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番外編20 季節ものSS
多紀くんが嫉妬……?
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大和がきゅんきゅん鳴いている。大和は、犬部屋の床で、多紀くんの抱っこのもと、爪を切られている。
大和は苦手なことは少ないが、唯一、爪切りが苦手だ。
暴れはしないものの、多紀くんが爪切りバサミで切っている間は泣き言をいい、終わったら恨み言のように鳴いている。
「大和、ほらおやつだよ」
多紀くんは大和の大好物おやつカリカリササミキューブでご機嫌取り。大和はおやつはもらうけれどまだ不服そうで、「これではご機嫌は取れませんから」感を出している。
多紀くんは苦笑しつつも悲しそう。多紀くんを悲しませるものは大和であっても容赦しないぞ。
俺は言った。
「大和、仕方ないだろ」
多紀くんは嫌われて大反省会中。
「痛かったのかな。深くしてないけど……」
「柴犬は大げさだから」
「痛かったならごめんね」
「あっ、すごい被害者ヅラしてる」
大和は、まるで重傷患者のようによたよたと俺のほうへ歩いてきて、足元にすりよってくる。なんと都合の良い。
「はいはい、大和。俺でよければ慰めてやる。ほらおいで」
大和はまるで普段多紀くんにするみたいにこてんと足の甲の上に倒れてくる。重たい。
俺は大和を抱っこして、ソファに掛けた。上に乗っかった大和は得意げに足をかけてきて、なんだか嬉しげに頬を舐めてくる。俺は念のため大和の足を確認。痛がるそぶりはなく、爪を見たけど浅めに切ってある。
「本当に痛かったのか? よしよし」
今度は俺が爪切り担当してあげようかな。暴れるかな。獣医さんに切ってもらおうか。
「物凄いひどいめに遭ったんだ」ときゅんきゅん鳴く大和の頭に鼻を埋める。普段は俺がこれをすると「何してんのこの人」みたいな目で見てくるくせに、いまは「俺たち大親友」みたいな顔してる。都合いいなぁ。
「でもな大和、多紀くんに悪意があるわけじゃないんだよ。お前のためなんだよ」
大和に振られた多紀くんは肩を落としている。夜に犬小屋ケージで大和が眠るまで、まったく相手にしてもらえていなかった。
この子、頭が良くて園児ぐらいの知能はありますよ、と言われたことがあるが、一晩寝たらさすがに忘れると思う。
だから寝るときまで引きずらなくてもいいのに、多紀くんは風呂に入って寝間着を着て、ベッドに腰掛けてもまだ溜め息を吐いていた。
「寝たら忘れるよ」
俺は先にベッドに横たわってうつ伏せて、枕元の時計をセット。平日だからエッチなし。ルールを守る偉い俺様。えっへん。
多紀くんは俺の隣に入ってきて、俺にくっついてくる。
「……慰めてください」
なにそれ可愛い……。俺は多紀くんの頭の形と短髪を味わうようによしよしする。
「大丈夫だよ。わかってるでしょ。大和は多紀くんが大好きだよ。へんに意地張っちゃって仲直りしづらかっただけだよ」
「大和にひどいことした気分なんです」
「大和は意味がわからないだけだよ。でも爪伸びてたら切らないと危ないもんね。次は俺が切るよ。それか、獣医さんにお任せしよう」
「うう……」
俺の胴体に腕を回して胸に顔を埋めてくる。甘えん坊の多紀くん。可愛い。
ひとしきりよしよししてあげると落ち着いたみたい。このまま寝るのかな。くっついて離れない多紀くん、最高。
「ずっと抱っこしていてあげようね。よしよし」
「……」
「もう寝たかな」
俺は寝室の明かりのリモコンを操作して常夜灯にする。少し暗め。おまじないのように呟く。
「明日になればきっと大丈夫。多紀くん。おやすみ」
「あの、和臣さん」
「あ、まだ起きてたの」
多紀くんは顔をあげた。胸に縋りついてキスしてくる。
「俺のこと、もっとよしよしして……」
「あはは。はいはい」
背中なんかもさすってあげる。こんなに甘えん坊なのは珍しい。
多紀くんは身動ぎをした。
「どうしたの?」
「……もっと慰めて」
「ちゅーしてあげようね」
「ん……」
あの、と多紀くんはキス寸前の距離で言った。
「さっき、和臣さんが大和のこと抱っこして慰めてたの、ちょっと妬けちゃった」
「ふふ、羨ましかった?」
「和臣さんのここ、俺の席だもん」
「え、大和に妬いてたの!?」
多紀くんはもそもそと上掛けにもぐりながら、ふたたび俺の胸に顔を埋める。
「……ねぇ、和臣さん」
「はい」
「俺のこと、もっと可愛がって。……お休みの夜みたいに」
と、多紀くんは寝間着越しに、俺の股間をえろっちく撫でた。
え……え!?
