白い結婚 ~その冷たい契約にざまぁを添えて~

霧島

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第3章 契約の祭壇と砕け散る幻想

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1.式の朝、薄紫の決意

 挙式当日の朝は、思いのほか静かだった。
 薄曇りの空からは、いつ雨が落ちてきてもおかしくない、どこか不安定な天気が広がっている。フィオレット伯爵家の館に差し込む光は弱々しく、その薄明かりが廊下の影を長く伸ばしていた。
 ルシアーナ・フィオレットは、寝室にある姿見の前で立ち尽くしている。今日、自分が着るウェディングドレスを改めてまじまじと見つめているのだ。白いサテンを基調としながらも、裾の部分にはフィオレット家を象徴する薄紫色の花のレースがさりげなくあしらわれている。これは彼女自身が、残されたレースやビーズを駆使して作り上げた“ささやかな抵抗”の証でもあった。

 (これでいい。わたしはクロウフォード侯爵家に嫁ぐからといって、自分のすべてを捨てるつもりはない。いずれどうなろうと……わたしはフィオレット家の長女であることを忘れない)

 サテン地の胸元に、そっと手を置く。そこには小さなブローチが留められていた。家を象徴する薄紫色の花びらが描かれた、伯爵家の紋章を模したものだ。貴族社会の華やかな婚礼であれば、本来こうした「別家のシンボル」は敬遠されるかもしれない。けれど、ルシアーナは気にしなかった。どうせ、この結婚式はほぼ形だけで、祝福の客も呼ばないのだから。彼女の“誇り”を見せるくらい、許されるはずだと信じたかった。

 戸をノックする音がして、聞き慣れた侍女頭リディアの声がかかる。

 「お嬢様、ご準備のほどはいかがでしょう? クロウフォード家からの車が、もうすぐ到着するそうです。奥方様とマリアナ様も、すでに迎えを待たれております」

 「分かったわ。いま行く」

 そう返事をしながら、ルシアーナは最後に深呼吸を一つ。目を瞑り、今日起きるであろう事柄を頭の中で反芻する。結婚式はごく短い儀式だと聞いている。来客はほとんどいない。祝福を受ける瞬間は、恐らく形式的な神父の言葉だけだろう。どんなに寂しくても、そこに立つしかないのだ。
 小さく唇を噛み、ドレスの裾を整える。そしてルシアーナは、決意を込めて部屋の扉を開けた。

2.薄闇の礼拝堂へ

 館の外に出ると、クロウフォード家から派遣された黒塗りの馬車が待っていた。御者台には見慣れない男が座り、その横にはクロウフォード家の紋章が刻まれた飾りが据えられている。フィオレット家の執事エヴァンとリディアが、馬車へ乗り込む手伝いをしながら、ルシアーナやフロランス伯爵夫人、妹のマリアナを見送ってくれる。
 ドレスの裾を引きずらないよう、ルシアーナは慎重に足を運んだ。母フロランスは、体調が万全とは言い難いものの、どうしても娘の婚礼を見届けたいと意を決して外出することにしたらしい。車椅子のような簡易椅子に体を預け、侍女に支えられながら、車へ乗り込む。その姿はやや痛ましかったが、その瞳は母としての誇りと哀しみに満ちていた。

 マリアナはまだ幼い雰囲気が残るが、姉のドレス姿を見ては、かすかに目を潤ませる。彼女もまた、この白い結婚を心から喜べているわけではない。それでも、姉の決断を尊重しようと懸命に努めているのだ。
 こうして家族を連れて馬車が出発する。曇天の下、車輪の音が石畳をゴトゴトと鳴らしながら走っていく。その道は決して長くはなく、都心から少し外れた郊外にある古い礼拝堂が目的地となる。

 礼拝堂へ向かう途中、窓の外に広がる風景を眺めても、ルシアーナの胸は重苦しさでいっぱいだった。黒雲が垂れ込み、やがてわずかな雨粒が車の窓を打ち始める。まるで、この白い結婚への前触れのような、暗い空。
 すぐに遠くの森が視界を覆い、深い緑の樹木が雨にしとどに濡れているのが見えた。礼拝堂はその森のほとりにあると聞く。古い石造りの建物で、クロウフォード家の遠い先祖が寄進したものだとか。結婚式を行うには充分な格を備えているが、わざわざこんな辺境で式を挙げることに、ルシアーナは疑問を拭えなかった。

 (どうせ目立たないようにしたいんでしょうけど……これじゃあ、お葬式みたい)

