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第1章 吾郎の本性

第4話 早紀

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吾郎の家を二人で出る

「そうだ、恋人なんだから神城君は止めて健太と呼んでくれ」

「それぐらいならいいわ」

「何か腹減ったからファミレスに寄ろうぜ」

私は無言で健太の後をついていく

ファミレスに入りランチを注文する。何を食べるか聞かれたが答えず黙っていると健太が勝手にランチメニューを注文した。

「おいおい恋人同士なんだから会話ぐらいしろよ」

「1週間、恋人になったとしても受験勉強があるから毎日は会えないわよ」

「でも明日までは大丈夫なんだろ?」

吾郎の両親の事を知っている健太には嘘は通じない
「ええ、明日までは他の予定は入れて無いわ」

「そっか、それならいい。ここで食事したら◎×公園に行くか?」

高校3年生が町の公園でデート?
それに◎×公園は吾郎の家の近くにある公園で行きたくない。

「◎×公園には行きたく無いよ。」

「ならラブホテルがいいのか?」

「何を言っているのよ。それなら◎×公園に行きましょう」

食事を食べ終えると◎×公園に向かう

「あそこのベンチに座るぞ」

吾郎の家に向かう通りが良く見える場所のベンチを指差す

「違うベンチに座りましょうよ。あそこは直射日光を浴びるから嫌だわ」

「夏だから何処に座ろうが一緒だろ」

私の意見を聞かずベンチに座る。

我慢するしかない

私も指定されたベンチに座った

「アイツは昼飯食ったのかな?」

「食べていると思うよ。」

「そうかな?」

まったく何を言いたいのか分からない。
まるで吾郎の行動を知っているとでも言うのかしら?

「そう言えば、何で食材の買い出しにスーパーでは無くてコンビニに行ったの?私が書いた食材はコンビニには売っていなかったでしょ?」

「あ~コンビニなら近くにあるから、自分の分だけ弁当を買ったんだよ」

まるで私達の行動を予測していたかの様な行動だ

「お前達を二人にしたら、すぐにおっぱじめると思ったからコンビニにしたんだよ」

「おっぱじめるって・・・」

「おっぱじめていただろ?」

さすがに答えられないで下を向いた。

「おい、あの子知ってるか?」

えっ
私は顔を上げて、健太が指差す場所を見た
そこには同じ高校で同じクラスの「早紀」が目の前の公道を歩いていた。

「あいつはお前と同じ高校か?」

「私と吾郎が行ってる高校の同級生よ」

「そうか、やけに色っぽい女だな。じゃあ行くぞ」

健太が立ち上がり、早紀の後を追い掛け始めた

私の胸はDカップなので小さい方ではないのだが、早紀はクラスでも1,2を争う程の巨乳でFカップは確実にある。
胸の所にワンポイントがある白い半袖のYシャツに、ジーパンを履いているが、お尻も大きい早紀が着ると、Yシャツのボタンが弾けそうな胸とピッタリと肌に張り付いてキュっと上がった大きいお尻が強調されるジーンズ姿は、女の私でさえ色っぽさを感じる。

「もう何なのよ」

しょうがなく健太の後を追う

でも、早紀の家はこの辺では無い筈だ

一定の距離をおいて尾行する

「これから、いいものが見えるぞ」
健太がニヤつた

何なのよ
でも、このまま行くと吾郎の家の方だわ

もしかして・・・・

いやいや、そんな筈は無い

しかし、確実に吾郎の家に向かって歩いて行く

早紀が歩いている10m先の脇道に入ると、この嫌な予感が現実味を増してくる。

脇道まで 10,9,8,7,6,5,4,3,2,1・・・・
「曲がるな!」
心の中で叫ぶ

早紀は脇道を通り過ぎた

「はあ良かった」

健太は早紀の尾行を止めない

早紀の歩く前方に、さっき健太が買い物したであろうコンビニが見えた。

あれ?

コンビニで本を読んでいる人物が目に入る

吾郎だ

早紀がコンビニに入ると吾郎は本を置いて、早紀の所に笑顔で駆け寄り話し掛ける

たまたまよ

たまたまに決まっている

しかし数分後、早紀と吾郎は手を繋いでコンビニから一緒に出て来たのである。

それには私も平常心を保てなかった

「行ってくる!」
二人の所に行こうとするが、私の腕を健太が掴む
「おい、まだ出て行くな。今、愛美が出て行っても何も解決されない」

「えっ?止めないでよ。それに私に触らないって言ったでしょ」

「手を離したら愛美も約束を破る事になるんだぞ」

・・・・

「とにかく決定的な証拠を掴まないと言い逃れするぞ」

もう、この時点で言い逃れは出来ないと思うが、二人が吾郎の家に入る所まで確認して吾郎を問い詰めようと考えた。

この時は悲しみより怒りの方が勝っており、冷静な判断に欠けていたのは事実である。

私達は尾行を続ける

間違いなく吾郎の家に向かっている

徐々に怒りの感情から悲しみの感情に変わっていくと、自然と涙が流れ始める

二人で家に入っていく時には涙でよく見えなくなっていた。

なんという脱力感

「愛美、大丈夫か?」

さっきまで吾郎を問い詰めるつもりだったが、もうその気力も失われている
「もう、いいでしょ。恋人ごっこは終わりよ。私は帰るわ」

「このままでいいのか?」

「えっ?」

「復讐しなくていいのか?」

「復讐?」

「そうだ、復讐だ。お前が苦しんでアイツが何も罰を受けなくていいのか?」

復讐なんて普段では絶対に考えもしないのだが、健太の言葉に興味が沸く。健太の言っている事は間違っていない、私は健太の意見を聞きたくなっていた

「どう復讐するの?」

「二人で家に行き、アイツの情けないところを女に見せるんだ。そうすれば女も愛想をついて出て行くだろ」

早紀が愛想をつかして出て行ってから、私も吾郎に別れを告げれば、この怒りも少しは収まるかも知れない。
このまま見過ごせば、健太の言う通り私だけが悲しむだけで、一番悪い吾郎が何の罰を受けないのは絶対におかしい

「分かった。行きましょう」

私達は吾郎の家に向かった。

健太がインターホンも鳴らさず玄関の戸を掴む
「おっ、鍵が掛かって無いぞ」

ドアを開けて健太が中に入り、靴を脱いで中に入って行く

私も靴を脱ぎ健太の後に続いた

「おい・・・」
健太がリビングの入口で立ち止まる

健太の体の横からリビングを覗き込むとありえない光景が目に入る
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