外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦

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第一章 SSS級スキル爆誕

第五話「A級冒険者と傲慢魔法使い」

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「ドラゴンが消えた? どういうことだ?」
「はい……冒険者の方々が『ドラゴンの魔力が急に消えた』とおっしゃっていまして……」

 受付嬢の説明に怪訝な表情を浮かべるレオンさん。「ふむ……」と顎に手を当て、思考を張り巡らせている様子。

「(何か大事になってきてないか……? これ普通に『僕が倒しました』って白状した方がいいんじゃ……)」

 腰に垂らしている布袋を見ながら、僕はそう考える。レイラさんに止められているとは言え、いずれはバレることなのだ。

 すると、レイラさんに肩を掴まれた。

「カイルよ、今貴殿が何を考えているか分かるぞ。だがそれは止めておけ。大事が更に大事になるからな」
「す、すいません……」

 冷静なレイラさんに対して僕は随分とビビってしまっていたようだった。

 ……まあ、黙っていればバレる事はない、と思うし……別にいいかな?

「申し訳ありませんレオン様。折角こちらに来て頂いたのに……」
「いや、気にしないでくれ。何故突然消えたのかは謎だが、何も無いならそれで一番だからな」

 受付嬢が頭を下げ、それに対してレオンさんが爽やかな笑みを浮かべて言う。
 それに加えてギルド内の冒険者が彼に頭を下げて謝り、また彼が「気にしないで」と頭を上げさせる。

 何だろう、A級冒険者なのに礼儀正しいし、優しいし、レオンさんは相当な人格者らしい。
 そりゃあ粗暴な冒険者達からも慕われるわけだ。

「レオンはあれでいて相当な実力を持っているからな。特にあの両手剣だ」

 レイラさんの言葉を聞き、僕はレオンさんの腰に携えられてある両手剣を見やる。

 刀身は眩しい程に輝いている銀色で、その分厚さはレイラさんの大剣にも匹敵する。

「このルルクス王国の中でもトップクラスの切れ味を誇る武器だ。もしレオンがドラゴンと相対していれば、恐らく討伐されていただろう」
「へえ……」

 あのドラゴンを一人で倒せる程の実力を持ってるって、レオンさんメチャクチャ強いじゃないですか。

「——お、レイラじゃないか! 久し振りだな!」
「ああ、久し振りだな」

 すると、レイラさんに気づいたレオンさんが、彼女の元へ近づいて来た。
 
「その隣の少年は? まさか遂に息子を——」
「何故そうなる」
「いだっ!?」

 言いかけたレオンさんの頭を叩くレイラさん。仮にもA級冒険者の頭を叩くって、二人はよっぽど仲が良いのかな?

「彼は今日から冒険者の道を選んだ新人冒険者だ」
「よ、よろしくお願いします!」
「いてて……成る程、レイラが面倒を見てやってるのか。うん、元気が良いのはよろしいことだ」

 頭を抑えながら僕を見やるレオンさん。
 A級冒険者と話す緊張でカチコチになっている僕に、レオンさんは手を差し出してきた。

「まあ何だ、冒険者というのは過酷で辛い事だが、頑張れよ! いつかは俺を越えられるようにな!」
「そ、それは随分と先の長い話ですね……」
「ハハハ、否定しないとは中々面白いやつだな」

 言いながら大きな声で笑うレオンさん。
 こういったやり取りをギルド内の冒険者達にしていると考えたら、この人相当な人たらしだ。今のところ好印象しか無いぞ。


 すると、レオンの目元がピクリと動く。
 それと同時にレオンさんは急に真顔になり、僕の目から視線を外した。

「……………………」
「(? どこを見て——っ!?)」

 そして僕は気づいた。
 レオンさんの視線が、僕の腰にある"布袋"に向かっていることに。

「(気づかれた、のか……? この中にドラゴンが居ることに……! まさか、そんなことが……!?)」
「……………………んん?」

 すると、レイラさんが僕とレオンさんの間に割り込んで入ってきた。

「さ、新人との挨拶はもういいだろう。これから彼のパートナー候補を探しに行くのでな」
「…………わかった。じゃあなレイラ、また会おう」

 レイラさんにそう言われても疑問の表情を浮かべていたレオンさんだったが、やがて表情を戻し、そう言ってギルドから去った。

 一気に緊張から解かれた僕だった。
 そんな中、レイラさんが僕の背中にポンと手を当て、口を開く。

「レオンをA級冒険者たらしめているのは、その人間離れした第六感にある。今は何とか誤魔化せたが、これからはあまり関わらないでおけ」
「わ、わかりました」

 A級冒険者は色々と規格外なようだった。
 まさか、布袋から発せられるドラゴンの魔力を察知したとか……?

