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しおりを挟む俺の仕事はホストだし。
だから客は女。
気分良く金遣わせるためにウソくさい甘い言葉も吐くし。
手も握りゃほっぺたに軽くキスくれえしてやる。
同じ水商売してんだからキャバの接客なんか簡単に想像つく。
仕事なんだからしょうがねえ。
そこんとこは割り切ってるつもりだ。
妬くとか。
そんなんじゃねえ。
ただ莉緒が下手くそだし。営業も客のあしらいも。
大体、危ねえとこ一回見てるしな。
あん時だって俺がいなかったらどうなってたんだか。
もっと上手くなりゃな。
でもそれでなくてもな。似合わねえんだよな。
男相手に商売すんのが似合ってねえ。
客から見りゃ素人っぽくてウケるか。
おかげで俺は余計な心配しなきゃなんねえ。
いつか危ねえ事なるかもって。
莉緒が水商売してんのがな。
別に。妬くとか。
そんなんじゃねえがな。俺もあんま。
言えた義理じゃねえがな。
店が忙しくなるのは日付変わる頃から。
その辺りで昼間の仕事してる客と夜の仕事してる客が入れ替わる。
「龍二さん、ちょっと」
ボーイが呼ぶ。客に言って席離れたらカウンターの隅でユウが待ってる。
「莉緒ちゃんが…」
「なんだよ?」
客送りに通りに出たユウが。
タクシーに引き摺り込まれそうなってる莉緒見つけて。
「今ロッカーにいます」
だからいつも。
気を付けろって言ってんだよ。
なにしてんだ、バカ。
ロッカールームで申し訳なさそうに椅子に座って。
「お前なにしてんだよ」
俺の声にびくつく。
「龍二さん、莉緒ちゃん悪くないから」
客が無理矢理やった事くれえわかる。
でもユウが見つけなかったら。
「さっきまで怖くて泣いてたんだから、怒んないであげてよ」
怖くて泣くくれえなら最初っからついてくんじゃねえ。
ほっぺたに手当てて上向かせたら。
濃い目の仕事用の化粧に。
涙の跡と赤い眼。
「あ、いや…ちょっとびっくりしただけで…」
無理して笑うな。
抱き締めると俺のシャツ握り締めるから。
俺はそんな事言いたくねえのに。
言わないでおこうと思ってたのに。
「…もう、お前仕事辞めろ」
「え!?いや、でも」
「もう借金の事も落ち着いたんだし。水商売じゃなくて違う仕事しろ」
これ以上心配させんな。
お前は向いてねえから。
無理してやるな。
俺は素っぴんのお前が。
好きだから。
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