526 / 535
第十三章
455 ブラックヴァイパー ⑦
しおりを挟む「それじゃあ、早速行くとするか!」
「ん? いきなり行っても大丈夫なのか?」
ポッチは自信満々にそう言うが、こういう時は先触れなどを出すのではないだろうか?
俺はそう思ったのだが、それは杞憂に終わる。
「ああ、元々今日行く予定だったからな! 俺様の配下の実力者三人が、闇闘技場に出場する予定なんだぜ! その打ち合わせのために、午前中から会う必要があったんだ。だから気にしなくても大丈夫だぜ!」
「なるほど」
どうやら、闇闘技場には最初から行く予定があったみたいだ。それなら、気にしなくても良さそうである。
そうしたこともあり俺はポッチに連れられて、闇闘技場へと行くことになった。
今回は大人数を連れて行くことはなく、俺とレフ、後はポッチと闇闘技場に参加する三人だけという感じだ。
参加する三人は荒事部門の中でも実力者らしく、冒険者ランクにたとえるとCランクに届いているらしい。
大多数の冒険者がDランクくらいで行き詰るので、実力だけとはいえCランクに届いているのは、実はすごいことなのである。
ジンジフレ大陸で勇者陣営と戦った俺からしたら、Cランクは吐いて捨てるほど出会っているので、少々感覚が麻痺しているだけだ。
そうしてポッチに案内されて、闇闘技場へと俺たちはやってきた。
場所は一見、スラム街には似つかわしくない少し大きめの屋敷だが、肝心の闇闘技場は地下にあるらしい。
出入り口でポッチは顔パスで通してもらうと、その奥にいた者がポッチの事を待っていたらしく、案内を申し出てくれた。
「ポッチ様いらっしゃいませ。吸精のヴィレッタ様がお待ちです」
「おう。案内してくれや」
「かしこまりました」
ポッチはそれに頷いて、案内の男についていく。俺もそれに続いた。
「吸精のヴィレッタは強い男が好きだ。だからモブメッツさんも、気に入ってもらえるはずだぜ。
それとたぶん握手を求められたときに、生魔ドレインという希少なスキルを少し発動してくるかもしれないが、我慢してくれ。それで色々と判断しているらしい」
「わかった」
ふむ。吸精のヴィレッタとやらは、生魔ドレインを使えるのか。あれはマナドレインとエナジードレインの複合スキルのようなもので、高ランクモンスターが所持していることがある。
俺の配下の中だと、ボーンドラゴンやゲシュタルトズンプフが所持しているスキルだ。
だとすればこれから会う吸精のヴィレッタには、少し警戒をしておこう。
そうしてとある一室の前までやってくると、案内の者が先にドアを叩く。
ちなみにドアの横には屈強な男がそれぞれ配置されているが、微動だにしない。かなり訓練されていることが窺える。
「ヴィレッタ様。ポッチ様とそのお連れの方たちを連れてまいりました」
「入りなさい」
すると案内の者の声に反応して、部屋の中からそんな女性の声が聞こえてきた。
「どうぞお進みください」
「おう」
そして案内の者がドアを開くと、自身は入らずに俺たちに入るように促す。
ポッチは軽く返事をすると、部屋へと足を踏み入れた。俺たちもそれに続いて、部屋へと入っていく。
「ポッチ、よく来たわね」
そう言ってポッチに声をかけたのは、部屋の中で高級そうなソファに座る人物だった。
まず目につくのは、真っ赤なドレス。胸元が開いており、その豊かさが窺える。
次に目立つのは、その腰まで伸びた白髪だろう。手入れが行き届いているのか、サラサラな感じだ。
また口元には赤い扇子のようなものが広げられており、全体的に高貴な雰囲気が醸し出されている。
そして最後にこちらを観察する眼光も鋭く、意志の強そうな赤い瞳が、俺たち一人ずつへと順番に向けられていた。
この人物こそが、吸精のヴィレッタなのだろう。
するとポッチはヴィレッタに対して、このように返事をした。
「相変わらずババアのくせに、派手な格好だぜ!」
「ふんっ、ポッチこそ、その礼儀の知らない口調は変わらないわね」
そう。ヴィレッタは高貴な雰囲気と美しさを持つが、実のところ老女なのである。
白髪も年ゆえの色合いであり、よく見れば化粧で隠しているが、目元にはシワが見えていた。
何よりも手の衰えの様子は隠しきれていないので、実年齢はかなり高そうである。少なくとも、六十代は越えているだろう。
しかしそれでもスタイルを含めて、客観的にはとても容姿に優れている。かなりの美魔女だった。昔は本当に、美女だったのだろう。
また二人はそんな言葉を言い合っているが、険悪な雰囲気はない。むしろ軽い挨拶という感じだ。
おそらく、いつも似たようなやり取りをしているのだろう。
「それで、参加する三人はともかく、そこのパッとしないのは誰だい? 私に紹介しておくれよ」
するとヴィレッタはそう言って、俺に視線を向けてくる。それに対して、ポッチが慣れた感じで紹介し始めた。
「おう。この方はモブメッツさんといって、一時的に俺様のところに加わってくれた人だ。
何よりその実力は俺様以上で、昨日もゴブリオックの強者を二名倒している。そしてその横にいるのが、モブメッツさんの恋犬のフーレちゃんだ!」
