したい。仕事しながら挑戦して、限界を感じたら仕事は辞めて勉強を続けて、合格できなかったら二年以内なら再雇用制度で戻るか。
N社長、入れてくれないかなあ……。そうしたらすべてが解決するね。四六時中いっしょにいられるもの。多紀くんといっしょなら、二十四時間仕事でも構わないんだ。
多紀くんの寝顔をしばらく眺めた後、寝室を出る。
ダイニングのカウンターテーブルに今夜読む本を積んでいく。寝るまで三時間。眠いけどがんばろ。
三時間勉強して、ベッドに入るときに、多紀くんは少しだけ目を覚ました。
くぐもった声。
「せんぱい」
「多紀くん。起こしてごめんね。おやすみ」
隣にもぐりこみながら、多紀くんの頬に手を添える。そうしていると、多紀くんは俺の腕の中にすり寄ってくる。
くっついてくる多紀くんの肩を抱いて、額に唇を寄せる。可愛い可愛い可愛い。
なんて可愛いんだろう。寝ぼけているのかな。でもせんぱいって言うし。俺を求めて呼ぶなんて滾る。
また勃ってくる。やりたい。一晩中犯したい。
これまでも一晩中犯すことはあったけれど、今の素直な多紀くんと、二言目には好きだとか愛してるだとかを言い合うような、甘い甘い、新婚三日目みたいな蜜月のエッチをしたい。
お互いの精液まみれになって、唾液も飲み合って、とろとろに溶かして、やりまくってイかせまくりたい。
体中を吸って、俺のものだって印を刻み込みたい。名前を書いておきたい。
「カズ先輩、勉強してたんですか」
「うん。少しね」
「お疲れ様です……」
かすれている声。夢うつつ。
はあ、ちょっと落ち着こう……。
「かずせんぱい」
「どうしたの」
もしできることならまた和臣と呼ばれたいな……。でもよく考えると俺をカズ先輩と呼ぶのは多紀くんだけだから、多紀くん専用の呼び方だったら何でもいいのかもしれない。
どちらでも構わないか。都合がいい部分だけ思い出してもらいたい。虫が良すぎる気持ち。
思い出を共有できないことはとても寂しいんだ。寂しくて寂しくてたまらなくなる。
バンコクに赴任していた二年間、遠くて不安で会えなくて見られなくて寂しかったけれど、多紀くんと会えると幸せで、大切な思い出もたくさんあるから、帰国したらそういう思い出を、「あのときはあんなことがあったね」なんて語りたかった。
でも仕方ない。
大きな物音がして駆けつけて、倒れている多紀くんを見つけたとき、頭が真っ白になった。ショックだった。記憶とたんこぶで済んでよかったんだ。
打ちどころが悪いこともあるんだから。
「きもちいー……」
多紀くんは俺のシャツをくしゃっと掴んで、そう呟いた。多紀くんの手。左手。
薬指には、俺と交換した指輪。多紀くんはずっとつけてる。
記憶がなくなっても、俺と付き合っていたことを知らなかったときにも、指輪をつけていた。
「たぶんこれずっとつけてましたよね」と言って。
泣きたくなったんだ。我慢したけれど。多紀くん、その指輪ね、俺とお揃いなんだよって言いたかった。
多紀くんが生きてるだけでいい。
多紀くん。好き。大好き。愛しい。愛してる。可愛い。ぜんぶ好き。
「多紀くん。好き……」
「俺も……せんぱい、好きです……好き……」
また寝息を立てている。寝言かな。ご褒美みたいな寝言。
夢じゃないかな。
多紀くんに片想いをしていたときは、二人で寄り添って眠る日が来るなんて想像だにしなかった。いまが幸せの絶頂かもしれない。
はあ、このまま死んでしまいたい……。
ここ半月ほどで、多紀くんは積極的になった。以前ならば恥ずかしがっていたことも自分からしている。
ベッドに座った俺の股に顔を埋めて必死にぺろぺろと舐めてむぐむぐ咥えて、一度飲んで、また美味しそうに咥えて……。
多紀くんの口に吐精すると、多紀くんはかならず飲む。喉を通って、胃に俺の精液が流れ込んだと思うと、ぞくぞくする。
下からも頻繁に注ぎ込んでいるのだから、上からも下からも犯していて、多紀くんはすっかり俺のもの。