 そう自嘲気味に思いながらも、ルシアーナは母と妹の存在に助けられるように、かろうじて気持ちを保っている。もし一人きりでこの礼拝堂に向かうのなら、彼女はもっと寂寥感に押し潰されていただろう。

3.冷えた祝福と形式的な誓い

 やがて馬車が石畳の道を進み、薄曇りの空の下に古めかしい礼拝堂が姿を現す。外観は苔むした石壁と重厚な扉が特徴的で、周囲に広がる樹々のせいで日差しも差し込まず、どこか薄暗い雰囲気を漂わせていた。雨が一段と強くなり、パタパタという音が車体を叩く。

 礼拝堂の入口には、クロウフォード家の関係者らしき数名が集まっていた。神父らしき老人と、その助手と思しき若い男性、それにヴィクトルの秘書もいる。だが、そこには「派手な演出」や「華やかな飾り付け」は一切なく、静かにランタンの光が揺れるだけだ。
 馬車が止まると、ルシアーナたちは侍女に助けられながら下車する。ドレスの裾が泥や雨で汚れないよう、気をつけなければならない。母フロランスもまた車椅子に乗り換え、足元を濡らさぬように配慮している。

 雨音の中でささやかに挨拶を交わすと、神父が挙式の順番を簡潔に説明してくれた。「儀式は15分程度で終わります。古来より、クロウフォード家に伝わる簡素な式次第に則って執り行います」とのこと。ルシアーナはただ無言のまま、母と妹を見やり、それから礼拝堂の扉へと足を踏み入れる。

 荘厳なはずの内装も、今日ばかりは閑散として見えた。祭壇の奥には薄暗いステンドグラスがはめ込まれているが、外が曇天のせいで色彩を失っており、かすかな光しか差し込まない。まるで夜明け前のような、重たい空気が漂っている。
 その奥、説教台の近くに、ヴィクトル・クロウフォードの姿があった。彼はグレーのタキシードを身にまとい、背筋を伸ばして静かに待っている。いつものように冷ややかな瞳、端正な顔立ちにはまるで表情がない。ルシアーナと目が合ったが、彼は何の感情も示さず、すぐに視線を外す。

 (やっぱり……何も変わらない、冷たいまま)

 ルシアーナは胸の奥が少し痛んだ。この結婚に愛情を求めるつもりなどなかったはずだが、それでも“ゼロ以下”の冷たさを浴びせられるのは答えがたい。しかし、今さら逃げ出すことはできない。
 神父が儀式を始めると宣言し、誰もいない礼拝堂に小さな鐘の音が響く。参列者はほぼ皆無と言っていいほど少なく、フロランス夫人とマリアナ、それにヴィクトルの秘書と使用人らしき数名が控えるだけだ。これが大貴族同士の婚礼だというのだから、異様な光景である。

 乾いた声の神父が、聖書を朗読し、「新たな夫婦を祝福しよう」という形式的な言葉を述べ始める。それすらも、どこか無機質で、まるで“台本をなぞっているだけ”のようだった。
 やがて、指輪の交換を促される。ヴィクトルはクロウフォード家の紋章入りの箱から、シンプルな銀色の指輪を取り出し、ルシアーナの指にはめようとする。その瞬間、彼女はわずかに肩を震わせた。愛の証というにはあまりにも無機質な銀の輪。だが、彼女は耐え、そっと左手の薬指を差し出す。

 (……これが、“わたしの結婚”。白い契約結婚。偽りの愛。でも、ここで負けてなるものですか)

 ヴィクトルは指輪をはめ終えても、ルシアーナを見ようとしない。その掌からは冷たい感触が伝わる。ルシアーナが自分の指に視線を落とすと、何の飾りもない指輪だけが寂しげに光っていた。
 次はルシアーナの番だ。用意されていた男性用の指輪を持ち上げ、彼の薬指へはめる。しかし、このときヴィクトルの指先がわずかにピクリと震えたのを感じた。まるで、“動揺”とも言えそうな微妙な反応。それが何を意味するのか、ルシアーナには分からない。

 「……これより、神の御前において、クロウフォード侯爵ヴィクトルと、フィオレット伯爵令嬢ルシアーナを夫婦として認め――」

 神父の低い声が礼拝堂に響く。その背後で、母フロランスが小さく涙を流し、マリアナは姉の姿を切なげに見つめていた。
 こうして、わずか15分ほどの儀式は終わる。拍手すらない。ただ、「誓約書」にサインをし、侯爵家と伯爵家の印を押すだけ。まるでビジネス契約の締結に過ぎない。
 ――それなのに、どうしてこんなに胸が痛むのだろう。ルシアーナは、苦しさを堪えるように唇を引き結んだ。

