Reincarnation 〜TOKYO輪廻〜

心符

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8. 信頼と言う絆

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~千代田区 京極ビル~

22:00

「滝沢博士、私はこれで帰ります」

「お疲れ様。私は教授の帰りを待つよ。明日の合同会議は、また荒れそうだしね」

「想定外の展開ばかりで、私達って参加する意味あるのかしら?って、凹むわ」

「今はまだ、この研究は効果を出せなくても、今回得ているデータは参考になってるし、いつかは犯罪を未然に防げる世の中が来るよ」

「心理学の世界は前向きね~。精神医学は、壁だらけでまだまだだわ。じゃおやすみなさい」

安斎がビルから出るのを確認し、滝沢は京極専用エレベーターに乗り込んだ。

(特に違いはない…か)

内部を隅から隅まで見渡すが、違いは最上階にある京極の研究フロアボタンが多いだけであり、生体認証しない限り入ることはできない。

念の為、踏み台を持ち込み天井も調べたが、変わりはない。

落胆した瞬間、うっかり足を踏み外して思い切りコケた。

「あいたたた。全く何をやってるんだか」

何気なくボタンパネルを見上げた。

(あれ?あそこ…)

光の反射具合の違いで、下から見ると地下1階の駐車場の下が、僅かにくすんで見えた。

近づいてよく見ると確かに違っていた。
何もない部分を指で押してみる。

「そんなわけないか」 

と思った時。
エレベーターが下降を始めた。

表示が地下1階になっても、止まらない。

間もなく止まり、ドアが開いた。
(地下3階?なんだここは?)

ほとんど真っ暗な空間に、足を踏み入れるとライトがついた。

(なるほどな)

そのまま突き当たりのドアまで行く。
壁に番号も何も書かれていないボタンが沢山並んでいた。

とりあえず、適当にバラバラと押して見る。
と、突然ドアが開き、一歩踏み出すとそのフロア全体のライトがついた。

「な…なんだこれは⁉️」

沢山の壁で仕切られた檻があり、中には人間が閉じ込められていた。

一番近い檻の者が、滝沢に気づいた瞬間、走り寄り、檻から手を伸ばして来た。

「うわぁぁ❗️」

その凶暴そうな目に、必死でドアを閉めようと適当にボタンを押しまくる。

そして、やっとドアが閉まった。

(なぜ人があんなに…)
見てはいけないものを見てしまった。
その後悔が、さっきまでの興味心を遥かに上回っていた。

急いで、プロジェクトフロアに戻った。

電話が鳴る。
「うわっ!」
びくついている自分に驚く。

「はい滝川です」

「遅くまでご苦労様。今日は遅いし疲れたので、明日の予稿は任せるよ」

「りょ、了解しました」

今夜はもう会いたくはなかった。
直ぐに支度をし、そそくさとビルを後にした。


その1分後、京極の車が駐車場に戻った。

「やれやれ、とんだ災難だった、くそっ」

山梨の研究施設からの帰り、急に飛び出して来た自転車に急ブレーキをかけた。

自転車の女性は、一度振り返り、走り去った。このために、助手席に置いていた蓋付き試験管のケースが滑り落ち、3分の1が割れてしまったのであった。

(だんだん薬の効果が下がってるが…これだけあれば、足りるだろう)

カバンとケースを持って、専用エレベーターに乗る。

(先に済ませるか)

滝川が押した位置よりもう一つ下を押す。

地下4階。
ドアが開き、直ぐ右にあるドアへ入る。

檻の中に、1人の男性がいた。

「もう1日、おとなしくしていてくれよ」

ケースの液体を、麻酔銃用の注射器に移し、慣れた手付きで、8本全てを男に撃つ。

動かなくなったのを確認して、鍵を開け、檻の中へ入る。

「さて、きょうのデータをいただくよ」

そう言って、彼の頭に装置をセットしたのであった。




~警視庁合同対策会議~

翌朝 9:00

警視総監の隣にラブの姿はない。
また、その隣の京極の姿もなかった。

「それでは、3回目の合同対策会議を始める」

富士本が高松警視総監を見る。
黙ってうなずく高松。

「では、昨日までの進展状況報告を」

「刑事課の神崎です。昨夜巡回中の宮本淳一刑事が、偶然にも『第12号:幼女食人連続殺人事件』の現場に遭遇。彼自身も危険な状態でしたが、命は取り留め、現在は入院療養中です」

