婚約破棄された悪役令嬢は、辺境でスイーツカフェをオープンしたらイケメンたちに溺愛されました

霧島

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第28話 ヒロイン(聖女)の訪問

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第28話 ヒロイン(聖女)の訪問

カフェの営業中、いつものように穏やかな午後。

チョコレートパフェが大人気で、ショーケースがどんどん空になっていく。

村人たちや冒険者たちが笑顔で席を埋め、レオン様は朝のモンブランを食べて満足げに屋敷へ戻り、カイル様は護衛の合間にチーズケーキを注文、リオは仕入れの荷物を下ろしながらクッキーをかじり、シルヴィオは森からこっそりプリンをテイクアウトしていった。

そんな平和な時間に、突然――

店の扉が静かに開き、清楚な黒髪の女性が入ってきた。

純白のドレスに、優しげな微笑み。

聖女の証である淡い光のオーラが、ほのかに体を包んでいる。

――マリア・ルミエール。

ゲームのヒロイン、王太子セシルの現在の婚約者。

店内が一瞬、静まり返った。

村人たちがざわつき、冒険者たちが興味深そうに見つめる。

マリアは少し緊張した様子で、私の前に立った。

「……エレナさん、ですよね? 突然すみません」

私はエプロンを拭きながら、笑顔で迎えた。

「マリアさん、いらっしゃいませ。遠くからお疲れ様です。どうぞお掛けください」

マリアは窓際の空いた席に座り、周囲を気にしながら小声で。

「実は……王太子殿下に頼まれて、直接お話しに来ました」

(やっぱり、そう来たか)

先日の使者の手紙を断った後、ついに本人が。

マリアは少し俯き、指を絡ませた。

「……エレナさんのスイーツが、王国中で話題になってるんです。  
宮廷でも、冒険者ギルドでも、みんな『魔力回復の奇跡の菓子』って言ってて……」

私は紅茶と、今日の新作ショートケーキを運んだ。

「まずは、これを食べてください。話はそれから」

マリアが少し驚いた顔でケーキを見つめる。

「でも、私は……エレナさんに、昔ひどいことを――」

婚約破棄の時、マリアは私に何もしていない。

むしろ、ゲームではエレナがマリアをいじめていた設定。

でも今は、逆。

マリアは私を、婚約を奪った「悪役令嬢」だと思っているらしい。

少しの逆恨みと、罪悪感が混じった表情。

私は微笑んで。

「昔のことは、もう忘れました。  
今はただ、お客様として来てくれたんでしょ? ゆっくり食べてください」

マリアはためらいながら、スプーンを入れた。

一口目。

「……!!」

瞳が大きく見開かれ、体を包む聖女の光が少し強くなった。

二口目、三口目。

「……こんなに、美味しい……」

頰が緩み、目が潤む。

あっという間に完食。

マリアが、ぽつりと呟いた。

「……魔力が、満ちてくる……。こんなに優しい甘さで……」

聖女の魔力は元々不安定らしい。

最近、王国で魔物の活動が活発で、マリアの負担が増えているとか。

マリアは空の皿を見て、涙目になった。

「……エレナさん、ごめんなさい。  
私、殿下の婚約を奪ったみたいに思って、ずっとあなたを恨んでた部分があって……  
でも、こんなに優しくて、こんな美味しいものを作れる人が、どうして王都を離れたんだろうって……」

私はそっとマリアの手を握った。

「恨む必要なんてないよ。  
私は殿下と別れて、正解だった。  
ここでみんなと幸せに暮らしてる」

マリアが、私の手を握り返した。

「……本当に、羨ましい。  
私、王都では毎日義務ばっかりで……こんな自由で、温かい場所、初めて」

微ざまぁ展開。

マリアは素直に謝罪し、私の優しさに触れて心が浄化された感じ。

「エレナさん……レシピ、教えてくれませんか?  
王国のみんなを、救いたいんです」

私は笑った。

「レシピはあげる。でも、私自身はここにいるよ。  
時々、王都に卸すのは考えてもいいけど」

マリアは少し寂しそうに、でも納得して頷いた。

「わかりました……。ありがとう、エレナさん」

マリアは追加でパフェを注文し、ゆっくり味わってから帰っていった。

送り出す時、マリアが小声で。

「……また、個人的に来てもいいですか?」

「もちろん。いつでもいらっしゃい」

マリアの馬車が去った後、店内が大盛り上がり。

「お嬢様、聖女様を泣かせちゃった!」

「いや、いい意味でだろ!」

四人の常連も、それぞれ反応。

レオンは無言で満足げ。

カイルは「王国の問題は解決したようだ」とクールに。

シルヴィオは「人間の聖女なんて興味ないが……プリンが増えるならいい」とツン。

リオは「エレナの優しさに落ちない奴なんていないぜ!」と陽気。

聖女の訪問は、穏やかに終わり、私の勝ちで終わった。

王国はますます後悔するだろうけど、私はここでいい。

みんなの笑顔が、私の幸せ。

そう思った、聖女が来た日だった。

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