その冷たいまなざしで

ココ

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紗奈 16

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びっくりした。

会えたのは嬉しかったけど
私の中で何も解決してないし いいとこだったのに連れ出されるし。

....佐和子さんに会ってるし。
何だか急に腹が立ってきた。

外に出て 暫く無言で歩いていたけど
体をよじって 速水さんの拘束をとく。

速水さんは驚いて私を見ながら立ち止まり。
一番悔しいのは 私と会わない間に 佐和子さんに
会ってた事。

こうして此処に居るって事は 
多分よりが戻ったんじゃない よね...。

速水さんは私に腕を伸ばして来たけど
私は振り払う。

苛立った顔をした速水さんは有無を言わさず力一杯抱き締めた。

「もう 限界。..避けるな。

 よく考えて 佐和子にも過去のこと謝った。
 同じことを紗奈にされたら
 単純に 耐えられないって思ったから。

 反省してる。もう紗奈がいるからこんな事にはならない。

 でも 
 俺は紗奈以外にはやさしく出来ない。
 
 そういう男だ。 許して欲しい。」


「...佐和子さんに会ったの?」

「ああ。」

「二人で?」

「ああ。」

そう言う事だったのかと

何だか 安心したのと 焼きもちとで
一辺に ぶわっと 涙が溢れだした。

速水さんは驚いた顔で 
それでも 長い指で涙を拭ってくれ。

私は色々悩んでたのに 

バックの持ち手を ぎゅっ と掴んで

口をついて出た言葉は

「い いやなの! 二人で会わないで!  呼び捨てで呼び合わないで!」 

だった。

それも 子供みたいに べそかきながら。

やっと速水さんの見上げた時には

大好きなやさしい 満面の笑みだった。
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