『カード召喚学園 〜異能力の無駄遣いで美少女が実体化した件〜

霧島

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1−3 イケメンカード召喚、BL誤解勃発

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第1章
1-3 イケメンカード召喚、BL誤解勃発

 

「……これ、ほんとにやるのか?」

朝の光が差し込む部屋で、カイは呆然と立ち尽くしていた。
目の前のテーブルには、昨夜の惨状――小麦粉まみれの床と、焦げたパンの化石。
その中央に置かれているのは、イケメンキャラのカード《風の王子シリウス》。

「やるしかないでしょ?」
真白は腕を組み、冷静に言った。
「服を貸してあげたのは、約束を守る前提だから」

「いや、普通そういう約束って命に関わるときに使うもんだろ……?」
「女の服を男に貸すってのは、それくらい覚悟いるのよ」
「いや、あれは緊急避難で……!」

そんなカイの抗議を、真白は聞き流した。
「ほら早く。昨夜みたいに光らせるのよ。異能ってやつ、もう使えるんでしょ?」

「異能って……俺だってどうやって発動したのかわかんねぇんだよ!」
「じゃあ、推しへの愛で」
「……やめてくれ、そういう恥ずかしい単語を人前で言うの」

後ろで、ルナが神妙な顔で頷いていた。

> 「愛とは、主が最も強い力を発揮する概念。確かに理に適っています。」
「いや真面目に納得すんな!」



 

とはいえ、ここで逃げるわけにもいかない。
約束を破れば、真白に一生ネタにされる。
カイは深呼吸して、カードを両手で包み込む。

> 「……出でよ、シリウス……っ!」



光が弾けた。
まばゆい風が部屋を駆け抜け、紙類が舞い上がる。
そして――

そこに立っていたのは、一人の青年。

長身、金髪、蒼い瞳。
白のコートに風を思わせる緑の刺繍。
完璧な王子様そのものだった。

> 「召喚に応じ、風の王子シリウス、此処に降臨せり。」



声が低く、よく響く。
その場の空気が一瞬で“乙女ゲームのOPムービー”のようになる。

> 「おお……」



真白は思わず感嘆の声を上げた。
「すっご……。リアルすぎてヤバい。っていうか生きてるじゃん。」

カイは半歩後ずさる。
「ま、待て、まじで出た……!?」
「主。」

シリウスが一歩、彼に近づいた。
間近で見ると整いすぎた顔立ちに、思わず息を呑む。

> 「我が魂は、召喚者たるあなたに忠誠を誓います。」
「えっ? いや、ちが……俺じゃなくて……」



シリウスは跪き、右手を胸に当てた。

> 「あなたこそ我が主。主命、何なりと。」



「ちょ、待て! 違う! 召喚したのは俺だけど、カードの持ち主は真白だから!」

> 「主命は絶対です。主の言葉こそ風を導く羅針盤。」
「ちがーう!!!」



ルナが後ろからぼそっと言う。

> 「ふむ……王子殿、見どころがありますね。主に忠誠を誓うとは賢明です。」
「いや、そんな評価いらない!!!」



真白は腹を抱えて笑っていた。
「ぷっ……あははは! なにこれ、完全にBLの構図じゃん!」
「は!? 誰が誰と!?」
「王子が主に忠誠を誓う……完全にそういう展開!」
「やめろ! そういう趣味はない!!!」

 

だが当のシリウスは、冷静そのものだった。

> 「主、貴方が望むなら、我が命を賭してでもお守りいたします。」
「望まない! むしろ普通にしててくれ!!!」



ルナが真剣に言う。

> 「主、忠誠を誓う者が二人。これは戦力として有効です。
 魔王を討つには心強いかと。」
「だから討たねぇっての!!!」



そんな混沌の中、真白は腕を組み、ふっと笑う。

> 「じゃ、決まりね。」
「なにがだよ!」
「この子、今度デートさせてよ。」
「はぁぁぁ!?」
「だって、せっかく実体化したんだし。ちょっと興味あるじゃん、どんな性格か。」
「興味の方向おかしいだろ!」



しかしシリウスが口を挟んだ。

> 「主が命じるならば、異性との交流も任務のうち。」
「いや、今ので誤解が100倍になったから!!!」



ルナがまたも割り込む。

> 「主、彼を異性として扱うとは、まさか……!」
「違う! 誰もそんなこと言ってねぇ!!」



真白はわざとらしく頬に手を当てた。

> 「カイくんって……そういう趣味あったんだ?」
「ない! 一ミリもない!!!」



 

さらに厄介なのは、二人のカードキャラが本能的にライバル意識を持ち始めたことだ。

シリウスが静かにルナを見つめる。

> 「ふむ……貴女、聖騎士ルナ=ヴァルキリーか。」
「そうだ。貴公は“風の王子シリウス”であったな。」
「主への忠誠を競うことになるが、容赦はせぬ。」
「それは私の台詞だ。」



――剣を抜く音。

「やめろおおおおおお!!!」

カイが両手を広げて止めに入る。
床がギシギシと鳴る。
ルナは剣を構え、シリウスは風の魔力を纏う。

「お前らなぁ!! ここ、ワンルームだから!!!」
「……狭い戦場ですね。」
「そういう問題じゃねぇぇぇ!!!」

風が巻き起こり、カーテンが舞い上がる。
シリウスのコートが翻り、ルナの銀髪がなびく。
視界がまるで映画のワンシーンのようだ。
だが現実はただの住宅街の一室。

> 真白「うわ、エアコンの風量最大でもこんな演出できないよ……」
カイ「感心してる場合かぁぁぁ!!!」



なんとか二人をなだめ、剣を収めさせた頃には、
壁紙がはがれ、机が真っ二つになっていた。

> 「主、これくらいの犠牲は――」
「犠牲じゃねぇ! 敷金返ってこないんだよぉぉ!」



 

数分後。
ようやく静寂が戻った部屋。
真白が呆れ顔で言う。

> 「ねぇ、カイ。あんたこの力……まじで危険すぎるよ。」
「俺が一番そう思ってるよ……」
「でも、悪くないかもね。こんなに笑ったの久しぶりだし。」



真白が小さく笑った。
その笑顔を見て、カイは少しだけ救われた気がした。

だが安心するのは早かった。

シリウスが静かに膝をつき、カイを見上げて言った。

> 「主、先ほどの約束をお忘れなく。」
「は?」
「“次はデートだ”と。」



「……真白おおおおおおおお!!!」

その日、カイの平凡な青春は完全に崩壊した。
学園では早速噂が広がる。

――「藤堂、昨日はビキニアーマー、今日は金髪王子と一緒だったらしい」
――「もしかして、そういう趣味……?」

> 「ちがうぅぅぅぅぅぅぅ!!!」



 

その叫びが、校舎中に響き渡ったのだった。


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