4.まるで葬列のような退場

 「……では、これより新郎新婦はクロウフォード家の車にて、都心の別邸へ向かわれます」
 手短に儀式を終えた神父が言うと、ヴィクトルとルシアーナはそろって礼拝堂の外へ出ることになった。本来ならここで参列者から祝福を受けたり、フラワーシャワーなど華やかな演出があるはずが、今日は何もない。ただ、雨が降りしきるグレーの空が迎えてくれるだけだ。
 うつむき加減のルシアーナは、母と妹に視線をやった。フロランス夫人は車椅子のまま、雨を防ぐ屋根の下でハンカチを握りしめている。マリアナは悔しそうな表情を浮かべていたが、じっと唇を噛んで耐えているようだった。

 「……おめでとう、ルシアーナ。形はどうあれ、あなたが選んだ道なんだから、強く生きてちょうだい」
 そう呟く母の言葉には、気丈な中にもやはり切なさが滲んでいる。
 「……うん。わたし……大丈夫だから、心配しないで」
 ルシアーナは必死に笑顔を作り、それ以上は言葉が出てこなかった。
 そのままヴィクトルに促され、新郎新婦用の馬車へ。ドレスの裾を雨水で濡らさぬよう、ドアマンが気を使ってくれる。ヴィクトルは先に乗り込み、窓の外を向いたまま沈黙している。ルシアーナもその隣に座り、少し距離をあけて腰を下ろした。

 扉が閉まると、すぐに馬車は走り出す。遠のいていく礼拝堂の姿、その奥に残された母と妹。それが視界から消えるたび、ルシアーナの胸に押し寄せる喪失感が大きくなる。
 雨音だけが車内を満たし、ふたりは一言も口をきかない。まるで葬儀帰りのような沈黙が、ただただ続いていく。新婚夫婦とは到底言えぬ雰囲気に、外の景色さえ陰鬱に見えるほどだ。
 ――これが、自分の「結婚」という運命なのだろうか。甘い囁きも、華やかな祝福もなく、ただ契約の鎖で繋がれただけの、冷たい関係。ルシアーナは、左手にある銀の指輪をきつく握りしめた。

5.クロウフォード家の別邸――新居という名の牢獄

 馬車が長い道のりを経て到着したのは、都心部に位置するクロウフォード家の“別邸”だった。といっても、その規模は相当なもので、一見すると城のような重厚感を湛えている。外壁は白を基調とし、敷地を囲む鉄の門には家の紋章が刻まれ、庭には整然とした植栽が並んでいた。
 メインの本邸はこの都心からさらに離れた郊外にあるというが、こちらの別邸も十分に広大だ。正面玄関に到着した馬車を見て、使用人たちがわらわらと出迎える。ドアマンやメイドたちが整列し、ヴィクトルを先頭に、新婦としてのルシアーナを迎え入れるが――そこにも温かい拍手や笑顔は見当たらない。むしろ、彼らは「主人の指示どおりに動いている」にすぎないような、事務的な態度だった。

 「…………」
 ヴィクトルは何も言わず、先に屋内へと足を踏み入れる。ルシアーナも後に続くが、その背後をメイドや執事が取り囲むように歩く。
 玄関ホールは高い天井と大理石の床で装飾され、大きなシャンデリアが吊り下げられている。広々とした空間だが、どういうわけか“温もり”を感じない。壁に掲げられた絵画や彫刻の数々は高価なものに違いないが、どこか冷たく張り詰めた空気が漂っていた。

 奥に進むと、ヴィクトルが立ち止まり、執事と思しき壮年の男性を呼びつける。

 「アイザック、夫人の部屋はどこになる?」

 「はい、旦那様。あちらの廊下を進んだ先にある、青の部屋をご用意いたしました。以前貴族の令嬢がお越しになった際にも使用した客室でございます。執務室からも近いですので、旦那様のご指示にはすぐ対応できるかと……」

 ルシアーナは“夫人”と呼ばれたことに、複雑な感情を覚えた。夫人――つまり侯爵夫人として、ここに迎え入れられたのだ。だが、それは名目上の立場にすぎず、実態は空虚な契約の産物である。
 「分かった」
 ヴィクトルは淡々と執事の説明を受けると、振り返りもせず階段を上っていく。どうやら書斎へ向かうらしい。ルシアーナは「どうしろというの……」と思いつつ、執事が示すままに青の部屋へ案内される。

