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第十二章
405 ハプンとサマンサとの再会
しおりを挟むハプンとサマンサといえば、過去に盗賊に捕まっていたところを、俺が助けた経緯がある。
確か二人には、ハンスという息子がいたはずだ。助けたのにもかかわらず、なぜか俺に突っかかってきた人物である。
またハプンは俺に息子のハンスの面倒を見てほしいとか、そんなことを言ってきた記憶があった。
更にサマンサに至っては、お礼と称して迫ってきたのである。当然その時は身の危険を感じて、追い返していた。
そして関わることはデメリットしかないと感じて、こっそり村を抜け出したのである。
もはやそれ以降出会うことは無いと思っていたが、まさかこんなところで遭遇してしまうとは……。
正直なところあの家族には、あまり関わりたくはない。このまま断った方がいいかもしれない。
そう思ったのだが、不意に超直感が反応を示す。どうやら、会った方がいいらしい。
ふむ。俺としては気が進まないが、これまで超直感になった直感のスキルには、助けられてきた。
ならここは、素直に超直感のスキルを信じようと思う。
俺はそう判断を下すと、目の前にいる冒険者風の男に、返事をする。
「わかった。連れて行ってくれ」
「助かる。ではこっちだ」
そうして俺は、ハプンとサマンサがいる馬車へと移動するのだった。
ちなみにグレイウルフたちは、警戒されても面倒なので送還している。
そうして辿り着くと、馬車は行商人用という感じではなく、要人を乗せるような扉付きの物だった。
確か二人は行商人だったはずだが、今は違う用件で乗っていたのだろうか?
俺がそう思っていると、冒険者風の男が扉を叩いて声をかける。
「ハプンさん、ジンという人物を連れてきました」
するとその途端、扉が勢いよく開く。
「本当か! おおっ! そこにいるのは確かにジンさんではないですか! グレイウルフを複数匹連れた銀髪の美少年と聞いて、もしやと思ったのです! ささ、立ち話もなんですし、どうぞ馬車の中へ!」
「……ああ、わかった」
「にゃぁん!」
ハプンは少し老けていたが、その雰囲気は変わってはいなかった。細身で優しそうな感じの男性である。今は四十代くらいだろうか。
とりあえず悪意は感じないので、俺はレフと共に馬車に乗ることにした。
「あら! 本当にジン君じゃない! 懐かしいわ。私よ。サマンサよ。覚えているかしら?」
「まあ、覚えてはいる」
俺が馬車に乗り込むと、当然そこにはサマンサがいる。
おそらく四十代に近いと思われるが、三十代前半に見えるような気がした。
肩まで伸ばした茶色い髪と、大きな胸を際立たせるような、谷間の見える赤いドレスを着ている。以前よりも、羽振りがよさそうに見えた。
それを示すかのように、羽のついた帽子と、紫色の扇子のような物を持っている。
思えばハプンも貴族とまではいかないが、仕立てのよさそうな商人風の服を着ていた。
俺と別れてからの五年~六年の間に、商人として成功したのかもしれない。
そうしてサマンサの対面の席を勧められたので、俺はそこに座り、レフは俺の膝の上に乗った。
対してハプンは、サマンサの横に腰かける。扉も閉められ、馬車の中は三人と一匹になった。
あれ? オークを召喚した者がいると思ったのだが……どういうことだ?
俺はそんなことを、ふと思ってしまう。しかしそれも束の間、サマンサが話しかけてきた。
「可愛らしい猫ちゃんね。その子もジン君が召喚したのかしら?」
「……まあ、そんなところだ」
「にゃぁん!」
そういえば、サマンサを含めたあのとき助けた者たちは、俺がカードからモンスターを召喚できることを知っていたな。
村に着くまでに何度もカードから召喚していれば、見られてしまうのも仕方がない。何より、そういう力を持っていることも、確か話していたはずだ。
「ほう。その猫もそうなのですか。あのときは大変驚きましたが、いやはやジンさんもお人が悪い。ジンジフレ様のご加護について、隠しておられたなんて」
「ちょっとあなた」
「うっ、すまない」
「なに?」
今確かに、ジンジフレって言ったよな? それを隠していた? 何だか嫌な予感がする。
そう思って何となく、俺はハプンとサマンサとの繋がりを意識してみた。
するとその嫌な予感は当たっており、なんと二人が俺の信者であることが判明する。確かにその繋がりが感じられたのだ。
元アンデットの大陸では信者が多すぎるため、そうした繋がりの自動的な受信を解除していた。
そのためハプンとサマンサとが信者であることに、今更ながら気がついたのである。
マジか。どういう訳か、二人は俺の信者になっていたようだな。
この大陸で信仰されるようなことは、した覚えが無いのだが……。
いったいどの経路から、信仰するようになったのだろうか? もしかして、またケモノスキー一派だろうか?
