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古河さかえ

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第一話 『月の花』

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登場人物

 カツイ(15・男) 
 トバ(15・男) 
 ゲッカ(13・男) 
 ミナリ(2・男) 
 ヨシイ(17・男)

 先生A(中年・男) 
 女生徒B(15・女) 
 女生徒C(15・女)

◯中学・廊下 
先生A「こらぁ! カツイ! トバ!!」 
SE(廊下を慌ただしく走る複数の足音) 
先生A「待てというのが分からんのか!!」 
トバ「カツイくん、あっちから行けるよ!」 
カツイ「よぉーっし、このまま逃げ切るぞ!」 
女生徒B「あ、カツイとトバだ~」 
女生徒C「毎回追いかけっこよくやるよアイツらも」 
SE(足音) 
カツイ「待てって言われて待つ位なら最初っから逃げないって。じゃあな、センセっ。ばいばーい」 
トバ「ばいばーい」 
   そのまま走り去る 
先生A「(息を切らせながら)まったく、あの二人は……」

◯校舎の屋上(晴天) 
カツイ「いーい天気だなあー」 
トバ「ほんっと、いい天気だね」 
SE(どさっと床に寝転がる衣擦れの音) 
カツイ「アイツにも……こんな空見せてやりたかったな」 
トバ「……カツイくん?」 
カツイ「んあ?」 
トバ「……何でもない」 
SE(ジャリっと足音) 
ゲッカ「カツイ先輩、トバ先輩」 
カツイ「ん? 誰だお前」 
ゲッカ「初めまして。僕一年の、『月の花』って書いて『ゲッカ』って言います」 
カツイ「は?」 
トバ「え、えっと、ゲッカくん?」 
ゲッカ「はい」 
トバ「僕達に何か用?」 
ゲッカ「僕、先輩達『家出人』の仲間になりたいんです」 
カツイ「はぁ?」

◯学校・進路指導室 
SE(カツカツ、と指で机を叩く音) 
先生A「カツイ、お前は進学する気ないのか?」 
カツイ「はあー……」 
先生A「先生はこんなにお前の将来を心配してやっているのに」 
SE(トトンと机を指で叩く) 
カツイ「心配?」 
SE(バンっと机を叩いて立ち上がる) 
カツイ「心配してるって俺のこと? 馬鹿な事言わないでよセンセ。流行んねーよ今時そんなの」 
先生A「なつ……お前なあ!!」 
カツイ「つう訳でー俺かーえるっ」 
SE(ガラッと扉を開く音) 
先生A「ま、待ちなさいカツイ!」 
カツイ「(遮って)あーさっきの答えだけど。俺、進学する気とか全っ然無いから」 
先生A「おい、待ちなさい! カツイ!」 
SE(ピシャンと扉が閉まる)

〇廊下 
カツイ「ふうー。相変わらずしつけえなあ。って、おわあ!」 
ゲッカ「進路指導の面談終わったんですか?カツイ先輩」 
カツイ「おっおまっ、なんでこんなところにまで来てるんだよっ」 
ゲッカ「『家出人』の仲間にに入れて貰えるまで付きまといますよ?」 
カツイ「トバっちどこ……タスケテ」 
ゲッカ「トバ先輩にばっかり頼らないでくださいよーう」 
カツイ「大体お前……」 
ゲッカ「(遮って)ゲッカです」 
カツイ「あ?」 
ゲッカ「名前、ゲッカです」 
カツイ「こほん。大体お前、誰から聞いたんだよその話」 
ゲッカ「情報源は秘密です。ふふっ」 
カツイ(M)「あっ……」

〇(回想)二年前 
SE(波の音) 
カツイ「なんでっ……なんでだよ!!」 
ヨシイ「落ち着きなさいカツイ!」 
(回想終わり)