6.“夫人”の部屋と一通の手紙

 青の部屋と呼ばれるその客室は、天井から壁紙まで淡い水色を基調とし、豪華な調度品が揃っていた。扉を開けるとメイドが手際よく電気照明を灯し、窓にはしっかりとカーテンがかかっている。大きなベッドとドレッサー、ソファセットまで完備されており、まるで貴賓室のようだ。
 しかし、ルシアーナの胸には落ち着かない思いが渦巻く。美しく整えられた部屋であるほど、自分の居場所ではないような違和感を覚えるのだ。いったい、これからここでどんな生活が始まるのだろう。愛のない侯爵夫人として、ただ飾りのように存在するのか? それとも、もっと別の“役割”が待ち受けているのか。

 メイドたちはルシアーナのドレスを手早く着替え用のローブに取り替えようとする。泥や雨で少し汚れた裾を丁寧に拭き取り、彼女の髪型も簡単に整え直す。ルシアーナはされるがままに椅子に座っていた。
 その後、使用人が去っていくと、部屋には一人きり。重い沈黙だけが降りてくる。小さくため息をつき、足元を見ると、雨の影響で靴が少し湿っていた。
 と、そのとき、ドアがノックされる。ルシアーナが「どうぞ」と言うと、執事のアイザックが入ってきた。彼は相変わらず厳格そうな表情を崩さない。

 「旦那様からの伝言でございます。『夕方になったら執務室へ来るように。それまでは部屋にいて静かに過ごせ』とのことです。こちらに必要なものが何かあれば、わたくしにお申し付けください」
 「……分かりました」
 ルシアーナはそれだけ答えるしかなかった。ヴィクトル本人が一言も顔を出さず、執事を通じて指示を出してくる。それが“侯爵家の日常”なのか。
 「それと、もう一つ。先ほど、フィオレット家から夫人宛の手紙が届いたようです」
 そう言って、アイザックは封筒を差し出す。ルシアーナが受け取ると、そこには見覚えのある筆跡が記されていた。差出人はマリアナ、妹からの手紙だった。

 アイザックが退室すると、ルシアーナは胸を躍らせながら封を開ける。そこに書かれていたのは、簡単な近況と共に、姉の安否を気遣う温かい言葉だ。
 「お姉さまがいなくなった館は、やっぱり寂しいよ。でも、わたしも母上も、そして使用人のみんなも、あなたがいつか帰ってきたときに笑って迎えられるように頑張るから……」
 その文面を読み進めるうちに、ルシアーナの瞳に涙がにじむ。結婚式直後のこの部屋で、彼女を支えているのは、遠い実家から届く妹の思いだけなのだ。
 「……ありがとう、マリアナ。わたしも頑張るから」

 手紙をそっと胸に抱き、ルシアーナは強い決心を再び胸に宿した。たとえこの屋敷で冷遇されようと、ひとまずは耐えてみせる。家族が安心して暮らせるようになるまで、クロウフォード家との契約を最大限に利用してやるのだ――そう、心に誓う。

7.初めての執務室――冷たく、そして小さな動揺

 夕方になり、メイドに促されてルシアーナは屋敷の奥にある執務室へと向かった。案内された廊下は長く、絨毯が敷かれ、壁には肖像画がずらりと並ぶ。その視線に晒されながら進むと、やがて重厚な扉が現れる。メイドが扉をノックすると、中から「入れ」という低い声が聞こえた。

 入室すると、広々とした部屋の中央に大きな机が置かれ、その奥にヴィクトルが座っていた。机の上には積み上げられた書類や公文書が散らばり、壁際には本棚や地図などもある。まさに“侯爵”の仕事場といった雰囲気だ。
 ヴィクトルは顔を上げ、ルシアーナを一瞥する。その視線は相変わらず冷たいが、どこか疲れの色も浮かんでいるように思えた。

 「……座れ」
 無言のまま彼が机の向かいに置かれた椅子を示す。ルシアーナはおとなしく腰を下ろし、彼の言葉を待った。
 「まず、正式に言っておく。今日から、お前はクロウフォード家の“妻”という立場になる。世間に向けても、そのように振る舞え。ただし――」
 ヴィクトルは低い声で言葉を切り、冷酷な光を宿したまま視線を固定する。
 「愛情を要求するな。俺の行動を詮索するな。俺の命令には従え。それが契約だ。分かっているな?」
 「……承知しています」

 ルシアーナは静かに答えるしかない。改めて突きつけられる冷たい条件に、胸が痛まないわけではなかった。しかし、これは予想の範囲内だ。
 「それと、お前が出入りする場所は限定される。この別邸の中なら自由にしていいが、屋敷の外に出るときは事前に俺の許可を取れ。勝手な外出は認めない。あと、来客があっても、俺が許可しない限り会わなくていい」
 厳格なルールが次々と飛び出す。まるで監禁にも等しい扱いではないか、とルシアーナは内心で息を呑む。しかし、反論しても決定が覆るはずがないことは分かりきっている。

