Think about you

てらだりょう

文字の大きさ
23 / 86
03

7

しおりを挟む





「案外優しいのね、龍二って」

「なにがだよ」

女がため息ついて。

「あの子、かわいそう」

変な事言った。

明け方近くに家帰ると。

クマの布団から。

「ずっ…ぐすっ…」

鼻すする音。

まだ起きてやがる。

ホテル連れ込まれそうになったのがそんな怖かったのか。

初めて俺んとこ来た時。

自分の身体、差し出そうとしたくせに。

女って意味不明だ。

「なに泣いてんだ」

「なっなんでもないっ」

なんでもないなら早く泣き止め。鬱陶しい。

「ごめんね…兵藤くん…」

「なにがだ」

「あたしがいたら彼女呼べないよね…ホテル代もったいないね…」

なに言ってんだ。

「別にあれ彼女じゃねえし。ホテル代お前に心配してもらわなくてもいいし」

「…彼女じゃないの?」

バカが布団から顔出した。

「ただのセフレ。アイツ男いるし、ヤりてえ時会うだけだし」

「そうなんだ…」

ため息ついて。

「あたしも女…ですけど」

なにわかりきった事言ってんだ。

「それよりお前、あのオヤジになんの相談があったんだよ」

「それは、その…兵藤くんには関係ないし…」

なんだと 。ムカつく。

「いっ!いでででっ!」

寝たままのこめかみ。グリグリ。

「てめえ、こんだけ俺に面倒かけといて関係ねえとはなんだ」

「いやっ!ごめっ!言いますっ!!」

手離してやったら。

起き上がって。

「…実は昼間も働こうかなと思って…あのオジサン、人事やってるからウチの会社おいでって言うから…」

だからついてったのか。バカが。

「お前最近ちょっとは稼げる様になったろ。なにも掛け持ちしなくてもいいだろ」

「いや、その…お金いるから」

前から思ってたんだが。

すぐ金もったいないとか言うし。

「お前、借金あんのか」

「えへへ…」

バカが苦笑いした。

コイツはバカだが。

金遣いは荒くねえし。ブランドもんとかも持ってねえし。

生活の仕方は地味だ。

借金て。

「いくらあんだよ」

「えーと…四百万…くらい?」

自分で把握してねえのかよ。

まさか男に貢いだワケじゃねえだろうな。

「お前、男に騙されたクチか?」

「違うよ!お兄ちゃんはそんな事しないよ!」

「は?なんで兄貴が出てくんだよ」

「いや、借金っても。あたしは保証人で…借りたのはお兄ちゃんで」

「なんで兄貴は借金作ったんだ」

「それは…なんか色々…」

いくら兄貴とは言え理由もわかんねえで保証人とかなるか。バカ。

「でもっ、ずっとお兄ちゃんはあたしの為に頑張ってくれたし、困ってるときはあたしが手伝うの当然と思うし」

このブラコン。

「で?保証人のお前がなんで昼夜働く必要があんだよ。借金してんのは兄貴だろが」

「いや、その…」

バカが言葉濁す。

両手グー。

「やっ、言う!言いますっ!」

バカはため息ついて。

「…お兄ちゃんがどっか行っちゃって。連絡取れなくなったからあたしが返済しないといけなくて」

俺の方がため息出る。

そんなんバカの更に上行くバカ兄貴じゃねえか。

てめえの借金妹に押し付けて行方不明かよ。

とんだ兄貴だぜ。

「でもね、お兄ちゃんは働いてあたし学校行かせてくれたし、その分お返しだと思って」

バカ過ぎ。

話聞いたところで。

俺が金都合してやるワケでもねえし。ま、そんな金もねえけどな。

「掛け持ちすんのはお前の勝手だがな。両方ダメんなんのがオチだぞ」

「…けど」

「お前、元々住んでたとこどうしてんだ」

「んー、そのままにしてる。家具とかもあるし」

ったく。しょうがねえな。

「じゃあ、解約しろ。今までの家賃分返済にまわせば少しはいいだろ」

「そしたらあたし、家なくなるよ」

「どうせここに住み着いてんだろが。無駄に家賃払うな。もったいねえ」

バカが。すげえびっくりした顔で。

「いいの!?あたしここにいてもいいの!?」

泣きそうな声で。

「ありがとう…兵藤くん…」

言った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

こじらせ女子の恋愛事情

あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26) そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26) いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。 なんて自らまたこじらせる残念な私。 「俺はずっと好きだけど?」 「仁科の返事を待ってるんだよね」 宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。 これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。 ******************* この作品は、他のサイトにも掲載しています。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

処理中です...