キメラフォックス ~デスゲームでクリーチャーに異能【吸収融合】を使い、人外となっていく狐顔~

乃神レンガ

文字の大きさ
10 / 38
第一章

010 右腕の問題

しおりを挟む
 ここまでは目をらしていたけど、この右腕はあのとき、勝手に動いたのである。

 太山さんの首へと飛び掛かって、その血をすすったのだ。

 加えてそのとき、右腕は僕の言うことを全く聞かなかったのである。

 この事実から導き出される答えは、一つしかない。

 そう。この右腕にはおそらく、何かクリーチャーだったときの本能のようなものが、残っているのである。

 だからあのとき、僕の意思とは関係なく襲い掛かったのだろう。

 なのでこの右腕の本能をどうにかして抑え込まなければ、太山さんのような事故が今後も起きかねない。

 ただ先ほどは意識を集中すれば、右腕の暴走を抑えることができたのも事実だ。

 逆さ吊りのとき勝手に血を吸い始めたけど、止めさせることができたのは大きい。

 故に右腕の暴走は、僕の意思次第でどうにかなる可能性があった。

 しかし暴走したときはどちらも不意にであり、僕の気が逸れた場合に起きている。なのでその部分には、注意する必要があった。

 また一度目は言うことを聞かず、二度目は聞いたことの違いは、やはり血を吸った前か後かの違いかもしれない。

 血に飢えていた方が、より言うことを聞かないような気がした。なのでもしかしたら定期的に、どこかで血を摂取させる必要があるのだろう。

 それはつまり、人を襲わなければいけないことに他ならない。なのでまた一歩、人と関わるのが難しくなってしまった。

 故にどうにかして、人の血以外で右腕の飢えを満たす必要がある。

 ちなみに同類である虫のクリーチャーの死骸から吸わせてみたけど、全く意味がない感じがした。おそらく、同類では血への飢えは満たせない。

 なので現状では、人の血以外で右腕の飢えを満たす方法はなかった。だとすればこれからも、右腕は僕の隙をついて暴走をすることだろう。

 いずれは完璧に制御できるようにする必要があるけど、果たしてそれはいつのことになるのだろうか。

 そんな不安にさいなまれながらも、僕はあることを思う。 

 右腕はもう仕方がないとしても、今後新たなクリーチャーと融合したときには、更に暴走の可能性が増すような気がするんだよな……。

 その可能性は、十分にあり得た。いや、間違いなく起きるだろう。

 だとしたら、僕が強くなる=暴走の可能性が増す。ということに繋がる。

 これでは見た目のことも含めて、余計に人と関わるのが難しくなりそうだった。

 もはや僕は、クリーチャーと共にあるしかないのかもしれない。そう思わずには、いられなかったのである。

 また右腕の暴走が原因で殺害してしまった太山さんについては、割れた床の部分を中心に無理やり床を引っぺがすと、そこに穴を掘ることで埋めておいた。

 右腕はこういうときには役に立つ。明らかに力が強いし、まるで重機のように作業が楽だった。

 加えて太山さんは既にミイラになっており、虫のクリーチャーたちによって解体されている。

 なので埋めることについても、そこまで苦ではなかった。もちろん、精神的にはクルものはあったけど。

 あとは墓石代わりに、瓦礫がれきなどを積み上げていく。完全に自己満足だけど、これをするのとしないのとでは、明確な差があった。

 またこんなときでも、周囲への警戒はおこたらない。

 虫のクリーチャーたちをそれぞれ別の方向に配置しつつ、定期的に確認していた。

 そうして太山さんのお墓も完成したこともあり、この場所でのやることは済んだ。

 なので僕もそろそろ、先へと進むことにする。方向は、少女が逃げたのとは反対にしよう。

 僕はそう判断を下すと、虫のクリーチャーたちを新たに回収して、その先へと進み始めるのだった。

 ◆

 あれから誰とも会うこともなく、廃墟はいきょのような通路を、僕は淡々たんたんと進んでいる。

 また三回ほど見つけたドアを開けて、何かないか探してもみた。しかしそのうちの二つはゴミしかなく、残念な結果に終わっている。
 
 けどあとの一回では、新たに水の入ったペットボトル一本と、コンビニのおにぎりを二つ見つけることができた。

 ちなみにおにぎりの具は、ツナマヨとおかかである。僕はツナマヨおにぎりが好きだったので、ほんの少し嬉しくなった。

 なので休憩がてらに既に開けていた水と、おにぎりを食べて腹を満たす。

 あんな吐くようなことやグロイものを見たのにもかかわらず、僕はおにぎりを二つともペロリと平らげてしまった。

 水も飲み干し、悪いけどゴミは休憩していた部屋に捨てている。

 それと貴重な食料だったけど、あまり多くは持ち運べないので、温存はしなかった。腹が減っていたというのもある。

