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第十三章
444 ジェイクとの話し合い ①
しおりを挟む※432話あたりからゴートレール辺境伯を、間違ってシルダート辺境伯と明記していました。正しくはゴートレール辺境伯です。シルダートは街の名前でした。該当箇所は既に修正済みです。
2026/1/10
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それから俺はジェイクから、色々と話を聞くことができた。
まず簡単な雑談から始まり、ジェイクの近況を聞いた感じだ。
どうやらジェイクは現在結婚しており、子供もいるらしい。相手は俺が店に入った時に声をかけてきた女性のようだ。
ちなみに子供は、近くの託児所に預けているとのこと。この街では共働きも多く、意外と託児所も多いようだ。
そしてこの幸運の蝶の店だが、元々冒険者を引退したら飲食店を開こうと思っていたらしく、知人の老夫婦から店を売ってもらうことが決まっていたらしい。
なおその老夫婦は、店を売った金で別の場所に住んでいるようだ。
また俺がこの大陸を去った後に、俺の無罪が証明されたらしい。なので気にせず街を歩いても問題ないようだ。
そうか。もしかしたら犯罪者として、街で指名手配されていた可能性もあったのか。全く気にしていなかった。
もしそうだった場合、とても面倒なことになっていただろう。
俺があのとき消えてから、タヌゥカの女二人や、タヌゥカをパーティに入れていた者たちの証言があったことで、俺は無罪になったようだ。
ちなみに仲間を殺されたジェイクたちと、他の巻き込まれた者たちには、そいつらからの賠償金が支払われたようである。
タヌゥカが下手人だったことと、ある意味その冒険者たちも被害者だったことで、牢屋にぶち込まれることはなかったようだ。
また俺の無罪をしっかりと主張したことで、仲間を失い一番被害が大きかったジェイクとプリミナが、その冒険者に譲歩したというのもあった。
その中でタヌゥカをパーティに入れた冒険者の方は、賠償金を払った後、自責の念から冒険者を引退したようだ。
加えて支払いのために道具や装備、貯金までも失ったらしい。その後どうなったかは、不明のようだ。
もしかしたら別の場所で、冒険者として再び活動している可能性もあるかもしれない。
まあそれについては、どうでもいいか。
またタヌゥカの女二人は、より多くの賠償金が命じられた。タヌゥカとの関係性が深く、正式なタヌゥカの仲間だと判断されたからだ。
しかし当然その賠償金を払えずに、女二人は奴隷落ちしたらしい。
加えて奴隷に落ちてもなお、借金が残っているようだ。奴隷落ちだけでは、借金を支払いきれなかったとのこと。
なので街が二人を買い取って、安い給料で働かせることになったようだ。その給料の大部分も、借金の支払いに当てられる。
借金の量と給料の少なさから、二人が解放されるのはもしかしたら、かなり後になるかもしれない。
ちなみにどこで働いているかは、知らない方がいいと言われた。たぶん見た目が若い俺が聞くのは、憚られる場所なのだろう。
もしかして、通常よりも過酷な娼館などだろうか? まあ通常も何も、俺は娼館に行ったことがないので知らないが。
それと確か片方は半ばタヌゥカに騙されていた感じだったはずなので、少々気の毒である。
そしてもう片方は、タヌゥカによって奴隷から解放された過去があったはずだ。それが再び奴隷に落されたのは、ある意味哀れかもしれない。
まあそんなことは、もうどうでもいいけどな。
五年以上経過しているので、その二人もどこかで今も頑張っているか、何らかの原因で既にこの世からいなくなっているかもしれない。
なので俺がそいつらを気にしても、仕方がないことだった。
そうしてその後ジェイクとプリミナは、賠償金と死亡したゲゾルグとサンザの遺産を引き継いだらしい。