 「分かりました……。でも、ひとつだけお願いがあります」
 ここで引き下がるわけにはいかない。ルシアーナは意を決して口を開く。
 「フィオレット家の母と妹から、手紙で安否を問われたりすると思います。そういう連絡は、きちんと受け取ったり、返事を書いたりする自由をいただきたいのです。……それだけは、どうか」

 ヴィクトルはわずかに目を細める。ルシアーナは彼の冷たい顔をまっすぐ見つめた。
 「……好きにしろ。ただし、内容についてこちらが確認することがあるかもしれない。お前が余計な情報を漏らしていないか、チェックさせてもらう」
 それすらも監視下に置こうとするのか――ルシアーナは悔しい思いを飲み込みながら、仕方なく首を縦に振った。
 「ありがとうございます」

 そこまで話すと、ヴィクトルは一冊の書類を取り出し、さらさらとサインをし始める。まるで先ほどの会話などどうでもいいかのように、仕事へ意識を戻したのだ。執務室に沈黙が降りる。
 ルシアーナは立ち去っていいのか分からず、椅子に座ったまま様子を伺う。書類のページをめくる音だけが重苦しく響いた。

 しばらくして、ヴィクトルがふと視線を上げる。その瞳には鋭さが戻っていたが、何かしら僅かな迷いが宿っているようにも見える。
 「……礼拝堂で指輪を交換したとき、お前は怖くなかったのか?」
 思いがけない問いに、ルシアーナは息を呑む。なぜ彼がそんなことを尋ねるのか、意図が読めない。
 「怖い、というより……痛かったかもしれません。心が。わたしにとっては、形ばかりの結婚とはいえ、とても重たい決断でしたから」
 正直に答えると、ヴィクトルは再び書類に目を落とし、短く息を吐いた。

 「そうか。……下がれ。もう話はない」
 つれない言葉だった。ルシアーナはやや肩を落としながら椅子を立ち、深く一礼して執務室を後にする。扉が閉まる直前、ヴィクトルの視線が一瞬だけ揺れたように見えたが、その真意は分からないままだった。

8.つかの間の安息と不穏な風

 青の部屋に戻ったルシアーナは、またしても一人きりの時間を過ごすことになった。メイドが夕食を用意してくれるらしいが、それも「部屋でお召し上がりください」という指示が出ているという。まるで“夫婦でテーブルを囲む”という概念は最初から存在しないのだろう。
 (仕方ない……)

 ため息をつきつつ、柔らかいソファに腰を下ろした。ドレスからローブへ着替えた体は幾分楽になったが、気分は重いまま。婚礼という人生の大イベントを経たはずなのに、この心の冷え込みはいったいなんなのか。
 そんな中、ふと脳裏を掠めるのは、あの黒髪の男の姿だった。町の裏通りで見かけた、金の紋章をあしらった馬車と共に現れた、不気味な雰囲気の男。あれはクロウフォード家に関係しているのか、それとも全く別の存在なのか。ヴィクトルや秘書が警戒しているような様子はなかったが、真相は定かではない。

 (もしクロウフォード家に敵対する何者かなら、きっとこの結婚にも影響を及ぼすかもしれない。あまり深入りすべきではないけれど……何か胸騒ぎがするのよね)

 ルシアーナはそう思いながら、軽く目を閉じる。どんなに警戒しても、今の自分には何の権限もない。下手に動けば、ヴィクトルに契約違反だと責められかねないだろう。
 夕食を済ませても気力は湧かず、ルシアーナは早めにベッドに入った。暗い天井を見上げながら、さまざまな不安や思惑が頭をかすめる。愛のない結婚を、どうやって自分の糧へと変えられるのか。いつか“ざまぁ”と笑う日が来るのか。それは、神のみぞ知るというところかもしれない。
 ――こうして、侯爵家での最初の夜は、冷たい孤独を抱えたまま静かに更けていった。

9.嵐の兆し――不穏なささやき

 翌日。薄曇りだった天気はさらに悪化し、朝から激しい雨が窓を打ちつけている。時折、雷鳴すらとどろきそうな気配だ。そんな荒れた天候の中、ルシアーナは屋敷の中を散策していた。といっても、自由に見て回れる場所は多くはない。廊下から覗ける客間や応接室、サロンと呼ばれる部屋。それだけでも、この屋敷がいかに広大かは十分分かる。
 使用人たちは皆、ヴィクトルの指示を受けて動いているようで、ルシアーナに近づいてくる者は少ない。挨拶をしても、必要最低限の言葉しか返ってこない。一部のメイドや下働きの若い者は好奇の眼差しを向けるが、すぐに目を逸らしてしまう。