〈多紀くんが嫉妬……? 終わり〉
大和は苦手なことは少ないが、唯一、爪切りが苦手だ。
暴れはしないものの、多紀くんが爪切りバサミで切っている間は泣き言をいい、終わったら恨み言のように鳴いている。
「大和、ほらおやつだよ」
多紀くんは大和の大好物おやつカリカリササミキューブでご機嫌取り。大和はおやつはもらうけれどまだ不服そうで、「これではご機嫌は取れませんから」感を出している。
多紀くんは苦笑しつつも悲しそう。多紀くんを悲しませるものは大和であっても容赦しないぞ。
俺は言った。
「大和、仕方ないだろ」
多紀くんは嫌われて大反省会中。
「痛かったのかな。深くしてないけど……」
「柴犬は大げさだから」
「痛かったならごめんね」
「あっ、すごい被害者ヅラしてる」
大和は、まるで重傷患者のようによたよたと俺のほうへ歩いてきて、足元にすりよってくる。なんと都合の良い。
「はいはい、大和。俺でよければ慰めてやる。ほらおいで」
大和はまるで普段多紀くんにするみたいにこてんと足の甲の上に倒れてくる。重たい。
俺は大和を抱っこして、ソファに掛けた。上に乗っかった大和は得意げに足をかけてきて、なんだか嬉しげに頬を舐めてくる。俺は念のため大和の足を確認。痛がるそぶりはなく、爪を見たけど浅めに切ってある。
「本当に痛かったのか? よしよし」
今度は俺が爪切り担当してあげようかな。暴れるかな。獣医さんに切ってもらおうか。
「物凄いひどいめに遭ったんだ」ときゅんきゅん鳴く大和の頭に鼻を埋める。普段は俺がこれをすると「何してんのこの人」みたいな目で見てくるくせに、いまは「俺たち大親友」みたいな顔してる。都合いいなぁ。
「でもな大和、多紀くんに悪意があるわけじゃないんだよ。お前のためなんだよ」
大和に振られた多紀くんは肩を落としている。夜に犬小屋ケージで大和が眠るまで、まったく相手にしてもらえていなかった。
この子、頭が良くて園児ぐらいの知能はありますよ、と言われたことがあるが、一晩寝たらさすがに忘れると思う。
だから寝るときまで引きずらなくてもいいのに、多紀くんは風呂に入って寝間着を着て、ベッドに腰掛けてもまだ溜め息を吐いていた。
「寝たら忘れるよ」
俺は先にベッドに横たわってうつ伏せて、枕元の時計をセット。平日だからエッチなし。ルールを守る偉い俺様。えっへん。
多紀くんは俺の隣に入ってきて、俺にくっついてくる。
「……慰めてください」
なにそれ可愛い……。俺は多紀くんの頭の形と短髪を味わうようによしよしする。
「大丈夫だよ。わかってるでしょ。大和は多紀くんが大好きだよ。へんに意地張っちゃって仲直りしづらかっただけだよ」
「大和にひどいことした気分なんです」
「大和は意味がわからないだけだよ。でも爪伸びてたら切らないと危ないもんね。次は俺が切るよ。それか、獣医さんにお任せしよう」
「うう……」
俺の胴体に腕を回して胸に顔を埋めてくる。甘えん坊の多紀くん。可愛い。
ひとしきりよしよししてあげると落ち着いたみたい。このまま寝るのかな。くっついて離れない多紀くん、最高。
「ずっと抱っこしていてあげようね。よしよし」
「……」
「もう寝たかな」
俺は寝室の明かりのリモコンを操作して常夜灯にする。少し暗め。おまじないのように呟く。
「明日になればきっと大丈夫。多紀くん。おやすみ」
「あの、和臣さん」
「あ、まだ起きてたの」
多紀くんは顔をあげた。胸に縋りついてキスしてくる。
「俺のこと、もっとよしよしして……」
「あはは。はいはい」
背中なんかもさすってあげる。こんなに甘えん坊なのは珍しい。
多紀くんは身動ぎをした。
「どうしたの?」
「……もっと慰めて」
「ちゅーしてあげようね」
「ん……」
あの、と多紀くんはキス寸前の距離で言った。
「さっき、和臣さんが大和のこと抱っこして慰めてたの、ちょっと妬けちゃった」
「ふふ、羨ましかった?」
「和臣さんのここ、俺の席だもん」
「え、大和に妬いてたの!?」
多紀くんはもそもそと上掛けにもぐりながら、ふたたび俺の胸に顔を埋める。
「……ねぇ、和臣さん」
「はい」
「俺のこと、もっと可愛がって。……お休みの夜みたいに」
と、多紀くんは寝間着越しに、俺の股間をえろっちく撫でた。
え……え!?
〈多紀くんが嫉妬……? 終わり〉
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