キメラフォックス ~デスゲームでクリーチャーに異能【吸収融合】を使い、人外となっていく狐顔~

乃神レンガ

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第一章

011 ドアを開けた先で

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 そ、そういうことだったのか……。

 中の様子を確認したことで、僕はなぜドアのパネルが緑色に光っており、倍の値段だったのかの理由を知る。

「お、お前は何者だ! この部屋のドアを開けた理由を言え!」
「こ、来ないでください!」

 そう。部屋の中には、一組の男女がいたのだ。つまりあの緑色に光っていたのは、誰かが入っていたことを、暗に示していたのかもしれない。そのように理解したのである。

 また僕は幸い顔の一部だけ出している状態なので、まだ右腕を見られてはいない。であればまだ、対話は可能かもしれなかった。

「落ち着いてください。僕に敵対心はないです。この部屋に入ろうとしたのは、パネルが緑色に光っていたからで、その意味を知らなかったからなんです」

 嘘は言っていない。本当に、緑色に光っていた意味を知らなかったのだ。

 一応人がいる可能性も考慮していたけど、実際に遭遇すると少なからず、緊張と警戒をしてしまう。

 当然相手もその心情は同様であり、男は警戒心を解くことはせずに、僕に対してこう言ってきた。

「名前と異能を言え! それからここを立ち去って、俺たちに関わるな!」

 関わるなと言いつつも、僕の名前と異能を知りたいらしい。僕としても、この男と関わるだけ損だと思った。一方的で、対話の意思をあまり感じられない。

 もしかして僕と会うまでに、何かあったのだろうか? とても人間不信のように思える。

 それ以外だと、女性のことを守りたいからだろう。それが結果として、このような高圧的な雰囲気に繋がっているのかもしれない。

 ちなみに男は二十代半ばで黒髪のツンツン頭をしている。加えて生意気そうな子供が、そのまま大人になったような雰囲気だった。

 また服装はどこにでもいそうなラフなかっこうであり、赤いTシャツと茶色の半ズボンをはいている。

 そして女性の方は三十代前半に見えるけど、顔の化粧が濃い感じがした。もしかしたら、もっと年上かもしれない。

 あとは茶色の長い髪と場違いな緑色のドレスを着ている。当然行ったことはないけど、どこか水商売にいそうな雰囲気がした。

 なので雰囲気も合わせて、それなりの美人に見える。ただ僕としては、少々苦手なタイプだった。

 そんなことを思いつつ、僕は男の言葉に返事をする。

「えっと。名前と異能は言えませんが、ここから去ることにします。お騒がせいたしました」

 しかし僕がそう言って、ドアの隙間から離れたときだった。

「あっ……」

 体にまとわりつかせていた虫のクリーチャーたちが、一斉に離れて部屋の中に突撃していったのである。

「うぁわああ!!」
「きゃぁあああ!!」

 そしてそれと同時に、部屋の中にいた男と女性の悲鳴が響き渡るのだった。

 一瞬のできごとに、僕は思わず硬直してしまう。けどすぐに気を取り戻して、今起きた状況をを理解する。

 不味い不味い不味い。

 完全に頭から抜けていたけど、虫のクリーチャーたちは人の臭いにも反応するんだった!

 部屋の中を意識するあまり、そのことを完全に忘れていたのである。

 あまりにも虫のクリーチャーたちを身に着けることに対して、既に当たり前になっていたことへの弊害へいがいかもしれない。

 なので僕はあせりながらも閉まりそうなドアを再び開けると、部屋の中を確認した。

「くたばれ害虫がぁ! 厚美あつみに近づくんじゃねえ!」
「きゃぁ~! 助けて~、はじめさ~ん!」

 見れば一と呼ばれた青年が、みずからの体を鉄に変えて、虫のクリーチャーたちを踏みつぶしている。

 加えてその後ろでは、厚美と呼ばれた女性がびたような声を上げていた。

 うん。なんだか、大丈夫そうだな。というかあの人、体を鉄に変えられる異能を持っているのか。

 当初もし鉄の棒と融合ができていたら、あんな風になっていたのだろうか?