 また腰に下げたビニール袋には、既に水の入ったペットボトルとバー状のクッキーが、それぞれ二本入っていた。加えてスマートウォッチも、三つある。

 なのでそこまで大きなビニール袋ではないので、この辺りが限界だろう。

 複数ぶら下げるのは、流石に機動力が落ちる気がしたので止めている。音もその分うるさくなるし、多くは身に付けられない。

 加えて左腰にぶら下げることで、右腕とのバランスを取りやすいというのもある。

 右腕の大きさはそこまで元の腕と変わらないけど、重量はたぶん重くなっていた。

 それにいざ戦うときがくれば、右腰にあれば邪魔になるだろう。

 故に今後ビニール袋をもし増やすとすれば、背中にもう一つという感じだろうか。

 しかし結局のところ、ビニール袋では心もとない。なのでこの先ではできれば、物を入れられるリュックサックなどが欲しいところだった。

 そういう経緯がありつつも、僕は三つのドアを開けたことで、60エンも使ってしまったのである。

 ドアを開ける際と、閉める際にそれぞれ10エンずつかかるのだ。

 一応開けた後は、五分ほど鍵がかからないのは確認している。けど部屋を念入りに調べていると、五分などはあっという間に過ぎてしまっていた。

 また毒島の頭部を利用したストッパーのように、何かをドアに挟んでおくという手段もあったのも事実だ。

 けどこれについては、安全を考慮して行わなかったのである。もしドアが半開きであれば、誰かが気がついて入ってくるかもしれない。

 現状誰かに遭遇する=ほぼ敵対なので、僕は安全を選んだのだった。

 もちろんそれでも人が偶然入ってくる可能性もあったけど、そこまで気にしたら何もできない。ある程度の妥協は必要だった。

 そういう訳で現在の所持金は、330エンから270エンに減少している。

 また今のところ他人のスマートウォッチから移動するしか得る方法が無いので、残りのエンは使いどころを見定めていきたい。

 そんな感じで通路を進んでいると、また新たなドアを発見する。けどそのドアには、これまでと大きな違いがあった。

「え?」

 見れば鍵を開けるためのタッチパネルが、緑色に光っていたのである。加えてそこには『20』と表示されていた。

 なんだこれ? つまりこの部屋に入るには、20エン必要ってことだよな? これは、どうするべきだろうか。

 開けるべきか、スルーするべきか。僕は少々悩む。

 これは普通の部屋よりも、特別な部屋ということだろうか? 開けるのに倍の値段が必要だし、普通と違うのは間違いない気がする。

 けど逆に、罠という可能性もあるよな? もしかしたら、新たなクリーチャーがいるかもしれない。

 それに今体にまとわりつかせている虫のクリーチャーは安全だけど、新たなクリーチャーがそうとは限らなかった。

 むしろ別の種類なら、普通に襲ってくる可能性が高いだろう。襲われなくなるには、やはり一度【吸収融合】をする必要がある気がした。

 なので何かしらの危険があることを前提に、僕はどうするべきかを考える。

 でもこの先、危険は当然あるよな? であれば新たなクリーチャーがいるなら、【吸収融合】でパワーアップした方が良いかもしれない。

 虎穴に入らずんば虎子を得ずとも言うし、ここは覚悟を決めて、開けてみる方が得策だろう。

 ただあまりにヤバそうだったら、入らずに逃げることも考えることにする。もしものときは、虫のクリーチャーたちをおとりにしよう。

 それと一応ドアに耳を当てて、中の音を聞いてみる。けど内部の音は、一切聞こえなかった。

 ドアを開ける際には、毎回このようにして確かめていたのである。もしかしたら、中に人がいるかもしれなかったからだ。

 けどもし防音性が高くて単純に聞こえないだけだったら、そのときはもう仕方がない。

 またノックして声をかけようかとも迷ったけど、逆に出待ちされる可能性を考慮してやめておいた。開けた瞬間に襲われたら、ひとたまりもない。

 とりあえずこれで、もうあとはドアを開けるだけだった。

 にしてもここまでの間に、僕もある程度は覚悟ができるようになってきたみたいだ。

 少女に殺されそうになったことや、太山さんの件が関係しているのは間違いなかった。

 これまでの日常を考えればありえないことだけど、今はありがたいと思って、これを受け入れることにしよう。

 そう思いつつも軽く深呼吸をしたのち、僕は緊張しながらもタッチパネルから鍵を開錠して、ゆっくりとドアを開いた。

 さて、いったい何が出るだろうか。

 僕はドアの隙間から、中の様子をうかがう。するとそこには、驚くべき存在がいたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

処理中です...