元カレが社内で迫ってくる

みつきみつか

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第三章 オクトーバーフェスト、二次会

七 これからどうしようね

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 社内カフェ。
 ふたりきり。
 高岡主任に抱きしめられてる。
 恋人だったとき、俺と高岡主任は、本当にちゃんとした恋人だった。たくさんデートして、キスもして、体の関係もあって、こんなふうに抱き合った。
 だから当時に戻ったみたいになる。ゆっくり抱き合って、お互いの呼吸を合わせるみたいなハグ。
 高岡主任、いいにおい。
 高岡主任が何も言わないので、俺も何も言わなかった。
「これからどうしようね」とお別れみたいに言われて、なかったことでって答えて、そんなもんですかって言われて、そんなもんじゃなかった。
 寂しかったなぁ……。
 でも、会社の決めたことだ。それに、誰でもよりどりみどりな高岡主任は、島根には他に誰もいないから俺と付き合っていただけ。近くにいたのが偶々俺だっただけ。
 離れるタイミングで俺と別れるつもりなら、別れるしかないじゃんか。縋りついてどうするの。追いかけることも、追いつくこともできない。立場も弁えずになに勘違いしてるのって言われたら恥ずかしい。
 別れを切り出されたと理解した俺は、思考が追いつかないまま、いつものイエス。イエスマンだからなんでもイエス。付き合うのも別れるのも。
 だけど、とりあえず言いたいことは、振るつもりなんかなかった。
 別れる時のイエスは後悔してるんだ。たった三ヶ月の付き合いがあんなに楽しかったのに、簡単に思い出になんてしちゃってさ。
 馬鹿な俺。
 札幌の記憶がなくなるほど、喪失感でぼんやりしていたのに。
 たった三ヶ月の出来事だから、三ヶ月も経てば平気さと思ってじっと耐えていたのに、三ヶ月では寂しさは消えなかったな。
 あれがちょっとトラウマで、もう恋愛なんていらないって思ってたぐらい。

「俺、高岡主任のこと、振ったつもりありません」
「わかったよ」
「高岡主任のほうが振ったんだと思ってます。これからどうしようねって、あれがお別れだと思って……」
「あれってお別れかなぁ……」

 だったら、

「じゃあ、俺と、あれからどうするつもりだったっていうんですか」

 違うんだ、と高岡主任は笑った。

「本当に、頭を抱えてた。どうなるんだろうって。せっかく徹平くんと付き合えたのに、また別々になって、遠くて、僕のほうが不安だったんだ」

 えっ……。
 そんなことある??

「徹平くんって、誰のいうことでも基本的になんでも聞いちゃうし、僕との関係だって、本当はどう思ってるのか、わからなくて」

 高岡主任は俺の両手を胸で握りながら。

「なかったことでって、あの返事で、ああ、本当に、僕だけが一方的に想ってたんだって気づいて、つらかった。打ちのめされたよ」

 違うのに。
 俺は、俺だって、高岡主任のこと好きだった。付き合うまでは、高岡主任が相手だなんて想像すらしなかったけれど、付き合いはじめてからは幸せを感じていた。
 でも、高岡主任がそんなに俺のことを想っていたことは、いま知った。
 ノリで付き合っていたのだと思っていた。本当に。

「徹平くんとのこと、忘れたくても、忘れられなかった」

 遠くのほうで人の声がしているのに、高岡主任は口付けてきた。
 見られるって。
 しかも泣きそうになってるし。

「僕はずっと辛かったのに、徹平くんはあろうことか婚活に誘ってくるし……」
「う……すみません」
「最低な気分だったな……」

 それは俺が悪い。デリカシーない。
 反省。

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