 (まるで、わたしはこの屋敷の“歓迎されていない客人”みたい。――まあ、実際そうなのかもしれないけど)

 自虐的な思いを抱えながらも、ルシアーナは本棚の並ぶ一室に足を踏み入れた。ここは小さな書斎のようで、使用人が日誌や簡単な帳簿をつけるために使っているらしい。埃っぽい棚を見回すと、古い書物やファイルが無造作に積まれていた。
 何気なく手を伸ばすと、そこにクロウフォード家の紋章が入った封筒の束がある。何かの書類だろうか。中身を覗くのはさすがに憚られるが、その中の一枚に目が留まった。そこには、先日ルシアーナが町で見た“金の紋章”とは別の紋章が描かれている挿絵が貼られていた。だが、よく見ればその紋章とともに、“黒狼”を象ったシルエットがあしらわれている。

 (黒狼……? 見たことのない紋章だわ。どこかの貴族……? それとも、裏社会のギルドか何か?)

 覗き込むわけにもいかず、ルシアーナはそっと書類を元に戻した。分からないことだらけだが、これ以上詮索すれば“あの冷たい侯爵”に咎められる可能性がある。気づかれないよう素早く棚を閉めると、小さな書斎を出て廊下を後にした。
 ――その時、背後から微かに聞こえた声。

 「……動きが怪しいな。まさか新婦様がこんなところをうろつくとは……」
 「旦那様が何を考えているのかは知らんが、とにかく監視しておく必要があるか」

 どうやら使用人同士のひそひそ話らしい。ルシアーナは聞こえないふりをして足早に通り過ぎる。やはり、ここでは“一挙手一投足”が見られているのだ。締め付けられるような息苦しさに、彼女は唇を噛んだ。

10.嵐とともに現れた黒い影

 雨脚がさらに強まる午後、屋敷の正面玄関からざわざわとした声が聞こえてきた。ルシアーナは青の部屋で過ごしていたが、妙に胸騒ぎがして廊下に出る。すると、遠くからバタバタと忙しなく行き交う使用人の姿が見えた。誰か来客があるのかもしれない。
 (……ヴィクトルの客?)

 そう思い、玄関ホールの方へ行こうとすると、ちょうど廊下を曲がったところでヴィクトルの秘書と鉢合わせした。彼はいつもより緊張した面持ちで、ルシアーナに気づくと少し驚いたようだった。

 「……夫人、こちらへは何か御用でしょうか? 今、少し取り込み中でして……」
 「取り込み中? お客様ですか? わたしにも挨拶できるような方でしょうか?」
 秘書は言葉を濁すように視線を逸らす。

 「いえ……その、あまり穏やかではないので、夫人は部屋でお待ちいただいた方が――」
 「穏やかではない? 何があったんですか?」
 ルシアーナはその言い草に疑念を抱く。よほど厄介な人物が来ているのだろうか。まさか、また債権者が乗り込んだわけではあるまい。フィオレット家の借金はすでに清算されたはずだ。
 「申し訳ありません、詳しくは……。ですが、くれぐれも外には出ないようお願いします」
 秘書が困ったように眉を寄せた瞬間、奥から雷鳴にも似た怒鳴り声が響いた。

 「――どこだ、ヴィクトルは! いい加減にしろ、いつまで俺たちを粗末に扱うつもりだ!?」

 低く、太い声。まるで野獣が吠えるような響きに、ルシアーナは思わず身震いした。続けざまに使用人たちの制止する声が聞こえ、物々しい騒ぎへと発展している様子だ。
 (なに……何が起きているの?)

 その疑問が湧いたとき、廊下の向こうからあの“黒髪の男”が現れた。町で見かけた、不気味な雰囲気をまとった人物――間違いない。彼は雨に濡れた黒いマントを翻しながら、大股で屋敷の中を進んでくる。背後には荒くれ者のような男たちが数人続いており、使用人たちが慌てて止めようとしているが、まるで歯が立たない。

