エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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最終章 あるふたりきりの夜

五 抗えない(※)

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「多紀くん、俺の多紀くん」

 正常位で入ってきて、お互いを高めるように、気持ちよくなるように、ぱんぱんとぶつけるように音を立てたり、中をぐりぐりしてきたり、締めたり、すがりついたり。
 和臣さんはうわ言のように、俺の耳元で囁いている。口づけの合間に、何度も名前を呼んでくる。
 引っ張りあげられて対面座位になって、視線が合った。
 お互いに汗だくになって、和臣さんは俺の頬に手を添えて、微笑んでいる。

「潤んでて可愛い。多紀くん。俺のこと見て」
「和臣さん、きもちい……」

 俺は息も絶え絶えになりつつ、和臣さんの肩にしがみつく。和臣さんも気持ちよさそう。よがってる俺の姿に興奮して、中で大きくなっている。すごく固くて、抉られて、和臣さんの先っぽが俺の感じるところに当たっていて、すりすり擦られると、じわとなにかが溢れてくる。
 タオルを敷いてるから大丈夫か。高級ホテルのきれいなタオルを汚すのは忍びないけど、ベッドよりは。

「んん……」

 和臣さんは俺の片手の指を食んでる。うっとり吸ってる。美味しそうにしていていやらしい。
 前屈みになってきて、乳首を舌先で転がしてくる。もう片方も指先で摘まれて、性器も扱かれているし、杭みたいに打ち込んできて、どこもかしこも責められて切ない。
 声が震える。

「か、和臣さん、イっちゃう」
「どこがいい? どこでイくの?」
「わかんない、全部、全部きもちいい、和臣さんの体……」
「多紀くん」

 動きが激しくなった。やっぱり繋がっている部分で一緒にイきたいな、と思う。全身汗だくで肌が吸いついてぴたぴたしていて、とけそう。
 和臣さんとセックスするたびに、自分の身体じゃないみたいに制御できなくて、性欲が溢れて止まらなくて、おかしくなるほど求めてしまう。他の人を知らないけれど、体の相性が合うんだと思う。
 求められて気持ちいい。感覚が研ぎ澄まされて、全身がひりひりする。
 低くかすれる声や、ぐちゅぐちゅという音で耳も支配される。
 舌を吸われて、まだ和臣さんの精液の味が残ってるし、お互いの唾液まみれだし。
 和臣さんのワックスのにおい、体臭、精液のにおい、汗、アルコールのにおいもする。
 目を開けたら目が合った。五感のすべてがこのひとがいいと言っている。
 汗だくになって前髪を寄せて、熱い吐息と、額を擦り合わせながら。

「和臣さん……」
「多紀くん。大好き」
「どこが、そんなに好きなんです?」
「理屈じゃない。全部好き。何もかも。俺が独り占めしたい。俺のものがいい」
「どこからどう見ても、和臣さんのものですから」
「うん」
「好きですよ」
「俺の好きのほうが大きいもんね。えへへ」

 なんで張り合ってんだよ。
 俺は和臣さんの頬を挟んだ。

「俺も、わりと大きいと思うんです」
「へぇ。どれくらい?」

 そうだなぁ。
 両腕で巻き付いて、頭を抱くようにしながら、耳元で囁く。

「だって俺、和臣さんの何もかも、許してるでしょ?」

 今更言う必要はないんだけどさ。なんとなく、言う機会があるとすれば今かなって。
 俺は、和臣さんのことを許してる。無理やり始まった関係も、信頼を裏切られたことも。横暴も非道も、なにもかも。そういえば、そんなふうに始まったんだと思えるほど遠くなっている。
 和臣さんは驚いたような顔をして、入れたまま俺をぎゅうっと抱きしめて、ベッドに押し倒してきた。
 勢いのまま突いてくる。

「多紀くん、多紀くん……!」

 俺は両腕で抱き寄せながら囁いた。

「キスしてください、キス、好き」
「する、するから、んっ」
「んん……」

 覆いかぶさってきて、顔を両手で覆われて、唇を食んで舌を絡める。
 貪るみたいに全身で絡まり合いながら激しく口づけるうちに、震えてきて、高まっていく。なんでこんなになっちゃうんだろ。
 やっぱり体がいちばん好きかも。言えないけど。
 感情にも理性にも抗えない。強烈な磁石みたいに、ひっついていたい。

「あっ、和臣さん、俺」
「多紀くん、俺も、俺もイく。一緒にイって」
「んっ、イく……!」
「っ……」

 瞬間、口づけた。息がかかる。息を食べているみたい。
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