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第1章
第10話 恩人
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昨日のお祭りが終わり、ディラン区は昨日とは全然違う景色になっていた。人口はそれなりに多い所だが、とても静かな町だ。
「今からどこに向かうんですか?」
隣ではルカが呑気な顔をして聞いてきた。
「とりあえず近くで聞き込みをしようかな。」
というか聴き込むくらいしか方法がない。ここへ来た理由は自分と同じ魔法を持つ人を探すためだ。
「なぜ同じ魔法を持っている人を探しているんですか?」
リリさんが興味深そうな顔をしている。
「それ私も気になります。」
ルカも同じ顔をしている。そういえば言ってなかった。
「ちょうどお昼だからどこかお店に入ろうよ。」
■ ■ ■
普通の飲食店に入って、料理が来るのを待った。
「さっきの理由だけどね。自分の夢を叶えるためなんだ」
ルカとリリさんはキョトンとした顔で見ている。そして自分は2人に過去のことを話し始めた。
■ ■ ■
自分が10歳のとき、今から10年以上前の話だった。自分はごく普通の家に生まれた。
だが当時は珍しい双子だった。自分は双子の弟だったのだ。双子というのは後継者争いになりやすいという理由からどちらか1人を施設に送るのが一般的だ。
だが自分の親は施設に送るようなことはしなかった。普通に考えれば、1人だけ送るなんてことは親もしたくはないはずだ。
だがどこに行っても、周りからは変な目で見られることが苦痛となったらしい。
ついに父がどちらかを施設に入れようとした。だがそれを母が猛反対をした。やがて、父は家を出ていき、母は何かに取り憑かれたかのようにおかしくなってしまった。
そしてついに母が包丁を持って自分達に近づいてきた。本能的に殺されると分かった。最後までどちらかを選ぶことができなかった母は、
「両方殺せば平等だ。」
「あんたらなんか生まれなれけば良かった。」
ここで自分はとっさに逃げ出した。兄は母に運が悪く捕まってしまった。どちらが殺されていてもおかしくなかった。自分が生き残ったのは運が良かったからだ。
その後兄がどうなったかは知らない。おそらく殺されただろう。
■ ■ ■
ここまで話して料理が来た。ルカとリリさんは、話があまりにも残酷だったのか、何も声を出さなかった。数十秒の沈黙の後、
「その後はどうなったんですか?」
リリさんが恐る恐る聞いてきた。
■ ■ ■
その後の自分は施設に入るわけでもなく、色々な所を歩いていた。なかなか母のトラウマを克服することもできず、ただ外で野宿をする日々が続いた。
ある日、小さな路地に入った。時間は昼だったが、周りが大きな建物ということがあって、とても暗かった。
少し歩いてみると扉があった。かなり古くボロボロになった小さな家だ。扉を開けてみると、小さな机と椅子が2つ置いてあるだけの狭い部屋があった。
階段があるため2階もあるようだ。だが人の気配がなかったため、すぐに出ようと思った。
「これは随分と小さなお客さんだね。」
この時の恐怖は本当に今でも忘れない。後ろを振り返ると、さっきはなかったはずの気配がいきなり現れた。
顔はフードを被っていたため分からなかったが、声からして女性ということは分かった。
この出会いが、自分の人生を大きく変えることになった。
「今からどこに向かうんですか?」
隣ではルカが呑気な顔をして聞いてきた。
「とりあえず近くで聞き込みをしようかな。」
というか聴き込むくらいしか方法がない。ここへ来た理由は自分と同じ魔法を持つ人を探すためだ。
「なぜ同じ魔法を持っている人を探しているんですか?」
リリさんが興味深そうな顔をしている。
「それ私も気になります。」
ルカも同じ顔をしている。そういえば言ってなかった。
「ちょうどお昼だからどこかお店に入ろうよ。」
■ ■ ■
普通の飲食店に入って、料理が来るのを待った。
「さっきの理由だけどね。自分の夢を叶えるためなんだ」
ルカとリリさんはキョトンとした顔で見ている。そして自分は2人に過去のことを話し始めた。
■ ■ ■
自分が10歳のとき、今から10年以上前の話だった。自分はごく普通の家に生まれた。
だが当時は珍しい双子だった。自分は双子の弟だったのだ。双子というのは後継者争いになりやすいという理由からどちらか1人を施設に送るのが一般的だ。
だが自分の親は施設に送るようなことはしなかった。普通に考えれば、1人だけ送るなんてことは親もしたくはないはずだ。
だがどこに行っても、周りからは変な目で見られることが苦痛となったらしい。
ついに父がどちらかを施設に入れようとした。だがそれを母が猛反対をした。やがて、父は家を出ていき、母は何かに取り憑かれたかのようにおかしくなってしまった。
そしてついに母が包丁を持って自分達に近づいてきた。本能的に殺されると分かった。最後までどちらかを選ぶことができなかった母は、
「両方殺せば平等だ。」
「あんたらなんか生まれなれけば良かった。」
ここで自分はとっさに逃げ出した。兄は母に運が悪く捕まってしまった。どちらが殺されていてもおかしくなかった。自分が生き残ったのは運が良かったからだ。
その後兄がどうなったかは知らない。おそらく殺されただろう。
■ ■ ■
ここまで話して料理が来た。ルカとリリさんは、話があまりにも残酷だったのか、何も声を出さなかった。数十秒の沈黙の後、
「その後はどうなったんですか?」
リリさんが恐る恐る聞いてきた。
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その後の自分は施設に入るわけでもなく、色々な所を歩いていた。なかなか母のトラウマを克服することもできず、ただ外で野宿をする日々が続いた。
ある日、小さな路地に入った。時間は昼だったが、周りが大きな建物ということがあって、とても暗かった。
少し歩いてみると扉があった。かなり古くボロボロになった小さな家だ。扉を開けてみると、小さな机と椅子が2つ置いてあるだけの狭い部屋があった。
階段があるため2階もあるようだ。だが人の気配がなかったため、すぐに出ようと思った。
「これは随分と小さなお客さんだね。」
この時の恐怖は本当に今でも忘れない。後ろを振り返ると、さっきはなかったはずの気配がいきなり現れた。
顔はフードを被っていたため分からなかったが、声からして女性ということは分かった。
この出会いが、自分の人生を大きく変えることになった。
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