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二十一話
しおりを挟むある日家の中を歩いていると足取りがフラフラした侍女を見かけた。
「大丈夫?」
と声をかける。
「ベルティアお嬢様…。それが最近眠れなくて」
寝不足か。不眠症にでもなっているのだろうか。顔色も悪いしそこそこの期間眠れていないのだろう。このままでは身体に良くないだろう。
眠る時にリラックス出来ていないとか心配なことでもあるのだろうか。
ストレスか…。
不眠症の原因は様々だが精神的なものもある。
もし、そうならば…
「ということでレイやるわよ!」
「え、何をですか?」
「ベルティア様どうしたんですか?」
突然、さあやるぞと張り切りだした私をみてポカンとした表情をしているレイとルミ。
先程の侍女について説明する。
「あ、わかりました。レイの魔法ですね!」
「そう!」
ストレスの原因があるならばそれをどうにかしなくてはならないがまずは睡眠をとる事が大事だろうと私は思い提案した。
睡眠不足は心身ともに悪い影響を与えるだろう。
「でも、僕寝かせるための魔法なんて使ったことありませんよ」
「寝かせるというよりリラックスさせればいいのよ」
それに眠らせるという強制的な方法は極力取りたくない。まずは心をリラックスさせ自然な眠りを促したい。
寝る時に緊張していたり不安な事があったりすると眠れなくなる。
心を穏やかにするだけでかなり変わるだろう。
「なるほど…でも僕の魔法うけてくれますかね」
というより寝室に入れてくれないだろう。
だが私には考えがある。
「これをみよ!」
そう言って取り出したのは直径2、3センチの小さな石だ。
「魔石…ですか?」
その通り魔石である。魔石は魔力を込める事でその効果が発揮される。
込めた魔力により様々な効果を得る優れものだ。もちろん直接かけるより効力は弱まるが。
ちなみに魔道具にも使われている。むしろ魔石が入ってなければ魔道具は動かない。
「これにレイの魔力を込めてその侍女に押し付けるのよ!」
「上手くいきますかね」
少し心配そうにしているレイだが大丈夫と言い聞かせる。
「レイやってみようよ!」
とルミも後押しする。
二人で説得すると「わかりました」とやる気になってくれた。
レイは深呼吸をして魔石に魔力を込め始めた。しばらくするとふうと息を吐いて「終わりました」と魔石を渡してきた。
「さすがレイ」
成功するか心配で緊張していたが受け取ったら効果を発揮したのか緊張がほぐれた。
これは成功ではないだろうか。
「一応旦那様に聞いた方がいいと思います」
レイがそう言うのでそれもそうだねと父様の元へ向かった。
事情を説明すると手に取り調べだした。
「これは…」
父様は一瞬驚くもすぐににこやかになった。
「悪いものではないだろう。使っても良いが使いすぎには注意しておくように」
許可も出たので早速侍女の元へ急いだ。
侍女を見つけ声をかける。
「ねえ、これ上げるわ」
「何ですか、魔石…?」
まあ、説明も難しいので正直に話す。
下手な嘘をついて取り返しのつかない事になったら大変だ。
「レイの魔力を込めた物だけど」
「え!」
かなり怖がっている、受け取りたくなさそうだ。だが貰ってもらわなくては困るので続ける。
「安眠効果があるものよ…多分」
「多分ってなんですか!」
聞こえていたか…。
「不眠は不安などから来る場合があるわ」
特に一度眠れないと今日は眠れるだろうかと不安になりさらに眠れなくなる。負の連鎖だと説明する。
こういった時は一度寝るのを諦めて他のことをしてみたりするのもありだが今回はこれを使用してもらいたい。
「そこで、まず不安を解消するこの魔石!」
そう言って押し付ける。
「このまま眠れないと心身ともに参ってしまうわ。それなら一か八かでこれに頼ってしまうのも良いのでは?」
と畳み掛ける。
「藁にもすがりたいのでは?」
そう言えば…
「わかりました…」
そう言って受け取った。結構限界だったようだ。
早速使ってみますと言ってフラフラと行ってしまった。
「ちゃんと夜に寝るのよ~」と言っておく。
さて効果は出るだろうか。
まあ、不安などの気持ちの問題ではなくカフェインの取りすぎだとか怪我や頻尿だとかの身体的原因などだったら効果はないだろうけどね…。
ストレス!と思い込んでだけどそちらの可能性もあることを渡した後に思い出すのであった。
次の日、不眠の侍女がやってきた。
「ぐっすり眠れました!」
とても嬉しそうに報告してくれた。
どうやら上手くいったらしい。原因は精神的なものだったようだ。
「本当?よかった」
でもこれに頼りすぎてはいけないと言っておく。ストレスならば出来る限りそれを取り除く。生活のリズムを整えるなど生活習慣を見直すように言っておく。
極力使わない方向にするように。
「あの、レイはいます?」
「レイ?お茶の用意をしてくれているからもう少ししたら来るんじゃないかしら」
「そうですか…」
ソワソワしだした彼女は来るまで待っても良いかと聞いてきたのでどうぞと了承した。
「ベルティア様お茶をお持ちしました」
レイとルミが戻ってきた。
「あの…レイ」
侍女が声をかけるとルミがレイの前に立とうとする。
「レイに何か?」
何か嫌なことでも言われるのかと思ったのだろう。しかしそんな心配をよそに彼女は何と頭を下げた。
「今までごめんなさい!」
「え?」
その行動に驚いた私たちは一瞬固まった。
「昨日この魔石を持ったらすごく不安だった気持ちが急に引いたの。そしたら眠れたわ」
「それは良かったです」
「本当に今まで酷いこと言ったりしてごめんなさい」
再び頭を下げようとするのをレイが止める。
「いいんです。僕にはベルティア様が…ベルティア様とルミがいてくれたんで」
それに誰だって得体の知れないものは怖いと思うのは仕方がないと言ってレイは許した。
「ありがとう…」
そう言って侍女は下がった。
最後にレイは怖くないって…私の救世主って広めておくわね!と残していった。
彼女はリーダー格なので影響力はあるだろう。
それからしばらくするとレイの魔法が認めれるようになっていった。
ちなみに彼女の不眠の原因は痴情のもつれでストレスが溜まっていたらしい。
しかも職場内でのことらしい。つまりこの家の中でだ。やめてくれ。
それにその理由なら解決したら自然と眠れていたのではと思う。
まあ、レイの魔法は悪いことばかりではないと証明するきっかけになったと思って良しとする。
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