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3 天からの贈り物
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食堂は昨日話していた応接間を抜けて、一階の真ん中に位置している。広さは長机を片付ければそこでパーティでも開けるんじゃないかと言った広さだ。
しかし、ジェスが案内したのは、長机の先に用意されたこじんまりとしたテーブルとイスだった。こじんまりとしているが、テーブルと椅子には優美な彫り物が施されていて、見ていてあきない。
「勝手な推測ですが、お二人はこういった長机は嫌いかと存じまして」
そう言われたらその通りの二人は、その気遣いに戸惑いながらも、ジェスにお礼を述べた。ジェスはまた、穏やかにほほ笑み、料理を取ってくるために踵を返した。
「ジェスってなんでも気が付くのね。なんか、ちょっと怖いわ」
「ジェスは心読みの魔法使いみたいだね。ほら、ぼろぼろの本にあったあの……」
「ああ、あの……似てるわね」
「よお、レリア様コリア様、おはよう!!」
「「!!」」
びっくりして後ずさった二人を見て、ロナルドは快活に笑った。
「そんなに驚かれるとは思わなかったなぁ、わるいなぁ」
ひょうひょうと面白そうに笑うロナルドを見て、レリアの顔が段々、怒りで真っ赤に染まっていった。
「っ、ロナルドの足音がしないのが悪いんでしょ!! ロナルドは隠密か何かな訳?」
ロナルドはその言葉にほんの少し目を細めた気がしたが、一瞬の後、元の人を小馬鹿にした飄々とした顔に戻っていた。
「はは、こんな惚けた隠密がいたら、世も末だと思いませんか?レリア様、コリア様」
いつの間にかワゴンを運んできていたジェスがロナルドの背後から声をかけた。
「「確かに」」
レリアとコリアの声が揃ったのを聞いて、ロナルドは眉をへの字にして情けない顔になった。
「そりゃないぜ、ジェスさん」
お調子者のロナルドをネタにして、食堂が笑いに満ちたのを確認して、ジェスが「食事にいたしましょう」と声をかける。
それぞれが食卓の席に座ったのを確認してジェスが食事をサーブしていると、コリアから鋭い視線がジェスに飛んでいた。
ジェスはその視線にこちらもチラリと視線をやると、意味ありげに笑い軽くウインクした。
コリアがげんなりした様子でジェスから視線を外すと、ジェスは何食わぬ顔でサーブを続けていた。
「たぬきめ……」
コリアのため息ともとれる呟きは誰にも聞かれずに消えて行った。
食後のお茶を入れてもらい、二人で一息ついていると、ジェスが話しかけてきた。
「お二人とも、本日のご予定はいかがなされますか?」
ここまで成り行き任せ、しかも自分たちを嫌う人たちの中でしか暮らしたことがなく、こんなに穏やかな一日が始まるのは初めてだったので、二人は何をしたらいいのか?と途方に暮れた。
その時、レリアの頭の隅の方で、何かがささやくような声がした。
「ねえ、早く会いに来てよ……」
それは歌のようで、また、風のささやきのようでもあった。
ばっとコリアの方を見つめるが、まだ考え事をしているコリアの様子を見ると、コリアには聞こえている様子がない。
ジェスとロナルドの方を見ても、特に変わった様子はない。
「空耳かしらね……」
「どうしたの?レリア」
「なんでもないわ」
とりあえず、自室に戻って今後のことを話し合おうと、自室に戻った後も、レリアの耳鳴りはひどくなる一方だった。
風のささやきだったのが、今は洞窟に響く大音量なみにぐわんぐわんと頭の中で声が反響している。
「ああーー、もう!!」
「ど、どうしたの、レリア、レリア!?どこに行くの?」
ついに耐えきれなくなったレリアは昨日と同じくバルコニーに飛び出し、蔦を伝って地上へと駆け出した。その後ろをコリアが追いかけていく。
「レリア様?コリア様?」
ちょうど部屋にやってきたジェスとロナルドもレリアの尋常じゃない様子に目を見開いていた。
「ロナルド、僕を抱えて、レリアを追って、僕の足じゃ今のレリアに追い付けない!!」