〇廊下 
ゲッカ「先輩?」 
   心配そうに声をかけるゲッカ 
カツイ「おっと、悪ぃな」 
ゲッカ「どうかしました?」 
SE(走る足音) 
トバ「(割り込むように)カツイくん!」 
   息を切らせながらやってくるトバ 
カツイ「トバ?」 
トバ「カツイくんっ、あのね……」 
   カツイに耳打ちするトバ 
カツイ「えっ、ミナリが?」 
トバ「どうしよう?」 
カツイ「どうしようっつっても……そうだな、俺があっち向かうから、お前はアイツに電話で連絡しとけ。頼んだぞ!」 
トバ「分かった」 
   言うと同時に走り出すカツイ 
ゲッカ「え、ちょっ、カツイ先輩どこ行っ……あの、トバ先輩一体何があったんですか」 
トバ「ゴメンね、ちょっと急用なんだ」 
   携帯に手を添え小声で話し始めるトバ 
トバ「もしもし僕です。今大丈夫ですか?」 
ゲッカ(M)「誰と電話しているんだろう」 
トバ「はいあの、ミナリくんが熱を出してしまったらしくて。カツイくんが保育園に向かってますけど……」 
ゲッカ(M)「『ミナリくん』って……さっきもカツイ先輩が言ってたけど、子供……なのかな?」 
トバ「はい。はい分かりました。あ、それでですね、僕達の家出の事を知っている男の子が現れて仲間に入れて欲しいって言われてるんですけど……」 
ゲッカ(M)「えっ、僕のこと?」 
トバ「えっでも……はい、分かりました。失礼します」 
   通話を切る 
ゲッカ「先輩?」 
トバ「ゲッカくん。許可が出たよ。ゲッカくんを仲間に入れていいって」 
ゲッカ「本当ですか!?」 
トバ「うん。じゃあ行こうか僕達の家に」 
ゲッカ「はい!」

〇家出人の住むアパート(夕) 
SE(ガチャっと扉が開く) 
トバ「あ、帰ってきた」 
カツイ「ただいまー」 
トバ「お帰りカツイくん」 
SE(ぱたぱたとスリッパで駆け寄る) 
トバ「ミナリくん抱っこ代わるよ」 
カツイ「おう、サンキュな」 
ゲッカ「お帰りなさい先輩」 
カツイ「うえっ!? (声を潜めて)ちょ、おいトバ。なんであの一年生がウチにいるんだよ」 
トバ「(声を潜めて)あの人が良いって言ったんだよ」 
カツイ「アイツがあ!?」 
ミナリ「ふ、ふぇっ……」 
   カツイの大声で泣き出しそうなミナリ 
トバ「あ、あーよしよしミナリくん泣かないでーちょっと驚いちゃったねぇ」 
カツイ「くっ……」 
ゲッカ「あの……やっぱり僕お邪魔ですか?」 
カツイ「あ、いや。もう決まっちまった事はしょうがねえけどよ」 
   どさっとリビングの床に座る 
トバ「カツイくんなんか飲む?」 
カツイ「おー頼むわ」 
トバ「じゃあミナリくん寝かせたらね」 
カツイ「んー。で、ゲッカ」 
ゲッカ「はい」 
カツイ「お前が『家出人』に入りたい理由って?」 
ゲッカ「あ……」 
カツイ「なに、言えねえの?」 
ゲッカ「いえ、あの……実は……」 
トバ「はいジュース」 
カツイ「サンキュ」 
トバ「はいゲッカくんにも」 
ゲッカ「ありがとうございます」 
SE(ジュースを飲む音) 
SE(とんっとグラスをテーブルに置く) 
ゲッカ「ある女の子を家出させて欲しいんです」 
カツイ「は?」 
トバ「誘拐はまずいでしょ」 
ゲッカ「違いますよっ!」 
カツイ「おいゲッカ……」 
ゲッカ「は、はいっ!」 
カツイ「その女の子って……」 
SE(ゴクッ) 
カツイ「もしかしてお前のかの」 
ゲッカ「(遮って)彼女じゃありませんよ」 
ゲッカ「ところで先輩」 
カツイ「あ?」 
ゲッカ「さっきから気になってたんですけど、あの赤ちゃん」 
トバ「!」 
ゲッカ「もしかして……」 
SE(ゴクッ) 
ゲッカ「先輩のこど」 
カツイ「(遮って)俺の子供じゃねーからな」 
トバ「そ、それでゲッカくん。家出させたい女の子って?」 
ゲッカ「はい」 
   机の上にポケットから出した写真を置く 
カツイ「ん? 写真?」 
トバ「可愛い女の子だね」 
ゲッカ「この写真の子は呉林花乃。僕の大切な人です」
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