異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第2章 富士・富士宮防衛戦

第3話 戦況説明とAR通信端末の向こうに映る人物

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・・3・・
「私達はこの世界を守る為に、杖を銃を手に取って戦います。これが私達四人の答えです」

 孝弘の言葉に、古川少将は安心したのか少しだけ頬を緩ませる。

「君の、君達のその言葉。どれだけ我々にとって心強いことか。本当に本当にありがとう」

「いえ。お気になさらず。帰還した故郷が、世界が滅亡の危機に陥ろうとしているのに見過ごすわけにはいきませんから」

 孝弘は素直に自身の気持ちを答える。

「私は六年間で学びました。力を持っているのならば、その力は守る為に使うべきだって。大切な人を守る為にも」

 水帆はちらりと孝弘を見て、かつてを思い出しながら言った。

「自分達の故郷が滅亡すっかもしれねーのに、放っておけるわけがねえ。見て見ぬふりは出来ねえ。だから、オレは戦いますよ」

 大輝は開いた左手に拳をつくった右手を当てて言う。

「わたしが知っている人。大切な人が傷つくのは嫌です。せっかく帰ってこれたみんなの故郷が無くなるのも嫌です。自分の力が役に立つなら、わたしも戦います」

 知花は決意に満ちた表情で言った。
 四人の表明。それを見て、福地少尉も表情が明るくなった。

「ありがとう。その力、救国の為に使って欲しい」

 古川少将が改めて感謝の意を表すと、すぐに彼は話題を切り替えた。

「早速で悪いが、時間がそうあるわけではない。戦況について説明しよう」

 古川少将の言葉に四人が頷くと、福地少尉が端末を操作してARで地図を表示する。小田原、富士・富士宮、静岡・清水の戦線全体が映っていた。

「これが今の戦況だ。富士・富士宮には我々魔法軍と陸軍に海兵隊の計三〇〇〇〇が展開。主戦線たる富士側に一五〇〇〇。富士宮側に約八〇〇〇。本部人員と予備兵力に約七〇〇〇。対して、今回動いたのがコレだ。確認出来ているだけで約八〇〇〇〇のCT。ただしあくまで確認出来ているだけの数であり、小田原を含め所々が敵の魔法粒子妨害と電波妨害で衛星からの確認が取れん。実数はそれ以上と思ってもいいかもしれんな」

「あの、古川少将。CTの形態は分かりますか?」

「判明しているだけでいいなら答えられるぞ、知花さん」

「お願いします」

「分かった。福地少尉、画面を追加」

「はっ」

 地図の近くに新たにAR画面が現れる。

「現在我々が確認出来ているCTは〇つだ。君達も接触した人型。犬型。それに大型二足歩行型。外見からしてオーガだとか言う兵もいたな」

「自分達が偵察車両に乗せてもらう直前にエンゲージした相手ですね。体長は大人の男の倍以上はありました」

「孝弘さん達が接触したオーガ型は他より数は減るものの厄介な相手だ。小銃だと手こずると報告が上がっている。さすがにジャベリン改や対戦車兵器を使えば屠れるのだが」

「魔法だとどれくらいの火力が必要ですか?」

「中級魔法なら倒せるレベルだ、水帆さん。ただ接近されると戦車の装甲が凹むくらいの腕力はあり、軽装甲車なら持ち上げられてしまう」

「だいぶ面倒な相手だな……。古川少将、大体全体の割合からどれくらいか分かりますか?」

 大輝の質問に、古川少将はスムーズに答える。

「CTが一〇〇いたら一から二程度だな。あくまで推測だが、連中が中途半端ながら纏まって行動するのはオーガ型などの上位個体によるものではないかと参謀本部情報部が分析している」

「など。ということは他にもいるんですね」

「察しが良くて助かるよ、孝弘さん。今のところもう一つ確認が取れているのがこれだ。ロッドを持つタイプ。見た目は人型とそっくりだが魔法を使うことから、その名を魔法行使型」