コリアが焦った様子でロナルドに声をかける。一瞬の逡巡もなく、ロナルドはコリアを抱えて軽々とバルコニーから外に飛び出した。
やれやれといった様子でジェスもそのあとを追った。
しかし、ジェスが案内したのは、長机の先に用意されたこじんまりとしたテーブルとイスだった。こじんまりとしているが、テーブルと椅子には優美な彫り物が施されていて、見ていてあきない。
「勝手な推測ですが、お二人はこういった長机は嫌いかと存じまして」
そう言われたらその通りの二人は、その気遣いに戸惑いながらも、ジェスにお礼を述べた。ジェスはまた、穏やかにほほ笑み、料理を取ってくるために踵を返した。
「ジェスってなんでも気が付くのね。なんか、ちょっと怖いわ」
「ジェスは心読みの魔法使いみたいだね。ほら、ぼろぼろの本にあったあの……」
「ああ、あの……似てるわね」
「よお、レリア様コリア様、おはよう!!」
「「!!」」
びっくりして後ずさった二人を見て、ロナルドは快活に笑った。
「そんなに驚かれるとは思わなかったなぁ、わるいなぁ」
ひょうひょうと面白そうに笑うロナルドを見て、レリアの顔が段々、怒りで真っ赤に染まっていった。
「っ、ロナルドの足音がしないのが悪いんでしょ!! ロナルドは隠密か何かな訳?」
ロナルドはその言葉にほんの少し目を細めた気がしたが、一瞬の後、元の人を小馬鹿にした飄々とした顔に戻っていた。
「はは、こんな惚けた隠密がいたら、世も末だと思いませんか?レリア様、コリア様」
いつの間にかワゴンを運んできていたジェスがロナルドの背後から声をかけた。
「「確かに」」
レリアとコリアの声が揃ったのを聞いて、ロナルドは眉をへの字にして情けない顔になった。
「そりゃないぜ、ジェスさん」
お調子者のロナルドをネタにして、食堂が笑いに満ちたのを確認して、ジェスが「食事にいたしましょう」と声をかける。
それぞれが食卓の席に座ったのを確認してジェスが食事をサーブしていると、コリアから鋭い視線がジェスに飛んでいた。
ジェスはその視線にこちらもチラリと視線をやると、意味ありげに笑い軽くウインクした。
コリアがげんなりした様子でジェスから視線を外すと、ジェスは何食わぬ顔でサーブを続けていた。
「たぬきめ……」
コリアのため息ともとれる呟きは誰にも聞かれずに消えて行った。
食後のお茶を入れてもらい、二人で一息ついていると、ジェスが話しかけてきた。
「お二人とも、本日のご予定はいかがなされますか?」
ここまで成り行き任せ、しかも自分たちを嫌う人たちの中でしか暮らしたことがなく、こんなに穏やかな一日が始まるのは初めてだったので、二人は何をしたらいいのか?と途方に暮れた。
その時、レリアの頭の隅の方で、何かがささやくような声がした。
「ねえ、早く会いに来てよ……」
それは歌のようで、また、風のささやきのようでもあった。
ばっとコリアの方を見つめるが、まだ考え事をしているコリアの様子を見ると、コリアには聞こえている様子がない。
ジェスとロナルドの方を見ても、特に変わった様子はない。
「空耳かしらね……」
「どうしたの?レリア」
「なんでもないわ」
とりあえず、自室に戻って今後のことを話し合おうと、自室に戻った後も、レリアの耳鳴りはひどくなる一方だった。
風のささやきだったのが、今は洞窟に響く大音量なみにぐわんぐわんと頭の中で声が反響している。
「ああーー、もう!!」
「ど、どうしたの、レリア、レリア!?どこに行くの?」
ついに耐えきれなくなったレリアは昨日と同じくバルコニーに飛び出し、蔦を伝って地上へと駆け出した。その後ろをコリアが追いかけていく。
「レリア様?コリア様?」
ちょうど部屋にやってきたジェスとロナルドもレリアの尋常じゃない様子に目を見開いていた。
「ロナルド、僕を抱えて、レリアを追って、僕の足じゃ今のレリアに追い付けない!!」
コリアが焦った様子でロナルドに声をかける。一瞬の逡巡もなく、ロナルドはコリアを抱えて軽々とバルコニーから外に飛び出した。
やれやれといった様子でジェスもそのあとを追った。
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