雪のち晴

トモヒロ69

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第1章 雪のち晴

第5話 散髪

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「脱獄がバレたら困るから髪切ろうよ」

 僕がいた拘置所では、死刑囚は髪を切らなくても良かった。そのせいか、かなり髪が長くなっていた。

「嫌です」

 即答だった。正直に言うと、色々な理由があって僕は人と目を合わすのが怖い。視線恐怖症とかいう病気らしい。

 なのでこの髪の長さで目元を隠している。それをいきなり取られるのは絶対に嫌だ。

「じゃあバレてもいいのかい?」

「忘れてるかもしれないけど、僕は警察に見つかってもいいって思ってるんだからね?」

 別に見つかれば、拘置所ヘ戻ってすぐに死刑執行が来るんだ。

「それじゃ話が成り立たないじゃないか。私と警察から1年間逃げるんだろ?」

 まあ確かにそうだ。僕はこの人と1年間逃げ切る。そして殺してもらう。こういう契約内容だ。

「はい。じゃあ切ろう切ろう」

 呑気なの声で晴さんは言いながら、下に新聞紙を引いていた。

「何してるの?」

「何って、切る準備だけど?」

 どうやら切ってくれるらしい。確かに美容院に行ってバレたら大変だ。

 もう晴さんに全て任せることにした。


「おお!」

 鏡を見ると、もう別人だった。クラスの中でめっちゃ大人しい子が、いきなりクラスの中心人物になったみたいな感じだ。

「早速外行こうよ!」

 晴さんはとても機嫌がいいみたいだ。

 近くの商店街を適当に見てまわった。本当に僕が拘置所にいた間に色々なものが変わっていた。

「なんか書いてあるよ」

 指されたところを見てみると、それはどうやら自分のことについて書かれているチラシだった。脱獄囚に注意しろなどと書いてある。

「ひどいよね。雪君はそんなことしないのに」

 確かに僕は何もしてないけど、世間から見れば殺人犯なわけだ。そんなことを言ってもしょうがない。

「そろそろ帰ろっか」

 晴さんは小さく頷いて、来た道を戻っていった。

「あの…」

 後ろから声をかけられた。振り向いてみると、紺色の服に、帽子、それと無線機のようなものを持った人がいた。それはつまり、

(警察!?)

 何の用だろう。そう簡単にバレる変装ではないと思うんだが。

「最近、この辺でこの顔の人見かけませんでした?」

 それを見ると、僕の顔が乗っていた。

「いや、見てないです」

「そうですか。脱走した死刑囚がいるんですよ。くれぐれも戸締まりだけは気をつけてくださいね」

 それだけ言って、警察はどこかに行ってしまった。

「死ぬかと思った…」

「案外バレないもんだね」

 晴さんはにこりと笑っている。なんで笑っていられるんだ…

「まあバレないってことが分かったんだし、早く帰ろうよ」

■ ■ ■

「案外バレないものだな」

 警官の服を着た死神は1人でつぶやく。

「赤鳥晴。お前は何を考えているんだ?」
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