制御不能なS級魔法使いは、パーティーのお荷物 ― ストレス解消に神々の領域で無双してきます ―

霧島

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4-4 帰還 ― ストレス解消、完了です!

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第4章 神々の領域へ(神界決戦)

4-4 帰還 ― ストレス解消、完了です!

 王都ギルド本部――午前十時。
 非常警報がようやく解除され、観測室の水晶は安定した青色を保っていた。
 魔力反応値はゼロ。
 世界の魔力分布も平常。
 全ての数字が「平和」を示している。

 だが、室内の空気だけは落ち着かなかった。

「……つまり、神界は一度“消滅”し、
 再構築された後、名前を“新生神界(ダイア版)”に変更されたと?」
「はい。現時点では正式承認前の仮ラベルです」
「仮でも付けるなぁぁぁ!!」

 ギルマスの怒声が、観測室の天井を震わせた。
 誰も突っ込めなかったが、書類上でも“ダイア版”と記録されている。
 もはや訂正する勇気のある者はいない。

 そこへ、軽いノック音。

「こんにちは~」

 その声を聞いた瞬間、全員の時が止まった。
 振り向けば、銀髪の少女――ダイア・ミレニアが笑顔で立っていた。
 どこにも傷ひとつない。
 髪には海風のような香りが混じっている。

「ただいま戻りました~。あ、これ、お土産です」

 机の上に置かれたのは、見たことのない透明な貝殻。
 微かに青い光を放っている。

「……まさか、それ、神界の素材じゃないよな?」
「はいっ! 新しい神界の海岸で拾ったやつです!」
「拾うなああああ!!!」

 ギルマスの絶叫が響き、リナが慌てて水晶の防護結界を張る。

「やっぱり戻ってきたぁぁぁぁ!!」
「よかった……でも、心臓に悪いです……」

 ダイアは首を傾げてにっこり。
「え? 私、そんなに心配かけました?」
「“心配”ってレベルじゃねぇ! 国単位で祈祷会開かれてたわ!!」
「えぇっ!? そんな大げさな……」


---

 ギルマスは頭を抱え、深呼吸をした。
 怒りたい気持ちと、安堵の涙が混ざってうまく言葉にならない。

「……とりあえず、生きててよかった。だがな」
「はいっ」
「お前、何やらかしたか、ちゃんと説明しろ」

「えっとですね……禁呪をいくつか試してたら、
 神界の構造がちょっとだけバグって、それで……再構築しちゃいました!」

「“ちょっとだけ”って言ったな今!? 神界を“再構築”した奴が軽く言うなぁぁ!!!」

 周囲の職員たちは書類を抱えて震えている。
 なかには“観測不能事案に関する報告書”の欄外に、
 「犯人:たぶんダイア」とすでに書き込んでいた者までいた。

「いや~、でもほんと気分スッキリしましたよ!」
「……スッキリ?」
「はい! 普段、地上じゃ危なくて撃てない魔法ばっかりですし。
 あんなに思い切り放てたの、久しぶりで~」

「お前の“スッキリ”で神々が消滅したんだぞ!!」
「大丈夫です! ちゃんと直しておきましたから!」
「直した!? 修復できる前提で壊すな!!!」


---

 リナが小さく手を上げる。
「えっと……ダイアさん、神界の方々とは……」
「いませんでした」
「いませんでした?」
「はい、火属性の段階で蒸発しました!」

 その一言で、ギルド全体が静まり返る。
 誰も笑わない。
 誰も言葉を失わない。
 ただ、風がカーテンを揺らした。

「……魔神王を“蒸発しました”で片づけるな……」
「でも、ちゃんと手を合わせましたよ?」
「礼儀の問題じゃねぇぇぇぇ!!!」


---

 それからしばらく、ギルドの食堂で緊急会議が開かれた。
 ダイア本人が“主犯”なのに、どこかピクニックの打ち上げのような空気だ。

「で、結論から言うと――」
 ギルマスが腕を組む。
「お前はしばらく、S級案件限定出動に制限する。
 低ランク任務には絶対に出るな」

「え~! でも素材採取とか好きなんですよ~」
「お前が“キノコ採取”で山一つ消しただろうが!」
「あれは小噴火ですっ!」
「小噴火で町一個消えたんだよ!!!」

 リナは苦笑しつつ、紅茶を差し出した。
「ダイアさん、とりあえずお疲れさまでした。
 ……でも、次からは“軽めの魔法”でお願いしますね?」

「わかりました! Lv0.5弱火で!」
「その“弱火”が誰より強いんだよぉぉぉ!!!」


---

 午後。
 ギルドホールの片隅で、ダイアはグラスを傾けていた。
 透明な貝殻の光が酒の中でゆらめく。
 天井から吊るされたランタンが、いつもより少しだけ柔らかく揺れている。

「……平和ですねぇ」
 ぽつりと呟く。
 今のところ、地上に魔物の反応はない。
 神界も安定。
 誰も泣かず、誰も戦っていない。

「……平和って、退屈ですね」

 彼女の言葉に、ギルマスが後ろから返す。
「退屈ぐらいがちょうどいいんだよ。
 お前が“楽しい”と思うと、世界が危ない」

「そんなことないですよ! 次はもっと控えめに――」
「控えめって言葉の意味を辞書で引いてこい!!」

 二人のやり取りに、リナが笑う。
「ほんとに……いつも通りですね」

 静かなギルドの午後。
 窓の外では、平和な陽射しが街を包んでいた。

 ダイアはグラスをもう一度揺らし、
 ふと、空を見上げて呟く。

「今度は、邪神さんでも攻めてこないかしら……」

「やめろぉぉぉぉ!!」
 即座にギルマスのツッコミが飛ぶ。
「物騒なこと言うんじゃない!」
「でも、もし本当に来たら?」
「どうなるんだ?」
「……私のストレスが解消されます!」

「だからそれが怖いんだよぉぉぉ!!!」


---

 ギルドの片隅で、そんなやり取りが笑いに包まれる。
 外では子どもたちの笑い声が響き、空はどこまでも青い。
 今日も世界は平和――つまり、ダイアが休暇中。

 受付嬢リナは小さく呟いた。
「この平和が、できるだけ長く続きますように……」

 すると、遠くの空で、どこかの雲が爆ぜたような音がした。
 ギルマスの顔が一瞬で青ざめる。

「ま、まさか……また何か……?」
「いえ、ただの雷ですよ♪」
「信用できるかぁぁぁぁ!!!」

 そんな騒がしい一日が、今日もギルドを包んでいた。

 ――世界最強にして、制御不能なS級魔法使い。
 彼女がいる限り、この世界はたぶん、今日も平和である。


---

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