今夜、恋人の命令で変態に抱かれる

みつきみつか

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第三章

四 返事

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『金曜のこと、話したい』

 一眠りしてBさんのマンションを出て明け方に帰宅した俺は、メッセージを送信した。
 同僚からはすぐに返信がきて、日曜の朝から会うことになった。朝飯にでもするかと言ってカフェに入る。混雑していたのでテイクアウトにして、公園に入ってベンチでサンドイッチを開けた。

「朝の光が目に染みる……」

 今朝の返信は早かったが、どうやら二度寝していたらしい。
 いつも職場か、仕事帰りなので、私服姿が珍しい。目頭を押さえる顔は憔悴気味だった。金曜日からまだ二日も経っていないというのに、少しやつれたみたいだ。

「迎え酒でもした?」
「昨日も呑んでた」
「俺も呑んだよ」
「……振られるのがわかってたからさぁ」

 公園の広場は明るく、家族連れやカップル、ジョギングをするひとなどで賑わっている。なんだか遠い世界みたいに思えた。
 俺は言った。

「でも、……ありがとう」

 彼は頭を抱えた。

「つらいな」

 俺は続けた。できるだけ、自分の偽らざる本心を伝えたいと思う。

「好きだって言ってくれるの嬉しいよ。たぶん、お前が想像しているのよりも、百倍は舞い上がったし」

 家に帰ってきてから、想像してみた。
 これまで以上に近づいて、彼と口づけて、そう遠くない未来にセックスもして、いずれ一緒に暮らすという妙な妄想もして、どうやらそれなりに喧嘩もするけど好き合って、想像の中の俺と彼は、幸せそうに笑っていて羨ましくなった。俺の勝手な妄想なのに一人歩きしていって、まるで目の前の公園の風景のように、明るい光に満ちている。
 告白なんてしないでほしかったと思ったと同時に、誰かの目に映る自分が恋愛対象であることの安堵や、表面だけしか見えていない怖さ、なにもかもを思い出した。あのころより大人になって、別のひとになって、なんだか遠いところに来たという感じがする。
 あと一歩だけ踏み込んだら、別の世界が広がっている。それは想像をなぞる部分もあるし、自分では想像すらできないような出来事もあるのだろう。悪い気はしなかった。
 なのに、断り文句しか出てこないんだ。

「だけど、ごめん。付き合えない」
「わかった」
「すごく嬉しかった」

 なかったことにはしたくないなと思う。もしできるものならこれからも友達でいたかった。だが、告白されてしまった以上、戻れるかは未知数だ。
 でも彼の思いを忘れたくない。忘れられたくもない。

「好きなひとがいるんだ」
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