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番外編
シンガポールのお話
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シンガポールのお話
「あ、電話だ」
日曜日の昼下がり。
昨夜遅かったので、午前中だらだら起きて家のことをしていた俺と修さんは、ふたりで遅めの昼ごはんを食べに外に出てきた。
近所に大きな商業施設があって、そこのカフェ。インド料理の創作料理。テイクアウトもあって時々来てる。
テーブル席で向かい合い、けだるい感じの時間を過ごしていると、俺のスマホに電話がかかってきた。
「どなた? 大丈夫?」
「あ、家族ですね」
妹だ。そういや昨夜もかかってきてたな。メッセージで「そっちの様子聞かせてよ。あと恋人みせてよ」とか来てた。
姉からも、「どうよ、隠してた恋人とのラブラブ海外生活は? 充実してる? 恋人みせてよ」と追撃も来てた。
二方向からおもちゃにされてる俺。
高円寺は実家がそう遠くなかったので、返信をちょっとでも怠ると容赦なくアパートに突撃されてた。でもいまはこの遠さだ。物理的距離に感謝。無視だ、無視。
恋人なら、今日もばっちりだ。俺は寝起きルック。修さんも同じ寝起きのはずで、髪は無造作な感じなのに、イケてるツラとスタイル抜群のせいか、寝起き感一切なし。
俺がスマホを放り出していると、修さんは心配そうにしてる。
「いいの?」
「いいですよ。どうせ大した用事じゃないんで、あとで連絡しておきます」
「そっか」
注文したカレーやサモサが届いて食べ始める。おなかすいたなー! 朝めしも食べてないし!
「体は大丈夫?」
「……っ」
修さんがしれっと訊いてくる。あぶな、サモサ吹くとこだった。
「だ、大丈夫です」
「仕事たいへんだし、ほどほどにしないとかもね。徹平くん、無理しないでね」
っていうけど、修さん絶倫だし、俺も体力はあるんで、ついついやりすぎちゃう。
こっちに引っ越して、早一か月。ずーっと、バタバタで、恋人らしいこととは程遠かった。
遠い地への引っ越し、新しい職場、慣れない言葉、仕事内容。最近やっと落ち着いてきたんだ。
修さんがあれこれしてくれたからよかったけど、ひとりじゃこなしきれなかったと思う。
いや、俺が赴任することになったのは修さんのアレのせいなので、責任とってほしいというのはあるけど。
新しい職場では、修さんは重要ポジションだ。修さんは俺が近くにいるのを望んでたけど、中学英語すらあやしい俺がそんな重要なひとたちの周りをうろちょろして、邪魔するわけにいかない。
けっきょく俺はこちらで庶務的な仕事をしていて、蛍光灯の交換や、掃除の手配などをしている。身振り手振りと周りのひとたちのあたたかさに助けられて、なんとかかんとかやれてるって感じだ。
てかいま俺の周りのひとたちときたら、俺に気をつかって、日本語で挨拶してくれたり、簡単な英語をゆっくり話してくれたりで、めっちゃ親切。
誰かに紹介されるとき、「TeppeiはMr.TAKAOKAのPartner……」という声が聞こえてこないでもないけど。
丁重に扱われてるのはそのせいか?