 あり得ない話ではないし、レオンさんなら可能だろうとも思えてしまう。

「よし、それじゃあ早速行こうか、パートナー候補の所へ」
「はい、行きましょう」

 そうして僕らはギルドを出て、レイラさんの言う魔法使いの住む家へ向かった。


* * *


「着いたぞ、ここだ」

 冒険者ギルドから少し離れた所にある、人気の無い大きな屋敷。どうやらこの屋敷にお目当ての魔法使いが住んでいるようだ。

「大きな屋敷ですね……お金持ちなんですか? その人は」
「そうだろうな。奴もA級冒険者という階級を持っているだけあって、国から多額の報酬金が出るクエストを受け持っているからな」

 A級冒険者だと、冒険者ギルドを介さず直接国からクエストを依頼されるらしい。
 そりゃあもうガッポガッポと儲けているんだろう。ちょっと羨ましいな。

 僕の『収納』スキルなら稼ぐことも可能では……? っと、いけないいけない。つい野心が出てしまった。

「それじゃあ、呼び鈴を鳴らすぞ」

 そう言ってレイラさんは屋敷の入り口の側にある呼び鈴を鳴らす。
 しばらくして、屋敷の扉が開かれた。

「はーい——あれ、レイラ?」

 出てきたのは、艶やかな銀髪を肩まで伸ばしており、真っ黒な魔法使いらしいローブを着こんでいる、普通の美少女だった。

 出てきた彼女は、僕の隣に立っているレイラさんを見て目を丸くする。

「どうしたの、珍しいじゃん」
「ああ、今日は用があってな」
「用って——そこの、隣の奴?」

 首をクイッと動かし、隣の奴こと僕を見やる。
 
「そうだ。彼はカイル・ファルグレッド、新人冒険者だ。是非彼とパーティーを組んで、冒険者のいろはを教えてやって欲しいんだ」
「……はああああ?」

 レイラさんの言葉に、魔法使いさんは眉をひそめて表情を歪めた。

「何で私が素人の面倒見なきゃいけないわけ? そもそもそんな事をわざわざ頼みに来たレイラに驚きなんだけど」
「心配するな。彼は確かに新人冒険者だが、その実力は私を凌駕しているぞ」

 り、凌駕って。流石にそれは言い過ぎじゃないか? 僕は強いスキルを持ってるだけで、それを除けば弱っちい奴ですよ?

 そんな感情を魔法使いさんも抱いたのか、鋭く威圧感のある視線を僕に向けてくる。

「ふーん……レイラより強い、ねぇ……」

 すると、唐突に魔法使いさんは魔方陣を展開し、僕に向かって魔法を放ってくる。

「火魔法『火焔流星群メテオフレイム』」
「——えっ!? ちょっ!?」

 魔法使いさんの頭上からいくつもの大きな火の玉が、僕に向かって降り注いで来た。
 その迫力は凄まじく、恐らく威力の方も絶大。食らえばひとたまりもないだろう。

 僕は慌てて腰に垂らしている布袋を手に取り、飛んでくる火の玉に向かって腕を伸ばした。

「——『収納』スキルっ!!」

 僕はそう叫んでスキルを発動する。

 『収納』スキル——魔法でもモンスターでも関係なく、一つの【アイテム】として見なし、【アイテムボックス】へ『収納』するスキル。

 僕に直撃する筈だった火の玉の数々は、布袋の手前でパッと消え失せる。

───────────────────
【アイテムボックス】
・攻撃(矢)×13 ・水筒×1
・ドラゴン×1 ・攻撃(火焔弾)×8
───────────────────

 代わりに【アイテムボックス】へ火の玉全弾が『収納』された。

「!? 消えた……!?」

 自分の魔法が僕の手前で突然消えてしまい、驚きの表情を浮かべる魔法使いさん。

「(——仕返しだっ)」

 聞くところによると、冒険者の間で「やられたらやり返せ」というモットーがあるらしい。
 成り立ての新人冒険者ではあるけれど、僕もそれに則って、布袋から火魔法を全弾放出した。

「っ! 氷魔法『氷河凍結アイスフリーズ』!!」

 魔法使いさんがそう叫ぶと、彼女の手前の地面から分厚く頑強そうな、大きな氷塊が生まれた。
 
 火の玉は全てその氷塊によって打ち消され、またその氷塊も火の玉によって打ち消される。

「(レイラより強いのなら受けてみろ、って感じで撃っただけなのに……まさか反撃してくるとはね)」

 そう思って彼女が口角を少し上げたのを、魔法同士のぶつかり合いによる砂塵のせいで僕は見ることができなかった。
 
 お互いの攻撃が相殺し、しばらくの間睨み合いをする僕と魔法使いさん。
 その沈黙を破ったのは、僕らの攻防を見ていたレイラさんだった。

「フッ……言っただろうミーナ。彼は私の実力を凌駕している、とな」

 ニヤリと笑いながら言うレイラさん。
 ミーナと呼ばれた魔法使いさんは、僕を睨むのを止めて、大きくため息を吐いた。

「はあ…………まあ、少なくともレイラより強いってのは分かった。どうやって私の魔法を返したのかは分かんないけど」

 言いながら展開していた魔方陣を解除し、僕へ向けられていた敵意を引っ込めるミーナさん。

 耳元の銀髪を手の甲で払い、口を開いた。

「まあいいわ。屋敷に入りなさい、二人とも。話を聞いてあげるわ」

 どうやら僕は、話を聞いてくれるくらいには認められたらしい。
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