「にゃわん!」
「それはすごいけど、あんたと同類かい……」
ポッチの紹介に、ヴィレッタは俺に対して残念な視線を向けてくる。それは酷い勘違いなので、俺は即座に否定しておく。
「フーレは俺の大切な相棒だが、そんな性的な関係ではない。ポッチが勝手に言っているだけだ」
「そうかい。なら、少し安心したよ」
「ははっ、モブメッツさんは少し照れているだけだぜ! 俺様の同志に間違いねえ!」
「にゃわわんっ!」
「ポッチとレ、フーレは少し黙ってくれ……」
そう言って否定したが、ポッチはそれを照れ隠しだと思ったようだ。またレフもなぜかそれに追従したので、俺はそのことにため息を吐く。
だがそれを見ていたこともあってか、ヴィレッタはポッチの勘違いだと認めてくれたみたいだ。
「まあ私としては、どちらでも構わない。それで、そのモブメッツとやらを連れてきて、何をしたいんだい? 端的に言っておくれ」
「おう。モブメッツさんは、ボスに会いたいみたいなんだ。そのために幹部からの推薦が必要だから、ヴィレッタから推薦をもらいに来たわけだ。
もちろん、無条件じゃねえぜ。今日ちょうど行われる目玉試合があるだろ? その試合に出るやつとモブメッツさんが戦って、二連勝したら推薦をくれよ」
ポッチは事前にその内容を考えていたらしく、スラスラと口にした。
ちなみに二連勝とは、たぶんその試合で戦う予定だった存在同士を戦わせずに、代わりにそれぞれを俺と連続で戦わせるということだろう。
「なるほど。面白そうね。私は強い男が好きだし、分かりやすくて闇闘技場としても盛り上がりそうだわ。
けど本当にいいのかしら? そこのモブメッツとやらがポッチよりも強くても、二連勝は難しいでしょう。なにより、死ぬかもしれないわよ?」
ヴィレッタはそう言うと、その赤く鋭い瞳を向けてくる。その視線を受けて、俺は死ぬ可能性への覚悟を問われているような気がした。
当然俺としても、その戦いに臨むのは構わない。むしろ楽しそうだ。
故に俺はヴィレッタを見つめ返して、こう口にした。
「構わない。俺も強い相手と戦うのは本望だ。連戦でも、余裕で二勝を上げてみせよう」
「ふふ、言うじゃない。そういう強気な男も嫌いじゃないわ。いいでしょう。二連勝できたら、ブラックヴァイパー闘技部門の幹部である、この吸魔のヴィレッタが推薦してあげる。期待しているわ」
そう言ってヴィレッタが俺に近づいてくると、手を差し出す。おそらくポッチの言っていた、生魔ドレインを兼ねた握手だろう。
おそらく素の状態だと上手くドレインされない可能性があるので、ドレインされたら逆にこちらからも送ってみるか。
俺はそう思いながら、ヴィレッタと握手した。すると事前に言われていた通り、何かが極僅かに吸われる感覚がした。なのでこちらからも吸いやすいように、それを送ってみる。
しかしその結果として、思わぬ出来事が起きてしまった。
「ひぃいいんっ!?」
なんとヴィレッタがそう叫び声を上げたかと思えば、膝から崩れ落ちてしまったのである。更にその表情は恍惚としており、軽く意識が飛んでいるみたいだった。
これは間違いなく、やってしまったかもしれない。
あまりの出来事に、一瞬だけ部屋には静寂が走る。
そして俺は何となく、これまでの転移者たちの言動をなぜか思い出していた。故に、思わずこう口にしてしまう。
「もしかして俺、なにかやっちゃいました?」
その言葉と同時に、部屋の背景と化していたボディガード二人が動き出し、また部屋の外に待機していた者たちが勢いよく入り込んで来るのであった。
57
あなたにおすすめの小説
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます
内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」
――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。
カクヨムにて先行連載中です!
(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。
残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。
一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。
そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。
やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。
実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~
仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる