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二十六話 レイ
しおりを挟む「君には陛下に悪意や何かやましい事がある人間をどうにかしてもらいたい」
夜会には王も出席するようで挨拶にやってくる者が大勢いる。そこで日頃から陛下に良くない感情を抱いているものを探れということか。
「最近良くない噂も聞くんでね。事が起こるまえに潰したいんだ」
「わかりました。しかし僕の魔法は精神に関与すると言ってもそこにある物を完全に消し去る事は出来ませんよ」
色々やってきてわかったが元々持っていない感情を作り出したり、完全にその感情を消す事は出来ない。そこに存在しているものを増加させたり減少させたりする魔法である。
そして人間の精神を壊すときはおそらく恐怖心や苦痛など悪感情を人の脳が耐えられないくらいに増加させるのではないかと思う。
生き物の感情は複雑だ。そこにある物を探し出すのもかなり大変で難しい。またあまりに細かい感情なら探し出す事すら不可能だ。
今回は悪い感情という大きな範囲のものなので見つけ出し減少させる事は可能だろう。
しかし、不自然に気持ちに大きな変化があれば気付かれて警戒されるだろうと説明すればカルロスは考え込む。
「消し去る事は無理か…。ならば気付かれない程度に魔法を使って見つけるだけなら可能だね」
「はい。というよりやれなくてもやれるようにしろという事でしょう」
「ははは、そうだね。ではその後の事はこちらでなんとかしよう」
正直なんとかできるなら別に僕の魔法がなくても探し出すこともできるのではないだろうかと思ったが時間が惜しいからという事だ。
忙しそうで大変だ。まあ、僕には関係ないが。
それはそうと魔法の調節や気付かれないような魔法の使い方を考えなくてはならないな。
かなり薄く魔法を使わねばならないだろう…、面倒だ。
「そういえば闇は範囲魔法も使えるのか」
「おそらく」
「それなら本当に色々な事に使えるね」
余計なことを言ったなと思ったがもう遅かった。
嬉しそうに他にはどんな使い方ができるかなと考え出した。もう、これ以上何かするのは嫌だ。ベルティア様に会えないのは困る。
「では早速マナーレッスンを始めようか。その後は魔法だね」
「…いえ、もう遅いので帰ります」
今からだなんて冗談じゃない。絶対にもう帰れなくなるじゃないか。帰ろうとした僕の腕をカルロスは掴む。振り返るとニコリと微笑まれた。
「しばらく帰れないよ」
話が違うと怒れば予定通りに全てがいくわけではないと言われた。本当に腹がたつ。
その日から夜会でのマナー、立ち振る舞いを叩き込まれた。その後は魔法の特訓。本当に帰る時間がない、非常に腹立たしい。イライラする。
魔法に関しては城の人間を使っていいと言われた。だが絶対におかしな事はしないよう言われたが実験にしていいとは中々ひどい話である。まあ、城の人間などどうでもいいのでありがたく使わせてもらっている。それに今回は人間相手のことなので実際に人間で試せるというのは助かる。
「…こうかな」
弱めに薄く気付かれないようにとイメージしながら魔法を使い人の中にある負の感情を探る。少しでも下げないように気をつける。今回は探すだけでいいのだ。そう言い聞かせ魔法を調節する。
ついでにある部屋の中全てに魔法を展開して人の感情を探るということもしてみた。一応成功したが一人に絞るより多めに魔力を使うようだ。あまり使いたくないな。
だが、やはり闇の魔法は範囲魔法が使えるようだ。光の魔法は一対一でしか発動できないらしい。しかし闇が増加と減少しか出来ないのに対し、光は失った身体の一部を再生させたりできものなどを消し去る事が出来るようだ。
光は狭く深く、闇は広く浅くと言ったところだろうか。
そうやって様々な実験を繰り返しついに夜会の日になった。
僕は結局一度もベルティア様の元に帰れなくてとてつもなく機嫌が悪い。
「もっと笑いなさい」
待合室でカルロスに言われたので仕方がなく笑った。
「これでいいんですか」
「ああ、素晴らしいね。君はとても綺麗な顔をしているから…。その気になればどんな女の子でも手に入れられるんじゃないかい」
「僕はベルティア様以外いりません」
そんなものはいらない。僕にはベルティア様だけいればそれでいい。彼女はどうしても欲しいがそれ以外はどうなろうとどうでもいい。
「そうだったね」
面白うにするカルロスをどうにかしてやりたいがぐっと我慢する。
コンコンとノックする音が聞こえカルロスが入室許可を出すと人が入ってくる。
僕くらいの少年だった。
「どうも初めして。カルロス・ナルファスの長男エドワルド・ナルファスだよ」
まあ、見た瞬間そうだろうなと想像はついたが実際言われると今すぐ逃げ出したくなる。絶対いい事などない。
「君がレイ?最近父上が目をかけてるっていうから会ってみたかったんだよ」
「別に君の父上を取ったりしたいので安心してくださいね」
そう答えれば一瞬驚いたもののすぐに笑い出す。
笑い方、雰囲気がカルロスそっくりだ。やはり関わらない方が賢明だろうと思う。早く帰ってくれないだろうか。無理だろうな…。
「そうじゃないよ、どんなやつか気になったんだよ」
まじまじと僕を観察したエドワルドは手を差し出してきた。
「よろしく、レイ。同じ歳なんだし敬語とかなくていいから。それにエドって呼んでよ」
「いや、僕は平民ですし」
身分の差があるので無理だと答えれば「それはそのうち解決するだろう」と意味深なことを言われた。なんだそれは。
まあ、面倒くさいのでさっさと手を握り返しす。
「わかったよ、よろしく。エド」
そうするととても嬉しそうによろしくと笑っていた。
そうは言ってもよろしくなどしたくないが。
まあ、この場ではテキトーにやり過ごしてこれから関わらなければいいと思った。
しかしこのエドという少年とはこれからも長い付き合いになるとは思ってもみなかった。
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