制御不能なS級魔法使いは、パーティーのお荷物 ― ストレス解消に神々の領域で無双してきます ―

霧島

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3-1 最弱のイグニスさん(笑)

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⚡第3章 魔神四天王との遭遇

3-1 最弱のイグニスさん(笑)

 光が消えた瞬間、ダイアの視界は真っ赤に染まった。
 周囲は燃えるような大地。
 空は炎のようにうねり、地平線の果てまでマグマが流れている。

「うわぁ……地面が全部、焼きたてパンみたいですね!」
「ここは“炎獄界”――我が支配する領域だ。」

 低く響く声が、背後から聞こえた。
 振り返ると、そこに立っていたのは紅蓮の鎧を纏った男――魔神四天王のひとり、イグニス。

 彼の背中からは炎の翼が広がり、地を踏みしめるたびに溶岩が爆ぜる。
 その姿だけで、普通の人間なら焼き尽くされる熱量。

 だが、ダイアは笑顔で手を振った。
「わぁぁ! 羽、光ってる! 綺麗ですね!」
「……貴様、人間のくせに平然としていられるとは……」
「ちょっと暑いですけど、サウナよりはマシです!」
「……やはり頭がどうかしているな」


---

「私は、魔神王アズモディアス様の命により、お前をこの地へ連れてきた。
 我が主が、お前を“直接謁見”なさる。」

「へぇー! 神様直々のご招待ですか! なんかVIP待遇ですね!」
「……勘違いするな。これは“召喚”だ。拒否権はない。」
「つまり、強制連行ですか?」
「そうだ!」
「わぁ、ストレートですね!」

 イグニスは眉をひそめた。
 この女、人間のくせにまるで恐怖を感じていない。
 むしろ、観光客のようにきょろきょろと周囲を見回している。

「この熱を前にして平気とは……どういう体質だ?」
「耐熱スキルはLv10ありますから!」
「……人間の限界を超えているだろ!」
「まぁ、感覚的には“常夏”って感じです!」
「貴様の基準はおかしい!!」


---

 イグニスはため息をつき、腕を組んだ。
「いいか。ここから我が主の居城まで案内する。勝手な行動はするな。」
「はーい! でも、ちょっと気になるんですけど……」
「なんだ?」
「“魔神四天王”って、四人いらっしゃるんですよね?」
「そうだ。我を含め、氷月のセレネ、歪律のオルド、深淵のノクト――」
「じゃあ、イグニスさんは“四天王の中で最初に来た人”ですね!」
「……そうだが、それがどうした?」
「つまり――最弱さんですね!」

「……」

 一瞬、空気が止まった。

「……貴様、今なんと?」
「えっ? だって、RPG的には最初に出るボスってだいたい最弱じゃないですか!」
「誰がボスだぁぁぁ!!!」

 イグニスの額に火花が散る。
 炎の翼が大きく広がり、マグマが爆ぜた。


---

「貴様、人間の分際で我を侮辱したな!!」
「え? あ、違うんです! ただ順番的に……!」
「順番的にじゃねぇぇぇ!!」

 イグニスの拳が燃え上がる。
「よかろう! 我が炎の恐怖、骨の髄まで焼き付けてやる!!」
「えっ、焼き付け……? 焼くなら、焼き加減は中火でお願いします!」
「誰が料理だぁぁぁ!!!」

 イグニスが両腕を広げ、紅蓮の魔法陣を展開した。
「――《ヘル・ブレイジング・テンペスト》!!」

 次の瞬間、世界が炎に包まれた。
 マグマが空へと噴き上がり、風すら燃え上がる。
 この炎は、神々ですら避ける“消滅の火”。

 だが、炎が収まったとき――そこに立っていたのは、無傷の少女だった。


---

「……あっつぅ~……服、少し焦げちゃいました!」
「なっ……ありえぬ……!」
「イグニスさんの炎、ちょっと乾燥気味ですね!」
「乾燥気味!?」
「もう少し湿度を上げたほうがいいかも!」
「貴様は炎を何だと思ってる!!」

 イグニスの瞳が怒りに燃える。
「よかろう! ならば、我が本気を見せてくれるわ!!」
「本気、ですか? いいですね!」
「黙れっ!!」

 地面が割れ、巨大な火柱が天に伸びる。
 イグニスが燃え盛る槍を握り、空を裂いた。
「燃え尽きろ、人間!!!」

 ダイアは、軽くため息をついた。

「……イグニスさん、火力はいいけど、バランスが悪いですね。
 だからこういうときは――」

 彼女は杖を構え、さらりと言った。

「Lv4ファイヤーストーム、行きますね」
「Lv4だと!? 貴様、まだ上が――」

 ――ドォォォォォォォォン!!!

 赤、橙、白、青。
 全ての火の色が混ざり合い、空そのものが燃えた。
 炎の嵐が竜巻のように渦巻き、周囲一帯が一瞬で真っ白に消える。


---

 しばらくして、煙が晴れた。
 そこには、黒焦げの岩と、地面に転がる焦げた鎧だけが残っていた。

「……えっと、イグニスさん?」
 しばらく待っても返事がない。

 鎧の隙間から、かすれた声がした。
「ま、待て……我は……まだ……」
「まだ焼き足りないですか? じゃあ――」
「やめろぉぉぉぉ!!!」

 イグニスは悲鳴を上げて転がった。
 その姿にダイアは頬をぽりぽりかきながら、
 申し訳なさそうに微笑んだ。

「ごめんなさい……四天王だから、ちょっと強火で焼いてみました!」

 ――その瞬間、炎獄界の温度がさらに上がったという。


---

 遠く、魔神王アズモディアスの居城。
 王座で笑う魔神王が呟いた。

「……ほう。もう一人、消えたか。」
 背後で他の三天王が顔を見合わせる。

 氷月のセレネが青ざめて言った。
「……“四天王最弱”という言葉、案外間違ってなかったようですね」
「次は……誰が行く?」とオルドがつぶやく。

 その沈黙の中で、王の口角がゆっくりと吊り上がる。

「いいぞ。まだ三人いる。」


---
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