「多紀くん、エッチ好きだね。平日なのに。明日も仕事なのに。たくさん運動したでしょ。汗だくになってさ。なのにいっぱいされたいんだね?」
バックで挿入しながら問いかける。
腰をあげる多紀くんの下半身を抱え込むように、ベッドに両手をつく。
多紀くんの背中に時々キスする。きれいな肌、背筋、骨格。皮膚。唇でなぞる。舌を這わせる。汗ばんでいる。
なめらか。しょっぱい。美味しい。
突くたびに喘ぎ声を洩らしている。高い鳴き声。シーツを掴んで耐えている。
這いつくばって、下半身をこすりつけてくる。全身で重なる。思い切り掻き抱く。
温かくて気持ちいい。溶けそう。溶けてしまえばいいのに。
強く押しつける。結ばれてる。
多紀くんと結ばれていると思うとさらに昂ぶってくる。我ながら棍棒みたい。がちがち。
多紀くんに思う存分突き刺して、押し広げて、誰も知らない多紀くんの内側を知る。奥深く、届くところまで蹂躙する。余すことなく味わい尽くす。
「あっ、あっ、か、かず、せんぱ……あ、ひい、い、そこ、あう、お、奥……」
「もっと奥? 届くかな……」
「あ……そこ、だ、だめ……だめ、です、だめぇ……」
「だめなの?」
俺はくすくす笑いながら、浅くする。
「あ……」
「どこがいい? 多紀くんの好きなところ、してあげる」
「っ……さっきの……とこ……」
「だめじゃなかったの? ここがいいんだ」
「あああ、いい、いいです……そこ、して……」
おねだりされるとなんでもしてあげたくなる。だめといわれてもなんでもしたくなる。
「こんなところ犯されていいなんて、多紀くん、やらしいね」
「や、あ……あ……イ、イく……イく、あああああ、せんぱい、か、カズせんぱ、あうぅ……」
多紀くんはイきやすい。
だが今夜は、引き抜いたら倒れて気を失ってしまった。
疲れているせいか。大丈夫だろうか。
様子を見つつ、背中の上に射精する。ティッシュで拭い、倒れ伏した多紀くんに問いかける。
汗だく。濡れた額。へとへとで可愛い。
「多紀くん、大丈夫?」
「は……はい。大丈夫です……」
隣に横たわると、多紀くんからのキス。
「せんぱい、好き……」
可愛い……愛しい……。以前はほとんどなかった愛情表現。
「俺も好き。多紀くん、無理しないでね。気持ちよかった?」
「気持ちよかったです……もっとしたいです……」
「俺も。だけど、疲れてそうだから、また今度にしようね。またいっぱいしよう」
「はい……」
開発したなぁ。俺も気持ちいいけれど、多紀くんのほうがずっと気持ちよさそう。どんなだろう。想像すると痛そうなんだけど……。
髪を撫でつつ、体力切れの多紀くんの局部などをウェットティッシュで拭っていく。中に出してないから拭くだけでいいか。
シャツと下着、半パンを履かせて、上掛けをかける。自分はシャワーを浴びにいく。
洗って戻ると、多紀くんは幸せそうな顔で、すぴすぴ寝息を立てていた。
よく寝てる。ほっとする。
常夜灯を限界まで暗くする。
多紀くんが寝ていると俺も眠くなってくる。俺の隣で安心しきって眠る様子に安心する。自然体で嬉しい。
俺の近くにいる人は、大抵の場合、俺に対して緊張する。だけど多紀くんは違う。俺の外見に興味がない。むかしからそうだった。太郎次郎と同じ。
死ぬまで一緒にいられるんだったら、死ぬまでの時間は可能な限り長いほうがいいな。
多紀くんのほうが年下だから順当にいけば多紀くんに看取られる。それがいいね。まあ、たかだか二歳、三歳なんて誤差の範囲か。
多紀くんは長生きしそう。時代を重ねるという名前。
大病をしないように定期的に健康診断を受けてもらわないと。肉体関係も考えもので、あまり無理はさせられないな……。
万一多紀くんが先に死ぬようなら、その一秒後に俺も死んでしまいたい。悲しみや絶望を自覚する前に。