とにかく能力が違いすぎる俺たちだから、社内で、修さんとはほぼ会わない。時々会うとトイレに引っ張りこまれてちゅうちゅうしたりするけど……。
この一ヶ月、ほとんど休みもなく、あれこれ忙しく、修さんの出張なども重なって、ほぼ寝に帰るだけの生活を送っていたわけ。
それで、やっと、やーっとゆっくり休めることになったのが一昨日。
修さんは、俺を一日中抱いていた。
金曜日の夜から、今朝。明け方まで、エッチしまくって、軽く休んだり、買い込んだものを食べて、またエッチして、と、部屋に引きこもってずっと抱かれていた。
おかげさまで、現在、俺はけだるく、修さんはつやつやしている。
性欲がたまっていたときの修さんは、だいぶ雄っぽい雰囲気が出ていて、日が経つに連れ、「つぎ抱かれるときやばそう」と俺は自分の身を案じていたほどだ。修さんが絶倫だってわかってる。
いまはすっきりしたさわやかそうな青年だが、俺の体にはまだ、修さんの、俺を貫くときの興奮が、感覚として残っている。昨日、俺を執拗に抱いていたときの様子を思い出すと、人が変わったみたいだと思う。
「家族か……」
「修さんはちゃんと連絡とってます?」
「うちは放任だから。徹平くんとこみたいに仲良しじゃないよ」
「俺は遊ばれてるだけですよ」
「ふふ。遊ばれてるの?」
「ええ。恋人いたことなんかないの、姉と妹は知ってるんで、恋人紹介しろとか」
というと、修さんはカトラリーを置いた。
「恋人……紹介……!」
「もー、迷惑ですよねえ」
修さんはじっと考え込んで、真面目くさった顔で言った。
「そういえば、ご実家へのご挨拶を欠いてたね。ごめん。次に日本に帰るときに行こう」
突然なにを言い出すんだ。
「??」
「抜かった。大事な息子さんを預かる以上、きちんとしておくべきだった……」
なんだか反省している。
いや、べつに、あずかられてないよ。仕事だよ、仕事。海外赴任だよ。俺の。たいした仕事してないけど。
修さんは止まらない。
「近々、お姉さんと妹さんにご挨拶させてほしい。僕、電話に出るよ。ご両親はどうかな? なんて言ってる? 怒っていらっしゃるかな?」
何に怒るんだろ。
「いや、どうでしょ……」
両親は俺が海外赴任に行ってると思ってるはずだ。姉妹がどの程度話題にしてるかは不明。姉妹が騒がしいので、俺は放っておかれ気味だった。なにをしてても文句は言われない。
修さんは言った。
「こっちにご招待するのはご迷惑かな?」
「えっ、招待ですか!?」
「うん。あ、それなら、僕の親も呼んで顔合わせの会食するとか……気が早いかな?」
なんの気??
照れくさそうに微笑んでいる修さんの脳内で、いったい何が起こっている??
「家族公認、か……。うれしいね」
修さんはうっとりしてる。
「……そうですね」
よくわからないけど……修さんが幸せそうだから、まぁいっか。
〈シンガポールのお話 終わり〉
「あ、電話だ」
日曜日の昼下がり。
昨夜遅かったので、午前中だらだら起きて家のことをしていた俺と修さんは、ふたりで遅めの昼ごはんを食べに外に出てきた。
近所に大きな商業施設があって、そこのカフェ。インド料理の創作料理。テイクアウトもあって時々来てる。
テーブル席で向かい合い、けだるい感じの時間を過ごしていると、俺のスマホに電話がかかってきた。
「どなた? 大丈夫?」
「あ、家族ですね」
妹だ。そういや昨夜もかかってきてたな。メッセージで「そっちの様子聞かせてよ。あと恋人みせてよ」とか来てた。
姉からも、「どうよ、隠してた恋人とのラブラブ海外生活は? 充実してる? 恋人みせてよ」と追撃も来てた。
二方向からおもちゃにされてる俺。
高円寺は実家がそう遠くなかったので、返信をちょっとでも怠ると容赦なくアパートに突撃されてた。でもいまはこの遠さだ。物理的距離に感謝。無視だ、無視。
恋人なら、今日もばっちりだ。俺は寝起きルック。修さんも同じ寝起きのはずで、髪は無造作な感じなのに、イケてるツラとスタイル抜群のせいか、寝起き感一切なし。
俺がスマホを放り出していると、修さんは心配そうにしてる。
「いいの?」
「いいですよ。どうせ大した用事じゃないんで、あとで連絡しておきます」
「そっか」
注文したカレーやサモサが届いて食べ始める。おなかすいたなー! 朝めしも食べてないし!
