異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

文字の大きさ
13 / 250
第1章 ハッピーエンドは幻夢の如く

第12話 古川少将の提案に対し、四人の決断は

しおりを挟む
 ・・12・・
 そうなるだろうな。
 孝弘が古川少将の願いを聞いた感想だ。どうやら水帆や大輝、知花も同じような感じらしい。
 自分達の能力が日本でたったの一三人しかいないSランク相当ならば、古川少将が頭を下げてでも願う意味は孝弘達もよく分かっていた。もしアルストルム世界で同じような事があったのならば、孝弘達でも同じ事をしたからだ。それ程までに、超高位魔法能力者は希少で、喉から手が出るほど欲しい人材なのである。

 ただ、孝弘達は即答できなかった。今日一日で天地がひっくり返るような経験ばかりしており、頭がまとまっていない状態で判断をしたくないからである。
 それに、孝弘は自分だけで今の話を決める訳にはいかないし三人にも相談したいと思っていた。

 だから、四人の答えはしばしの沈黙だった。
 とはいえずっと黙っているわけにはいかない。

「古川さん、申し訳ないですが自分も含めてこの場での即答は出来ません。全員で相談させて頂くわけにはいきませんか?」

 孝弘はそう言った。
 古川少将は少し考えたものの、

「分かった。元より無理も承知だ。即諾してもらえるとは思っていない」

 あっさりと引き下がった。
 対して、複雑な心境なのは福地少尉と翔吾だ。

 福地少尉としてはいくら先の話を聞いたとはいえ赤の他人だ。軍人の身分で考えれば、四人が戦力となればこれほど心強い者はない。現代になってから戦争は『個』の力より『集』の力。つまりは組織力に重きを置かれるようになり、軍の総合力こそが戦争を決すると考えられるようになった。
 しかし、魔法については少々事情は変わる。現代となっても超高位魔法能力者は戦術面までならひっくり返せる存在だからだ。

 現状、世界にせよ日本にせよ圧倒的な戦力を前に苦境に立たされている。ここで四人のSランク能力者が参戦するとなれば、日本軍にとっての好影響は計り知れない。戦線を押し上げる事が出来るかもしれないのだ。
 故に福地少尉は少しだけ残念に思っていた。が、口には無論出さなかった。

 より複雑なのは翔吾だった。
 軍人という立場としては四人が参戦してくれれば心強いなんてものではない。だが、彼は四人の友人である。しかも死んでいたと思っていたら生きていたのだ。たとえとてつもなく強くなって帰ってきたのだとしても、本音は民間人として生きていてほしかった。このような世界になってしまったとしても。六年間の激戦を生き抜いてたというのなら、なおさら。
 だから翔吾は、なんとも言えない表情をしていた。
 古川少将はちらりと翔吾の顔を見つつも、すぐに四人の方へ向き直る。

「君達は今日帰還したばかりにも関わらず、CTと交戦した。さらに世界と日本の現状を知ることになり色々と処理が追いついていないだろう。物事の整理をしたい気持ちもよく分かる」

「ご配慮痛み入ります」

「構わんよ孝弘さん。だから、ひとまず今日は休みたまえ。男女一緒で悪いが部屋の区画も手配する。風呂についても同様だ。ただ、急かしてすまないが結論は明日までに出してくれ。ことは悠長にしていられない。民間人としての立場を望むのなら至急車両の手配をせねばならんからな」

 古川少将の話に、四人は頷き了承する。

「ありがとうございます。あの、最後に二つだけいいですか?」

「叶えられる範囲ならば構わん。何かね?」

「一つ目は家族の安否です。私達は今日帰還したばかりで、家族の事も分かりません。携帯端末は死亡届が出されたか、契約解除されているかで連絡が取れないので、安否確認をお願いしたいです」

「分かった。やっておこう。二つ目は?」

「戸籍の復帰です。行方不明となれば、戸籍が無い可能性が高いので、これの復活を。無いと不便極まると思うので」

「それについては関係省庁を通じて行うようにしよう。便宜がはかれるよう、こちらからも上を通してからやっておく。前例があるから早く解決出来るだろう」

「感謝致します。ひとまず、今のところはそれくらいです」

「うむ。では、話はこの辺にしておこうか。改めて言うが、ゆっくりしたまえ」

 古川少将はこの場を後にする。
 四人も翔吾と時間が許す限りあれこれと話しながら手配された区画に案内してもらい、その日の夜は司令部で過ごすこととなった。




 ・・Φ・・
 10月1日
 午前0時過ぎ
 手配された四人専用の区画

 あれから四人は今後について話し合い、二時間ほど互いの意見を交わしてから結論を出した。翌朝古川少将に話そうと決まり寝ることになったが、寝つきが悪かった孝弘は目を覚まして一人ぼんやりとしていた。

(今日は色々ありすぎた……。帰還、異変、戦闘。軍が一応機能していたから政府も機能している事は喜ばしいことだけど、世界と日本の現状は混沌と化していたなんてな……。このままだと日本と世界は良くない方向へ末路を歩んでいくんだろうけど、これじゃあまるで、転移先のアルストルムみたいだ……)

 孝弘は今の様子を皮肉って、苦笑いする。
 待ち望んでいた故郷への帰還。平和な日常に戻る願いは崩れたに等しい。恐らく民間人として生きたとしても、早晩生死と身の振り方の分岐点に立たされる。

 どうしてこうなったんだろうか。

 孝弘にせよ、今はぐっすりと寝ている三人にせよ、この感想は同じだった。
 だが、泣き言を放ったところで何も変わらないことはアルストルムで散々に経験している。明日から歩む道は、覚悟せねばならないものになるだろう。

(でも、どんな道を歩んだとしても変わらないことはある。大切な人を守りたい。守りながら、守られながら、生きていきたい。あの六年を生きて俺達は変わった。引きこもる選択肢なんてとうの昔に捨てたし、死ぬ選択肢なんて、もちろんどこにも無い。結局、道は一つだよな。)

 たとえ世界がどうなったとしても、曲げたくない信念。何があっても守りたい大切な人。
 その為に、四人は早くも決意させられる。いや、決意させられたのは六年前で今は違う。

 自分達が、決めたのだ。

 異世界から帰還したばかりの四人は、道を定めた。それがどう世界に作用するかは誰も分からない。ただ一つ確実に言えることは、決めたのならば最後までやりきることだけ。

 孝弘はそろそろ寝ないと。と横になる。共に将来を歩むと約束した、水帆の頭を撫でて。
 そうして、孝弘は眠りについた。

 翌朝。半ば小康状態だったという戦況は変化した。
 東側の戦線で、約八〇〇〇〇のバケモノの大群が西に向けて動き始めたのだ。






※ここまでお読み頂きありがとうございます。作品を読んで面白いと感じたり良い物語だと思って頂けましたら、お気に入り追加やいいねを頂けると、とても嬉しいです。引き続き作品をお楽しみくださいませ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...