仕事についてよく考えないと。六十歳、七十歳まで働いていたら、多紀くんといられる時間が短くなってしまう。気づいたら老後になっている。
時間は有限だ。できるだけ二人でいられるようにしたい。ハードな働き方はできない。
いまの勤め先のまま一生を過ごすのも考えたけれど、もう少しプライベートの時間を大切にしたい。転職したい。仕事しながら挑戦して、限界を感じたら仕事は辞めて勉強を続けて、合格できなかったら二年以内なら再雇用制度で戻るか。
N社長、入れてくれないかなあ……。そうしたらすべてが解決するね。四六時中いっしょにいられるもの。多紀くんといっしょなら、二十四時間仕事でも構わないんだ。
多紀くんの寝顔をしばらく眺めた後、寝室を出る。
ダイニングのカウンターテーブルに今夜読む本を積んでいく。寝るまで三時間。眠いけどがんばろ。
三時間勉強して、ベッドに入るときに、多紀くんは少しだけ目を覚ました。
くぐもった声。
「せんぱい」
「多紀くん。起こしてごめんね。おやすみ」
隣にもぐりこみながら、多紀くんの頬に手を添える。そうしていると、多紀くんは俺の腕の中にすり寄ってくる。
くっついてくる多紀くんの肩を抱いて、額に唇を寄せる。可愛い可愛い可愛い。
なんて可愛いんだろう。寝ぼけているのかな。でもせんぱいって言うし。俺を求めて呼ぶなんて滾る。
また勃ってくる。やりたい。一晩中犯したい。
これまでも一晩中犯すことはあったけれど、今の素直な多紀くんと、二言目には好きだとか愛してるだとかを言い合うような、甘い甘い、新婚三日目みたいな蜜月のエッチをしたい。
お互いの精液まみれになって、唾液も飲み合って、とろとろに溶かして、やりまくってイかせまくりたい。
体中を吸って、俺のものだって印を刻み込みたい。名前を書いておきたい。
「カズ先輩、勉強してたんですか」
「うん。少しね」
「お疲れ様です……」
かすれている声。夢うつつ。
はあ、ちょっと落ち着こう……。
「かずせんぱい」
「どうしたの」
もしできることならまた和臣と呼ばれたいな……。でもよく考えると俺をカズ先輩と呼ぶのは多紀くんだけだから、多紀くん専用の呼び方だったら何でもいいのかもしれない。
どちらでも構わないか。都合がいい部分だけ思い出してもらいたい。虫が良すぎる気持ち。
思い出を共有できないことはとても寂しいんだ。寂しくて寂しくてたまらなくなる。
バンコクに赴任していた二年間、遠くて不安で会えなくて見られなくて寂しかったけれど、多紀くんと会えると幸せで、大切な思い出もたくさんあるから、帰国したらそういう思い出を、「あのときはあんなことがあったね」なんて語りたかった。
でも仕方ない。
大きな物音がして駆けつけて、倒れている多紀くんを見つけたとき、頭が真っ白になった。ショックだった。記憶とたんこぶで済んでよかったんだ。
打ちどころが悪いこともあるんだから。
「きもちいー……」
多紀くんは俺のシャツをくしゃっと掴んで、そう呟いた。多紀くんの手。左手。
薬指には、俺と交換した指輪。多紀くんはずっとつけてる。
記憶がなくなっても、俺と付き合っていたことを知らなかったときにも、指輪をつけていた。
「たぶんこれずっとつけてましたよね」と言って。
泣きたくなったんだ。我慢したけれど。多紀くん、その指輪ね、俺とお揃いなんだよって言いたかった。
多紀くんが生きてるだけでいい。
多紀くん。好き。大好き。愛しい。愛してる。可愛い。ぜんぶ好き。
「多紀くん。好き……」
「俺も……せんぱい、好きです……好き……」
また寝息を立てている。寝言かな。ご褒美みたいな寝言。
夢じゃないかな。
多紀くんに片想いをしていたときは、二人で寄り添って眠る日が来るなんて想像だにしなかった。いまが幸せの絶頂かもしれない。
はあ、このまま死んでしまいたい……。
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