高松が立ち上がり、全体へ一礼した後、紗夜に向かって深々と頭を下げた。

「犯人はその場で射殺。被害者は傷を負いましたが救出され、同じく入院療養中です。また、犯人のDNAと、今までの現場に残っていた爪やワイングラスから採取したDNAは、全て一致しました。これにて、第12号事件は終了とします」

「ご苦労であった」
高松が大声で一声発し、深く礼をする。

「尚、第14号、第15号については、この2日間発生は認められず、また、残念ながら捜査も特に進展はありません」

「何か情報や気づいたことはないか?」

富士本の問いかけに、咲が手を挙げた。

「この会議の事件とは直接関係はないんだけどさぁ。昨日、本当なら死ななくても済んだ4人の事件について、この場でハッキリさせなさいよ❗️」

「鳳来刑事、何をだね?犯人は射殺され、事件は終わったと聞いてるが、違うか?」

「話をちゃんと聞く耳すら、持ってらっしゃらないのでしょうか?警視総監ってのは?」

騒つく会場。

咲を目で止めるヴェロニカ。

「昨日、李龍辰に殺された4人は、臆病で金に目がくらむ様な、あんたの率いる警察組織のバカな行いのせいで死んだって言ってんだよ❗️」

何も知らない警察官達の目が敵に回る。

「その顔じゃ、知らないようね。李龍辰は、終身刑で府中刑務所に収監されてるはずが、その記録は消されて、知らない間に自由になってたってこと。これが、裁判所の証拠よ」

無期懲役と収監先まで、明記された証拠、更には裁判所と警察で取り交わした収監証明書まで、モニターに映しだされていた。

「4人の命。どう責任取ってくれんだ❗️」

完全に咲を代弁しているヴェロニカ。

「富士本君、これは本当かね」

「…はい。事実です」

騒めき立つ会場。

紗夜が立った。

「私も警察官です。私達は、あんなに信頼して、命懸けで助けてくれた、ラブさんの信頼も失ってしまったんです❗️昨日ラブさんは、これは警察を信じた自分の責任だと言って、今この時も、きっと自分を責めています。そんな凄い人の信頼を、私達警察は裏切ったんです❗️」

