元カレが社内で迫ってくる

みつきみつか

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最終章 社内、午前八時

十二 その件は聞いてない

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「僕のせい……?」

 高岡主任は深刻そうに俺を見つめている。
 俺、いったい何を言って……。
 社シスくんは不満そう。ああああ、ごめん。巻き込んだお詫びしなきゃ。職場船橋五往復とかどうかな。嫌がるかな。こうなったら結婚できるまで面倒みるよ。スパルタでよければ。
 管理部長も人事課長もきょとん顔。
 管理部長がフォロー。

「そういえば、高岡のシンガポール行きは、結川の手柄だな!?」

 と、管理部長はドンピシャのところを突いてきた。
 俺は袖で涙を拭き拭きしながら言った。

「はいっ! 全部解決しました! なので、なんの迷いもなく、高岡主任はシンガポールに行けますね!」

 最後のほうは嗚咽をこらえながらで、出ない声を無理やり出したら、叫ぶみたいになってしまった。
 高岡主任は、目を丸くして、俺の両肩を掴んだ。
 俺の両肩を強く揺さぶりながら真剣な眼差しで問いただしてくる。

「徹平くん、その件、聞いたの!?」
「聞きました!」
「じゃあ、了承するってこと!?」
「はいっ!」

 そこで、俺は泣いてるのに、高岡主任は花が咲いたような笑顔になる。
 そんでもって、なんでか知らないけれど、俺に抱きついてきてその場で飛び跳ねている。

「徹平くんOKですね! 話を進めてください!」

 ん?
 なんだこの、高岡主任の喜びようは。
 進めるって、一体なんの話?
 んん???
 俺は人事課長を見る。人事課長は訝しげに首を傾げている。

「ん……?」

 管理部長は人事課長の背中をばしばし打って称賛した。

「さっすが、仕事が早いじゃないか。やるなぁ!」

 ???
 俺、人事課長、社シスくんは、事態を飲み込めず、頭のうえに疑問符。
 いったい何の話?
 あきらかに別の話をしてるよね?
 管理部長は唸った。

「いやーしかし、結川が中国語を話せるとはな。いつの間に習ったんだ?」

 いよいよ話がわからなくなってきた。
 高岡主任は俺の肩を抱いている。得意気に言った。

「きっとマレー語の習得も早いはずです。徹平くん、英語はふつうに話せるものね」

 なんでやねん。
 俺が話せるのは東京弁と、関西弁イントネーションエリアであればどこにいってもそれなりに通じる関西弁のちゃんぽんみたいなやつだけだよ。
 中国語? マレー語? 英語?
 ???
 まさか。
 ……シンガポールの公用語!?

「よし! ふたりで頑張って行ってこい!」

 え!?

「!?」
「はいっ! 二人で尽力します!」

 高岡主任は管理部長に対し、困惑する俺の分まで勝手に返事をした。
 状況についていかれない社シスくんは、開けたビスケットをとうとう食べ始めたのだった。
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