しかしそんなことを思っていると、それについて話を聞くことができた。
「別に、隠していたことを責めたいわけではないのよ。あれだけのお力ですものね。けどあの『狼の友』のパーティとして有名になったエーゲルとランジは、少し目立ちすぎたのよ。
隠していたようだけど、息子のハンスがカードを使っていることに気がついたの」
どうやらカードを渡したエーゲルたちが活躍したことで、息子のハンスがそれに気がついたみたいだ。しかしそれがなぜ、信仰へと繋がったのだろうか?
「それが信仰と、どう繋がるんだ?」
俺が思わずそう訊くと、ハプンが待ってましたとばかりに、嬉しそうに語り出す。
「息子のハンスは、選ばれたんだ。その強い想いが通じて、あのジンジフレ様にカードを授けられたのだよ! それもなんと、Bランクのモンスターだ! すごいだろう?
ジンさんもジンジフレ様に選ばれた一人で、なぜか複数のカードを扱えるみたいだが、悪いけど質では息子のハンスの方が、圧倒的に上だろう」
は? 別にハンスなんて選んではいないが? というか、ついさっきまで存在を忘れていたほどだ。
正直なところ、俺自身も信者がサーヴァントカードを手にする条件を、あまりよく分かってはいない。
それでもまさか、ハンスがBランクのサーヴァントカードを当てるとは……。
これは確かに、知らなければ面倒なことになっていただろうな。超直感には感謝しよう。
それにハンスの性格を思い出すと、確実に増長しているのは間違いない。
加えてハプンの言葉も結構俺に失礼な気がするが、今は気にしないことにした。
「あなた、失礼でしょう。ごめんなさいね。ハンスのおかげでここ数年大成功したことで、気が大きくなっているの。
それに私たちもジンジフレ様に選ばれて、どちらもCランクのサーヴァントカードを授けてもらったのよ。外で戦っていたハイオークと、オークソーサラーがそれよ」
「……なるほど」
どうやらハプン自身もそれによって、増長しているらしい。
「確かに口が過ぎた。ジンさん申し訳ない。ジンさんへの感謝の気持ちは、忘れてはいないんだ。むしろジンさんがいたからこそ、我々は生き延び、そして結果的に力と財力を得ることに繋がったんだ。
ジンさんが望むのなら、できる限りの願いを叶えよう。これでも私は、成功した商人の一人なんだよ」
ハプンはそう言って、俺に笑みを浮かべる。以前と比べて、とても自信に満ちた表情だった。
そんな成功した商人にしては、護衛がいささか弱い気がする。数が多いだけの盗賊と、拮抗する程度の護衛だ。
しかしCランクのサーヴァントを二体召喚できるのであれば、逆にこの程度の護衛でも構わなかったのかもしれない。
護衛は形だけであり、何かあれば自分たちでどうにかするつもりだったのだろう。
実際二体のオークはよく訓練されていたし、よほどのことがなければ、倒されることはないと思われる。
そうした部分からも、二人の増長した感じが見て取れた。
正直あまり関わりたくはないが、ジンジフレが関係している以上、流石に無視はできない。
特にハンスについては、直接この目で確かめる必要があるだろう。下手に繋がりから干渉して、その結果余計に増長したら面倒だ。
信者の中には、干渉したことに気づく者もいるらしい。
もちろん神罰を与えたり、サーヴァントカードの抹消もできる。だが気に食わないというだけでは、それをする気はない。
明確に悪事を働いていたり、ジンジフレ教にとって障害にならなければ、基本的には放置するつもりだ。俺はそこまで、理不尽な神ではない。
なので俺はここで、ハプンにこのようなお願いをすることにした。
「なら、ハンスに会わせてくれ。今どのような活動をしているのか、俺としても気になるからな」
「おおっ! それはいい! ハンスと是非会ってください! ハンスはあれから成長しているので、きっとジンさんも驚くことでしょう!」
息子を直接見せて自慢したいのか、ハプンは俺のお願いにノリノリのようである。これなら、問題なく会うことができるだろう。
しかしおそらく、これから面倒なことは避けられない気がする。
あのときのハンスを思えば、その可能性は非常に高いだろう。
そんな不安を覚えながら、俺は二人との会話を続けるのであった。
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