「魔法行使型ですって……?   これはまだ接触していないわね……」

「君達がエンゲージしていないのも当然で、こいつは先の大型よりさらに個体数が少ない。CTが一〇〇〇いたとすると五程度だからな。ちなみにコイツは初級魔法の発動までは確認している。中級魔法は未確認だ。魔法障壁は一枚のみなら展開する」

 四人は魔法型の存在に顔を顰めた。魔法型がいるのは厄介だと感じたからだ。
 敵に魔法を使うタイプがいなければかなり戦いやすい。魔法障壁がないなら火力を投射すれば圧殺出来るし、魔法攻撃の心配もない。

 ところが魔法行使型がいるとなると話は別だ。初級魔法とはいえ小銃弾より威力の高い攻撃が飛んでくる。これは非魔法能力者にとって危険な攻撃になる。相手の数にもよるがオーガ型と魔法行使型が両方いたら、対戦車兵器を持っていない陸軍部隊単独では苦戦するだろう。だからこそ陸軍や海兵隊が魔法軍の部隊と作戦行動をしているのだが。

「話を戦況に戻ろう。――CT約八〇〇〇〇に対しては現在我々は沼津から西、片浜から原付近を最前線として交戦中だ。ただこの前線部は長くは維持出来ない為、田子の浦付近の南北を交戦地帯と設定した。まあ、この行動も長くは持たんのだが。どうしても数で押し負ける」

「私が補足します。CTですが、約八〇〇〇〇としていますがこの数は倒した分だけ素直に減るわけではありません。二ヶ月前からずっとなのですが、一〇〇〇〇倒しても減ったのは五〇〇〇だけというケースが頻発しておりまして……」

「というわけだ。連中は無限湧きに等しい状態になっているのだ」

 先進国ですら後退を強いられているのはこの点にある。額面通りに数が減らないのだ。だから日本軍も首都東京を捨てたし、小田原も奪還されている。

「となると、今の戦線は長く持ちませんね。どれくらいは維持出来ると見ているのですか?」

「四日から五日だろうな。以降は戦線を下げて吉原付近が最前線になるだろう。敵の侵攻路を増やさない為に東名と新東名の富士以東は爆破処理したが、多少伸ばす程度でしかない」

「じゃあ一週間も経たずに富士市街地で戦闘になりそうね……」

 水帆の推測に古川少将は肯定の意味で首を縦に振る。

「しかし、我々も黙って侵略される訳では無い。ここで鍵を握るのが君達というわけだ。――先に言っておくが君達を東側の戦線に投入するわけではない。北側の戦力の一部である約三〇〇〇を抽出して、代わりに君等を充てる」

「三〇〇〇人の代わりですか。陸軍なら一個連隊相当。責任重大ですね」

「それだけ期待しているというわけだ」

「でもオレ達はまだ民間人扱いですよ。表立って動くのは難しいのでは?」

「大輝さんの疑問も最もだ。だが安心したまえ。その件については解決している。福地少尉、AR通信を繋げてくれ」

「はっ。了解しました」

 二人のやり取りに孝弘達は首を傾げる。ただすぐに疑問は解けた。
 それを表していたのが、開けられたAR端末通信に映る人物だった。

「待たせてすまん、七条大佐。彼等が決意してくれた四人だ」

「気にしないでください、古川少将閣下。父を通じて昔からの仲じゃないですか」

「そう言ってくれると助かる。四人とも、注目を。この画面に映っているのがこれから君達の上官になる七条璃佳しちじょうりか魔法大佐だ」

「どーも。君達が『帰還者』だねー?   今古川少将閣下が紹介してくれたけど、私が七条璃佳。日本魔法軍中央本部直轄第一特務連隊の連隊長だよ。よろしくね?」

 AR端末に映っている人物。
 その彼女は、端末の画面からでもはっきりと分かるくらいの外見で。つまりは見た目も声音もまるで中学生くらいの可憐な女性だった。
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