 「くっ……! 勝手な行動は許されません!」
 「ええい、手を離せ!」
 激しい押し問答の末、黒髪の男は執事らを振り払ってさらに奥へ進もうとする。
 「お前が……このクロウフォード家の新婦か? 噂には聞いていたが、ずいぶんと華奢な体だな」
 彼の漆黒の瞳が、まっすぐルシアーナを捉えた。冷たい視線にゾッとする。まるで獲物を狙う猛禽のようだ。その一瞬で、ルシアーナはこの男が並々ならぬ人物であることを悟った。
 傍らの秘書が彼女を庇うように立ちはだかり、「奥へお下がりください」と小声で促してくる。しかし、ルシアーナもただ怯えているわけにはいかない。状況が分からずとも、“この屋敷の夫人”として何かしら動かねばならないのではないか、と咄嗟に感じた。

 ――そこへ、階段の上からヴィクトルが現れた。灰色の瞳が鋭く光り、ひどく不機嫌そうな面持ちである。
 「リュシアン・ブラックバーン……お前がわざわざ来るとは、珍しいな。この屋敷は俺のものだ。無断で上がり込むなら、それなりの覚悟があるんだろうな?」
 ヴィクトルの声音には怒りの棘が見え隠れしている。一方、黒髪の男――リュシアンと呼ばれた人物はニヤリと笑い、挑発するように口を開く。

 「クロウフォード侯爵殿、俺たちがおとなしく待っていれば、お前はいつまで経っても会ってくれないじゃないか。……こっちには時間がないんでな」
 「黙れ。俺はお前たちとは何も交わすつもりはないと言ったはずだ。とっとと帰れ」
 ヴィクトルとリュシアンの視線が火花を散らし、辺りはピリピリとした緊張感に包まれる。使用人たちは固唾を呑んで成り行きを見守り、ルシアーナもまた息を詰めていた。
 (この男……やはり、クロウフォード家と何かしらの因縁があるのね)

 すると、リュシアンが手を挙げて部下たちに制止をかけると、ヴィクトルに向かって低く唸るように言い放つ。
 「いいだろう。今日は挨拶に来ただけだ。だが、俺たち“黒狼(ブラックウルフ)”はお前の出方をいつまでも待っているわけじゃない。……後悔するなよ」

 そう吐き捨てると、リュシアンたちは踵を返し、荒々しく屋敷を後にする。残されたのは、嵐の中で強烈な余韻を残すその名前――“黒狼(ブラックウルフ)”。
 (黒狼……さっき小さな書斎で見かけた紋章にあった“黒狼”と同じ……?)

 ルシアーナの胸に、再びあの嫌な胸騒ぎが走る。どうやらヴィクトルには、危険な組織との確執があるらしい。それが彼の冷酷な性格や、家にまつわる不気味な雰囲気に関係しているのかもしれない。
 階段から降りてきたヴィクトルは、使用人たちにきつい目を向け、低く怒鳴る。
 「お前たち……二度と奴らを中へ通すな。次に来たら武装して追い返せ」
 「は、はい! 申し訳ございません……」

 使用人たちがバタバタと散ると、玄関ホールにはルシアーナとヴィクトルが二人で立ち尽くす形になる。激しい雨音が外から響き、不穏な空気がまだ渦を巻いていた。
 (こんな……こんな危険な敵がいるのに、わたしは何をしてしまったんだろう)

 気づけば、ルシアーナの指先は冷たく震えていた。先ほどのリュシアンの目つきは、まるで人を殺めることを何とも思わない野獣のようだった。
 ヴィクトルはチラリと彼女を見下ろし、つまらなそうに吐き捨てる。

 「……怖いのか? お前には関係のないことだ。余計な詮索はするなと言っただろう」
 「そ、そうですか。分かりました……」
 それだけを言うのが精一杯だった。ルシアーナはぎゅっと手を握りしめ、雷鳴のようなヴィクトルの声とリュシアンの姿を脳裏に焼き付けた。あの組織――“黒狼”――が何を狙っているのかは分からない。だが、いずれ自分も巻き込まれるのではないかという予感が、彼女の心を強く揺さぶっていた。

11.ざわめく心と、一瞬の火花

 その夜、ルシアーナは青の部屋で眠れぬ時間を過ごしていた。クロウフォード家に来て、まだ二日足らずだというのに、既に複数の不穏な出来事に直面している。夫となったヴィクトルは相変わらず冷たく、何も語ってはくれない。彼の秘書も、使用人たちも一様に口を閉ざし、彼女には何も教えようとしない。
 (わたしは一体、どうなるんだろう……)

 フィオレット家を守るためとはいえ、こんなにも危険を孕んだ家に嫁いでしまったのか。あの“黒髪の男”――リュシアンは容赦ない勢いで屋敷に押し入ってきた。もしヴィクトルと何らかの大きなトラブルがあるとしたら、自分も安閑としてはいられないのではないか。
 少し考えた末、ルシアーナは決意を固める。愛を求められない結婚であればこそ、自分の存在意義は「利用される」だけに留まるわけにはいかない。むしろ、この家の抱える闇を自分で明るみに引きずり出し、危機を回避できるよう動けないだろうか――そう思い始めていた。
 (勝手に動いて契約違反になったらどうしよう。でも、黙っているだけでは何も変わらない。……わたしが“ざまぁ”と笑う日は、きっと自分で掴みに行かなくちゃ)

