エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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最終章 あるふたりきりの夜

六 すること全部

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 何度もして、裸のままで寝落ちしていた。
 真夜中に目が覚めて、シャワーを浴びてローブを着て出てきたら、和臣さんも入れ替わりに起きてきて、シャワーを浴びてくると言ったので、俺はソファで待っていた。
 同じくローブを羽織った和臣さんが隣に掛けて、肩に顔を寄せてきて、ふぅ、と息を吐いている。
 そして呟いた。

「幸せすぎて……」

 また死にたいとか言うんじゃないだろうな。これが幸せの頂点、みたいな。
 俺は和臣さんに巻き込まれないよう、話をそらすように訊ねた。

「そういや、結婚って、何をするんです?」

 何か考えがあるのかな。
 和臣さんはにこにこしながら指折り。

「えーっとねぇ、結婚式でしょ。写真も撮るでしょ。新婚旅行でしょ。いまの指輪も気に入ってるけど、結婚指輪を作りたいね。新居に引っ越しもしよ。ペアの食器を揃えたいな。ペアルックもしたい。スーツ一式お揃い買おうよ。ネクタイもお揃いにしたい」

 それって結婚と関係ある?
 ま、いいけど、いろいろやることあるなぁ。結婚式……和臣さんはご家族と同期の皆さんでしょ。俺は、どうしよう。友達……ちょっと考えてみる。ヒロはいいけど紗英ちゃん……いまはすっかり友達同士でも元々は恋のライバル。呼ばない選択肢はないけど、呼び方には気をつけないと。
 両親はどうだろ。実母、実父、義父、義弟妹。あっ、西さんってどっち側?

「式は二人だけでいいよ。新婚旅行のついでに海外で挙げてもいいよね。披露宴はなくてもいい。みんな喜んでくれると思うけど、多紀くんの気持ちに任せる。あ、でも瑞穂さんは、俺の花婿姿を見たがってるから、食事会でもいいから呼んであげたい」
「ですね」

 イベント目白押し。結婚するのって自分たちだけじゃないんだ。俺も、瑞穂さんから直接、「死ぬまでに三郎お坊ちゃまの花婿姿を見せてほしい」ことと、「二人の幸せそうな姿を写真におさめて、自分が死んだときには棺桶に入れてほしい」とも言われている。
 いや、そうじゃなくて。

「あのー、手続きとかは?」
「できる手続きはするつもり」

 だよな。聞くまでもなかったわ。

「俺にはよくわからないので、お任せできると助かります」
「でも、養親と養子にはしない。将来的に、絶対に配偶者になるんだ。多紀くんと名実ともに配偶者として、家族になる」
「今は、無理ですもんねぇ」

 和臣さんは少し考えるように、静かに言った。

「俺の考えなんだけど、近い将来、同性同士でも入籍できるように変わるんじゃないかな。そういう動きがあるの、知ってる? どうなるかはまだわからないけど」
「あ、はい」

 たまにニュースでやってるよね。
 他人事の気分だったけど、俺、当事者だったんか……。

「俺は、病院の同意書も、相続も、多紀くんに配偶者の立場であってもらいたい。だから、できる手続きはする。だけど、法律婚で生じる効果を他の手続きで補っている現行の制度は、良し悪しはさておき、俺が本当にやりたいことではないんだ。俺は、他の男女と同じ手続きで、多紀くんと一緒になりたい」
「は、はい」
「法律婚に似せているけど異なる制度では、残念ながら不満足なんだ。俺たちが受けられる利益には、法律婚できるひとたちとは明確な格差があって、現在ある制度で緩和されている部分も大きいというけれど……俺は入籍こそが現代の恋人たちが結婚に求める価値だと考えてる。養親子という縦の関係にする手もある。でも同性婚できるようになったとき、養親子間の縁組解消後の婚姻禁止はどうなるか……。批判もあって、廃止する可能性もあるけど、禁止のままだと元も子もないもんね」

 せっかくたくさん、いろいろ考えているのに、感想が「早口だな」だけになってしまって申し訳ない。でもわかんない。難しい。
 俺はとりあえず頷いておく。

「だから、せっかく資格もあることだし、同性婚訴訟の原告弁護団への参加や支援も検討してる」
「スケールが……大きいですね……」
「あー、でも、会社の許可を得られないかな。何年かは、今の会社でやりたいから……。次郎兄さんの事務所に入所する頃には、入籍できるようになっていたりしてね」
「うん……」
「次郎兄さん、事務所に入れてくれるか、わからないけどね……」

 俺は照れくさそうにしているその頬に唇を寄せた。和臣さんは反射的に喜んでいる。
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