 まるで鉄人間のような姿に、僕はそんなことを思う。

 いやそれよりも、今のうちに撤退しよう。虫のクリーチャーたちの攻撃は、一という男には効いていない。倒すのも時間の問題だろう。

 それに犯人は間違いなく、僕だと思われたはずだ。先ほどの高圧的な雰囲気からして、襲ってくるかもしれない。逃げるなら急いだ方がいいだろう。

 見れば虫のクリーチャーたちは、舌やアゴで攻撃を加えているけど、その鉄の肉体を貫くには至っていない。

 なので当然虫のクリーチャーを【吸収融合】してできた僕の右腕では、あの一という男には勝てないだろう。たぶん普通に殴られるだけで、命の危険があると思われた。

 それに加えてしくも僕は、自分を罠にはめた平和島と同じことを、他人にしてしまったのである。

 これで、平和島のことを悪く言えなくなったな。あとは最悪なことに、また僕を敵視する者が増えてしまった。

 全体的な差し引きだと、明らかに悪い方向へと進んでいるだろう。

 あの厚美という女性の異能も不明だし、戦うのは難しい。それに不都合という理由だけで人を殺す覚悟は、まだできてはいなかった。

 なので僕は虫のクリーチャーたちが戦っている間に、この場を去ることにしたのである。

「あっ! 待ちやがれ! てめぇふざけんな!」
「一さん! あいつ逃げるわよ! 殺してきて! 殺してきたら、あとでイイコトしてあげるから! ね?」
「ごくっ……お、おう! わかった! ぶっ殺してきてやる!」
「きゃぁ! かっこいい!

 そんな会話が聞こえてきたときには、既に僕は駆けていた。

 ヤバイ。特に厚美というあの女だ。ためらいもなく、僕を殺すように命じていた。一という男も甘い言葉に速攻で応じるくらいには、頭がおかしい。

 とにかく追いつかれたら終わる。今は、逃げることだけを考えよう。

「――!!」

 すると背後から、何か声が聞こえてきた。軽く振り向くと、一という男がこちらへ走ってきている。

 虫のクリーチャーたちを、もう全て倒してきたのだろう。厚美という女の姿は見えないので、そちらは部屋に残っているのかもしれない。

 僕はあの少女のとき以上に、身の危険を感じていた。理由は確実に一という男が、僕のことを殺す気でいるからだ。

 しかし何度か見ているうちに、一という男と僕との距離が、どんどん離れていった。どうやらあの鉄の体では、走る速度が遅くなるらしい。

 相手もそれを理解していたからか、異能を解除して素の状態で追いかけてきていた。

 けれども既に距離はかなり離れていたので、僕は頻繁に道を曲がることで、最終的には逃げ切ることに成功する。

 はぁ、はぁ、はぁ、本当に危なかった。追いつかれていたら、マジで殺されていたかもしれない。

 僕はペットボトルから水を飲んで、息を整える。

 それと形はどうあれ、初めて見た複数人で行動している者たちだった。本来このデスゲームでは、ああして仲間を見つけるのが重要なのかもしれない。

 少なくとも相手が二人いるというだけで、単独の僕は戦うのを不味いと考えていた。

 異能がある以上、見た目で強いかどうかは分からない。故に人数が多いのは、それだけで脅威になる。

 これは本当に、不味いかもしれない。たぶん今後単独の人は、このまま単独だと死亡すると恐れて、徒党を組むことだろう。

 そして強い人たちなどがそれを率いて、規模を拡大していく。デスゲーム系の漫画などでは、よくある話だった。

 けれどもそんな中、僕は誰かと組むのが難しい状況だ。時間が経てば経つほど、不利になっていくことは明らかだろう。

 特にこのデスゲームの脱出方法が、もしも一定人数になるまで生き残るとかだった場合、まずは単独の者から消されていく気がする。

 単独で生き残る者は、それこそチート級の異能を持つ者だろう。

 いずれ仲間内で殺し合うことになったとしても、先にそうした者から狙われる可能性が高いと思った。

 なので僕も虫のクリーチャーたちを使うという手段はあるけど、別に命令ができるわけではない。虫のクリーチャーたちは僕にとって、敵対しない第三勢力的な感じだ。

 でもそれを上手く活用するしか、現状僕に生き残る方法はなさそうである。少なくとも何か大きな変化が無ければ、方向転換は難しいだろう。

 これはもう本格的に、他人とは相容れない関係になるかもしれない。

 そうして再び歩き始め、道中新たに見つけた虫のクリーチャーたちを回収していく。

 するとしばらくして、僕は初めて広い場所に出ることができた。

 ここは、凄いな……。それにあれは、まさか……。

 見渡すとそこは、巨大な吹き抜けのホールのようになっている。部屋自体の広さも、サッカーコート四つ分くらいには広大だった。

 また中央付近の床は大きく陥没かんぼつしているのか、そこに水が溜まっていて大きな池のようになっている。

 加えてその池の中央は無事であり、陸地のようになっていた。更に高い天井は崩れたのか多くが無くなっており、外の光が差し込んでいる。どうやら外は、まだ日中のようだった。

 そして何より孤島になっている陸地には、なぜか不自然にも綺麗な自動販売機が置かれていたのである。天井からの光りが、自動販売機を照らしていた。

 まるで荒廃した世界を題材にした一枚絵のような、神秘的な光景にも見える。

 周囲にはこれまで通り廃材や、壊れた椅子、机などが散乱しており、廃墟然としていることには変わりない。

 どう考えてもアレは、何かあるよな。逆に何もない方がおかしいだろう。

 僕は目の前の光景を目の当たりにして、そう思わずにはいられなかった。
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