 そのとき、部屋の外で足音が聞こえた。誰かが廊下を通り過ぎたらしい。時計を見れば、既に深夜に近い。こんな時間に……と不審に思い、ルシアーナはベッドを降りて、そっとドアに耳を当てる。
 すると、小声で囁きあう使用人の声が聞こえた。

 「……今夜は旦那様の機嫌が最悪だ……何か書斎で壊したらしいし、下手に触るなとアイザック様からも言われている」
 「やれやれ、やはりあの“黒狼”との一件がまずかったんだろう。リュシアンは昔から手段を選ばない。旦那様も……」
 声は遠ざかり、やがて消えていく。
 (やっぱり、ヴィクトルは相当ストレスを抱えているのね。……何を壊したんだろう。書斎で?)

 冷酷な侯爵が怒りに任せて何かを破壊する姿――ルシアーナは想像もしたくないが、それだけ彼も追い詰められているのだろうか。以前から心に閉じ込めていた闇と、“黒狼”という外部からの圧力で揺れ動いているのかもしれない。
 とはいえ、ルシアーナにできることは限られている。夜の廊下をうろつけば、監視の目に咎められる可能性が高い。深夜にうかつに書斎へ行けば、ヴィクトルの怒りに触れるかもしれない。
 結局、彼女はドアの鍵をかけ、ベッドに戻って布団を被った。けれど胸の中のざわめきはおさまらず、長い夜が延々と続いていく――。

12.白い結婚の行方と、始まりの一歩

 翌朝、雨は弱まったものの、空は厚い雲に覆われていた。そんなどんよりした空気の中、ルシアーナはひとり、屋敷の裏庭に立っていた。メイドに案内され、朝の散歩と称してこの一角だけは自由にしていいと許可されたのだ。
 庭には噴水や花壇があるが、ほとんど手入れが行き届いておらず、雑草が生い茂り、噴水も水が濁っている。クロウフォード家の栄華が伺えるようで、同時にその内情が荒んでいる証拠でもあるのかもしれない。

 (ここで生活しているだけでは、きっと何も分からないし、何も変わらない。わたしにできることは……自分で動くしかない)

 雨に濡れた花壇の土を見つめながら、ルシアーナはそう考えていた。愛情もなく、ただ契約で繋がれた白い結婚が、いつまで続くか分からない。夫と呼ぶにはほど遠いヴィクトルは、危険な闇を抱えたまま孤立しているようにも見える。
 ――だが、ルシアーナには目指すべき目的がある。フィオレット家の借金は確かに清算されたが、伯爵家の復興はまだ道半ば。いつか彼女が“ざまぁ”と笑える日は来るのだろうか。クロウフォード家で得られる力を利用し、家族や使用人たちを守る術を得なければならない。そのためには、この冷たい契約を“形だけ”で終わらせてはいけないのかもしれない。
 (ヴィクトルが何を考えているのか、そして“黒狼”のリュシアンは何を企んでいるのか。――わたしの手で突き止めてみせるわ)

 そう決めたとき、ルシアーナの瞳には微かな決意の炎が宿る。
 白い結婚――愛のない契約に縛られたはずの彼女が、ここに来て“意思”を抱き始めている。もしこのまま、ただ大人しくヴィクトルの言うとおりにしているだけなら、自分は本当の意味で失われてしまうだろう。けれど、彼女は伯爵令嬢としての“矜持”を捨ててはいない。
 その足元で、雨粒をたたえた花のしずくが一つ、地面に落ちる。まるで、ルシアーナの心を象徴するかのように儚く、そして静かだ。

そして物語は、さらなる嵐へ向かって――

 こうしてルシアーナとヴィクトルの「白い結婚生活」は幕を開けた。
 互いに冷酷な契約を盾に取り、すれ違いを重ねる夫婦。そこに忍び寄る謎めいた組織“黒狼”。この結婚の先に待ち受けるのは、破滅か、それとも新たな希望か。
 フィオレット家の誇りを守りながら、ルシアーナは自らの手で運命を掴もうと決心する。愛を期待しないはずの結婚のなかで、彼女が見出す“ざまぁ”の瞬間は、まだ遠いようでいて、すぐそばまで来ているのかもしれない。




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