幸運の蝶は全員天涯孤独だったので、誰か死んだら、仲間に財産を引き継がせるようにしていたとのこと。
だがこれには、少々語弊があったみたいだ。
それは幸運の蝶の店を開いて、少し経ったときのことである。店にとある人物がやってきたという。
その人物はなんと、ゴートレール辺境伯本人だったらしい。
ゴートレール辺境伯はお忍びでやって来たらしく、ジェイクとプリミナに対して、あることを話したようだ。
そのあることとは、ゲゾルグが実はゴートレール辺境伯の庶子だったということである。
ゲゾルグはゴートレール辺境伯の最初の子であり、男児だった。庶子なので家督争いからは基本的に除外されるが、それも絶対では無い。
なのでその命が脅かされると判断したゴートレール辺境伯は、ゲゾルグを身寄りのない子供として、孤児院に預けたようだった。
ちなみにゲゾルグの母親は天涯孤独のメイドであり、また出産時に死亡してしまったらしい。
そのことを今更話されて、ジェイクとプリミナは憤りをあらわにしたようだ。
だがゴートレール辺境伯もそれは承知の上だったらしく、頭を下げて謝罪したらしい。貴族が平民に頭を下げて謝罪するのは、相当なことである。
なのでお忍びとはいえ貴族が頭を下げたその誠意に対し、ジェイクとプリミナは怒りをなんとか収めたらしい。
そしてゴートレール辺境伯は、なぜ今更やって来たのかを話したという。
その内容は、家督を正室の子に譲る時期が正式に決まったことと、ゲゾルグが死亡したことで、ある意味接触することが可能になったという皮肉めいたものだった。
ゴートレール辺境伯は、これまでこっそりゲゾルグのことを支援してきたらしい。
確かにゲゾルグのいた孤児院は裕福であり、ゲゾルグや同期の者たちが旅立つ際には、道具や装備まで与えられていた。
また文字の読み書きや算術は当然として、剣術や冒険者のあれこれを教えてくれる教師まで派遣されていたのだ。
そして冒険者になってからも条件の良い依頼や、他の者が知り得ない情報なども、こっそりゲゾルグに流していたのである。
ゴートレール辺境伯はそうして可能な限り、ゲゾルグのことを支援していたらしい。
だが当然冒険者として、死ぬ可能性についても考えていたようだ。しかしゲゾルグの死因は、タヌゥカの身勝手な癇癪によるものである。
これにはゴートレール辺境伯も精神的な負担が大きく、結果として正室の子に家督を譲ることにしたらしい。
どうやらゴートレール辺境伯は、ゲゾルグを孤児院へと手放したが、それでもかなりの愛情を持っていたようだ。
聞けばゲゾルグの母親であるメイドは、ゴートレール辺境伯の若かりし頃に色々あって購入した元奴隷であり、ある意味幼馴染だったらしい。
また正室とは政略結婚であり、真に愛していたのはそのメイドなのだと、ジェイクはゴートレール辺境伯本人から聞いたようだった。
ゲゾルグを身寄りのない子供として孤児院に預けるのは、ゴートレール辺境伯としてもかなりの葛藤があったのかもしれない。
故に時機を見て、こうしてゲゾルグの仲間が経営している店に足を運んだのだろう。
それからゴートレール辺境伯は、度々この店のことを助けてくれたらしい。
ハンスがやってきたときも、影ながら助けてくれたようだ。
なるほど。ハンスが心の中でゴートレール辺境伯が邪魔してきた云々には、このような理由があったのか。
ジェイクの話しを聞いて、色々と繋がった瞬間である。
そしてそのゴートレール辺境伯だが、次の国境門の開閉を最後に、家督を譲るらしい。
ちなみに国境門は既に開く兆しが現れているので、近いうちにその門が開くようだ。
とりあえず国境門については、他の面々と再会してから改めて考えよう。どう動くにしても、色々と情報を集める必要もあるしな。
そして最後に俺が聞いたのは、とても気になっていたプリミナのことについてだった。
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