紗夜の頬を、悔しい涙が流れる。
自分のために死んだ七海の顔や声が浮かび、涙が溢れて来る咲。

「紗夜、もう…もういいから」

ヴェロニカが代弁してくれた理由。
2人には良く分かっていた。

「良くない❗️ 私は悔しい。悔しくて悔しくてたまらない❗️」

もう誰も反論は出来なかった。
警察とは何か?この本部に集められたメンバーは、今それを自分に問いかけていた。

それなりの人員を集めた本部である。



その時であった。

会場最後部のドアが開いた。

「その通り。このままじゃ良くない❗️」

「ラブさん…」

「今のあなた達を見て、私は確信しました。少なくとも、ここにいる皆んなは、信頼できる仲間だということを」

ゆっくり、一人一人と目を合わせながら、前へ進む。

壇上に上がるラブ。
真っ直ぐ前を見て、ゆっくり正座をする。

そして、額が着くまで頭を下げた。


「お願いします」

「もう一度、信じさせて下さい」

「そして、私を信じて下さい」


予想外のことに、静まり返る。


しばらくして…
どこからか、拍手が始まり、それが全体に広がり大きな力が動き出した。

富士本が手を挙げ、拍手を止める。

「一同起立❗️   礼❗️」

「よろしくお願いします❗️」

床に落ちる涙。
そのそばへ咲と紗夜が寄り、ラブを立たせた。

「ラブさん、これがこの国の本当の警察よ。これが、君が信じている、信頼の絆!」


「ありがとう、みんな」

拍手と歓声が鳴り響いた。


この時。
新たな危機が迫っていることを、まだ知るよしもない。



「では、私から報告があります」

(アイ)指示をする。

モニターと、各員のPCにリストが映る。

「上の2名、堺清治 府中刑務所、荒木士郎 横浜刑務所は、もうご存知の通りです」

以下のリストを眺める捜査員達。

「このリストは、関東にある11箇所の各刑務所で刑期を終え、この3ヶ月間に出所し、…その後行方不明になっている者のリストです」

「あの2人以外に、こんなにもいるのか」

富士本と同様、会場の騒めきで、この意外な事実に驚いているのがわかる。

「もちろん、名前を偽り生きている者や、自ら身を隠して生きている者もいると思います」

(アイ)モニターにグラフ📊が映る。

「そこで、6ヶ月間の行方不明者を調べた結果、4ヶ月前までは、数名であったのが、3ヶ月前から月平均22名以上に増えています」

「つまり、何者かが連れ去った、或いは拉致したって言うことね」

「咲さん。そう思って間違いないと思います。そしてこの中に、残る2名もいるはず」

「出所者が消えたとしても、だ~れも気にしませんものね」

普通に戻ったヴェロニカ💦

「【出所者連続誘拐事件】てっことか」

看板を書きたがる富士本部長💧


(連続誘拐事件…まさか、あれが…)
滝川だけは、不安と疑念に見舞われていた。


「リストを調査して、ピックアップしたのが彼女です」

ラブに合わせてモニターに女性が映る。

「緑川洋子、元看護師で薬剤師の資格も持っています。薬の効果に異常な執着心があり、盗んだ薬を患者に投与し、殺人未遂で逮捕されています。精神疾患ありと判断され、八王子医療刑務所に収監。1ヶ月程前に出所して以来、行方不明です」

「ヘルスケア・キラーですね!部長、指名手配しましょう」(昴)

「ん~…確証がない限りそれは無理だな」

「では都内のホームと施設にだけ配布し、連絡を貰っては?」(昴)

「この事件が報道されている今、もし違っていたら、風評や名誉毀損になり兼ねない」

「あらまぁ、何を難しく考えてらっしゃるのかしら?行方不明なのですから、お得意の『何らかの事件に巻き込まれた可能性があり』でよろしいのでは?」

「さっすがヴェロニカさん、それなら被害者的なので、悪くはないですね」

「分かった。紗夜、捜索手配をかけてくれ」

「はい、すぐに」

そこに、豊川が現れた。

「ラブさん、あんたの読み通りだったぜ!」

「どうゆうことかね?」

萎縮していた高松が、きいた。

「あの畳から第2号の爪のカケラが見つかった時、被害者以外の血痕が検出されたのよ。本人に直接確認したかったんだけど…」

京極の席を見るラブ。

「ま、まさか京極教授…か?」
 驚く高松警視総監。

「おぅ、DNAが一致したぜ」

(ん?)
紗夜とラブがその異様な心情に気付く。


「彼は、出された飲みものは飲まないし、髪の毛は落ちないし、あれはカツラね。結局はハイヒール&付け爪作戦で、苦労したわ💦」

「じゃああの時に…」

「ちょっと引っ掻いて見ました。ただ、腕に傷を負ってたし、あそこまでDNA採取を気にするには、それなりの理由があるってこと」

「砂川博士、彼は今日はどうしたんだ?」

「えっ、あ、あぁ私に任せるとは言ってましたが…まさか欠席とは聞いてません」

その時。
緊急事態を知らせる警報が鳴り響いた。


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