「体は大丈夫?」
「……っ」
修さんがしれっと訊いてくる。あぶな、サモサ吹くとこだった。
「だ、大丈夫です」
「仕事たいへんだし、ほどほどにしないとかもね。徹平くん、無理しないでね」
っていうけど、修さん絶倫だし、俺も体力はあるんで、ついついやりすぎちゃう。
こっちに引っ越して、早一か月。ずーっと、バタバタで、恋人らしいこととは程遠かった。
遠い地への引っ越し、新しい職場、慣れない言葉、仕事内容。最近やっと落ち着いてきたんだ。
修さんがあれこれしてくれたからよかったけど、ひとりじゃこなしきれなかったと思う。
いや、俺が赴任することになったのは修さんのアレのせいなので、責任とってほしいというのはあるけど。
新しい職場では、修さんは重要ポジションだ。修さんは俺が近くにいるのを望んでたけど、中学英語すらあやしい俺がそんな重要なひとたちの周りをうろちょろして、邪魔するわけにいかない。
けっきょく俺はこちらで庶務的な仕事をしていて、蛍光灯の交換や、掃除の手配などをしている。身振り手振りと周りのひとたちのあたたかさに助けられて、なんとかかんとかやれてるって感じだ。
てかいま俺の周りのひとたちときたら、俺に気をつかって、日本語で挨拶してくれたり、簡単な英語をゆっくり話してくれたりで、めっちゃ親切。
誰かに紹介されるとき、「TeppeiはMr.TAKAOKAのPartner……」という声が聞こえてこないでもないけど。
丁重に扱われてるのはそのせいか?
とにかく能力が違いすぎる俺たちだから、社内で、修さんとはほぼ会わない。時々会うとトイレに引っ張りこまれてちゅうちゅうしたりするけど……。
この一ヶ月、ほとんど休みもなく、あれこれ忙しく、修さんの出張なども重なって、ほぼ寝に帰るだけの生活を送っていたわけ。
それで、やっと、やーっとゆっくり休めることになったのが一昨日。
修さんは、俺を一日中抱いていた。
金曜日の夜から、今朝。明け方まで、エッチしまくって、軽く休んだり、買い込んだものを食べて、またエッチして、と、部屋に引きこもってずっと抱かれていた。
おかげさまで、現在、俺はけだるく、修さんはつやつやしている。
性欲がたまっていたときの修さんは、だいぶ雄っぽい雰囲気が出ていて、日が経つに連れ、「つぎ抱かれるときやばそう」と俺は自分の身を案じていたほどだ。修さんが絶倫だってわかってる。
いまはすっきりしたさわやかそうな青年だが、俺の体にはまだ、修さんの、俺を貫くときの興奮が、感覚として残っている。昨日、俺を執拗に抱いていたときの様子を思い出すと、人が変わったみたいだと思う。
「家族か……」
「修さんはちゃんと連絡とってます?」
「うちは放任だから。徹平くんとこみたいに仲良しじゃないよ」
「俺は遊ばれてるだけですよ」
「ふふ。遊ばれてるの?」
「ええ。恋人いたことなんかないの、姉と妹は知ってるんで、恋人紹介しろとか」
というと、修さんはカトラリーを置いた。
「恋人……紹介……!」
「もー、迷惑ですよねえ」
修さんはじっと考え込んで、真面目くさった顔で言った。
「そういえば、ご実家へのご挨拶を欠いてたね。ごめん。次に日本に帰るときに行こう」
突然なにを言い出すんだ。
「??」
「抜かった。大事な息子さんを預かる以上、きちんとしておくべきだった……」
なんだか反省している。
いや、べつに、あずかられてないよ。仕事だよ、仕事。海外赴任だよ。俺の。たいした仕事してないけど。
修さんは止まらない。
「近々、お姉さんと妹さんにご挨拶させてほしい。僕、電話に出るよ。ご両親はどうかな? なんて言ってる? 怒っていらっしゃるかな?」
何に怒るんだろ。
「いや、どうでしょ……」
両親は俺が海外赴任に行ってると思ってるはずだ。姉妹がどの程度話題にしてるかは不明。姉妹が騒がしいので、俺は放っておかれ気味だった。なにをしてても文句は言われない。
修さんは言った。
「こっちにご招待するのはご迷惑かな?」
「えっ、招待ですか!?」
「うん。あ、それなら、僕の親も呼んで顔合わせの会食するとか……気が早いかな?」
なんの気??
照れくさそうに微笑んでいる修さんの脳内で、いったい何が起こっている??
「家族公認、か……。うれしいね」
修さんはうっとりしてる。
「……そうですね」
よくわからないけど……修さんが幸せそうだから、まぁいっか。
〈シンガポールのお話 終わり〉
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