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第1章

第9話 花火

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「眠いですねー。」

 ルカが隣で伸びをしながら言う。 

「誰のせいでこうなったんでしょうか。」

 リリさんはあくびをしている。

「本当に誰のせいなんだろう。」

「2人のせいだよ!?」

 思わず突っ込んでしまった。

 本当に自分は何のためにここに来たんだか…。

■ ■ ■

「1人用の部屋なのに意外と広いですね。」

 リリさんが感嘆の声をあげた。こういう所に今まで泊まったことがないのだろう。確かにこの部屋は1人部屋にしては十分過ぎるくらい広い。

 だがここに3人で寝るとなるといくらなんでも狭い。そういう広さの部屋だ。その割には値段は安かったが…。(自分にとってはめっちゃ高い)

「とりあえず荷物置いてお風呂入ろう。」

 ここに来る途中は暑くて汗をかいていたのですぐに入りたかった。だがそう言うと2人は顔を赤らめて、

「それはちょっと心の準備が…。」

「いきなり一緒に入るのはちょっと…。」

「なんで一緒に入る前提なの!?」

 最近思うのだが世の中の女性は全員こういう人たちなのか。そうじゃないと信じたい。

「部屋2つ取ってあるから2人とも先に行ってきていいよ。」

 部屋が2つあるのでお風呂も2つついているのだ。さっさとお風呂に入って、もう早く寝たい。

「分かりました。先に入ります。」

 2人とも納得してくれて、入ってくれた。

 ここまでは良かったんだ…。

 全員がお風呂に入り終わって寝ようとしたときだった。外でドーンという爆発音が何度か聞こえてきた。

 外を見てみると花火が打ち上げていた。自分は花火を何回か見たことはあるが、ルカとりりさんは見たことがないらしい。2人とも目を子供みたいにキラキラしながら眺めていた。

 そしてこっちをじっと見てきた。これはおそらく、

「もっと近くで見たい。」

 と、いうことを目で訴えている。正直めっちゃ眠かったが、ここで寝たら2人の機嫌が悪くなると思ったので仕方なく外に出た。

 周りは屋台やら食べ物がいっぱい並んでいる。そういえばディラン区に着いてから何も食べていなかった。

 ルカもリリさんもお腹を空かせていたみたいで適当に見てまわることにした。最終的に食べ物を大量に買わされた。そして花火がよく見える

 場所まで移動した。何か話しかけようと思ったが、2人ともすっかり花火の虜にされていて、聞く耳を持たないと思ったので、自分も花火を見ることにした。

 もう花火を見たのは10年以上前だなーなんて思っていると2人とも眠ってしまったらしい。

 時間はとっくに日付が変わっている時間だった。さあ帰ろうと思ったとき、冷静になった。

 どうやって帰ろう…。

 花火が見えるところまで移動していたため、ここから宿屋までそれなりの距離がある。

 歩いて帰れないという程ではないが、2人を連れて帰るのはかなり大変だ。起こしてみたが全然反応がない。

 結局1時間以上かけて宿屋に着いた頃にはお日様が「こんにちは」と言う時間だった。
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