2 / 6
第一章 SSS級スキル爆誕
第二話「『収納』スキルの真の力」
しおりを挟むあれからコメット村へ無事手紙を送り届け、家に戻った僕は、『収納』スキルの実験を始めた。
その結果、分かったことがいくつかある。
まず、バッグの大きさに関係せず、どんな大きな物でも収納することができた。
今まで手紙やパンなど小さな物しか入れたことが無かったから分からなかったけど、どんな大きさの物でも収納できるのは相当優れた能力だ。
「バッグの大きさに関係しないなら、これからは『布袋』を持ち歩こうかな。バッグ肩に掛けてると肩凝っちゃうし」
銅貨や銀貨、金貨を入れるような『布袋』を持ち歩くことに決めた。
手軽だし、布袋を持った腕を突き出して攻撃を収納する、なんて格好いいしね。
次に、『収納』スキルを発した布袋に剣を振ってみた。剣といっても木剣だけど。
結果はなんと、剣がそのまま収納されてしまった。いつの間にかスッポリと、手から木剣が無くなっていたのだ。
これは剣を扱う相手と戦う時に効果的かな。相手から剣を奪えるわけだし。
次に、魔法対策として火や水なども収納できるのかと実験してみた。
その結果、予想通り全て収納できた。火や水を収納するなんて、何だか考えにくいことだけど、問題なく布袋に収納できた。
放出するときも問題は無かった。
ただ、火の玉や水の槍とかではないので、迫力はそれほど無かったけど。
最後に、生き物の収納。
流石に人間を収納するのは怖いし、収納されてくれそうな人は周りにいなかったので、近くにいた野良猫を収納してみた。
結果は勿論収納できた。
布袋から放出した時も野良猫に異常は見当たらなかったので、生き物も"中"で問題なく生存できるらしい。
「それじゃ、実践してみようか」
そう思った僕は、冒険者がよくモンスターを狩りに行く山へ向かった。
幸い周りに冒険者はいなかった。
人目を気にせず思う存分スキルの実践を行えるので、ちょっと安心。
「さて、どこかに手頃な敵は……あ」
いた、と僕は視線をそちらに移す。
視線の先には、前にも遭遇したゴブリンの群れ。ただ前とは違って、今回は数が少し多い。
「まあでも、これぐらいの相手に勝てないならどの道冒険者はやっていけないよね」
そうやって自分を鼓舞する。
今まで郵便屋をやってきた僕からすれば、この数のゴブリンは絶対に勝てないと確信できる。それほどまでに脅威だ。
——でも、今は違う。
「じゃあ早速実践しようか……『収納』スキル!」
僕はそう叫び、布袋をゴブリン達に向けた。
一体何をしているのかと、目の前のモンスター達は困惑していることだろう。
そんなゴブリン達の反応に構うことなく、僕は布袋から奴らへ矢を放出した。
「——ギャ!?」
まさか布袋から矢が飛んでくるなんて思いもしないだろう。
完全に虚をつかれたゴブリンは動きが固まったまま、矢に頭を貫かれた。
「よし! まず一匹!」
嬉々としてガッツポーズをとる。
今の矢は、僕が予め布袋に収納したおいた物だ。山に向かう前に、戦いに使うための"攻撃手段"をいくつか布袋に『ストック』しておいた。
─────────────────
【アイテムボックス】
・攻撃(矢)×25 水筒×1
─────────────────
剣や魔法は使えないけど、こうやって攻撃することはできるのさ。
「よっ、と」
「——グ、ギャッ」
「アギャッ!?」
「ガッ、ギャ……!」
布袋から素早く矢を連続放出し、ゴブリン達を次々と討伐していく。
まだ20本ぐらい矢のストックがあるので、余裕を持って矢を放出できる。
「ギャギャギャ!」
「……っ!」
群れの中の一匹のゴブリンが、剣を持って僕に襲いかかってきた。
一瞬その殺気に怯んでしまったが、覚悟を決め、剣筋に布袋を合わせてガードした。
——勿論その剣は収納される。
手から突然剣が無くなったため、何も持っていない手で空振りをするゴブリン。
その隙を見逃さず、『収納』スキルで奪った剣を取り出し、ゴブリンの体を斬った。
「グギャアッ」
「残りは……っと」
剣を地面に投げ捨て、残るゴブリン達に布袋を向けて矢を放出する。
避けることすらできず、そのままゴブリン達は成す術無く倒れていった。
その場には全滅したゴブリンと、一人立っている僕だけ。
周りに誰もいないことを改めて確認し、僕は震える拳を握りしめ、小さくガッツポーズをした
「戦える……僕も、戦えるんだ……!」
冒険者としての夢を打ち砕かれ、泣く泣く郵便屋の仕事を選んだ。
けど、今こうして自分のスキルを使い、自分の手によって、モンスターを討伐することができた。
——戦力外なんかじゃない。
僕はこのスキルを駆使して、最強の冒険者になってやる!
——すると、木々の向こうから人間の集団が走ってくるのに気がついた。
「ん……? 何だ……?」
よく見てみると、走ってくるのは冒険者ばかり。その表情は恐怖で青ざめており、何か脅威的なモンスターから逃走しているのが窺える。
その冒険者の内の一人が、僕に気づいた。
「何やってんだお前! 何でこんなところに!」
「えっ……?」
「大規模な討伐クエストが行われるから、冒険者以外はしばらく街の外に出るなってギルドの通告を聞かなかったのか!?」
「通告……!?」
何だそれは、聞いてないぞ。
もしかして、スキルの実験に夢中になりすぎて、ギルドからの通告を聞き逃してしまったか……!?
「何くっちゃべってんだ! 早く撤退するぞ!」
「おい早く街へ行け! A級冒険者のレオンさんを呼んでこい!」
「お、おい! 奴がすぐ後ろまで来てるぞ!」
次々と冒険者達が走り抜けていく。
奴、とは何なのか。これほどの数の冒険者が逃げるようなモンスターとは一体——。
そして、ズシンと地面が揺れた。
「……まさか」
その図体は見上げるほど大きい。
目視で言うと、体長が25メートル、高さが3メートルくらいの大型の【ドラゴン】が、ゆっくりとこちらに向かって来ている。
「ドラゴン……この山の主か……!?」
ブルリと背筋が震える。
その威圧感はゴブリンの群れとは比べ物にならず、冷や汗が滲み出てきた。
「————!」
待てよ——と、僕は思考する。
よく考えて、よく吟味して、よく推測してから、ゆっくりとドラゴンのを方を見やる。
「僕の『収納』スキルなら……」
——何とか、できるんじゃないか?
144
あなたにおすすめの小説
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる