異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第7章 決戦! 首都奪還作戦編

第3話 新宿攻防戦②

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 ・・3・・
BTLバタリオンリーダー1よりセブンス。新宿駅駅を確保。付近は陸海兵隊含め配置点確保。このまま第二波三個連隊の迎撃準備にかかります』

『セブンスよりBTL1。了解。茜をそちらに付ける。時代遅れのクソ野郎共を叩き潰してとっとと第二段階へ移るよ』

『BTL1よりセブンス、了解しました。直ちに中隊統制法撃準備に移ります』

『セブンスよりBTL1了解。――BTL2へ。低高度より敵を捕捉。距離六〇〇の時点で機関銃を叩き込め。魔力をこの後の為に温存したい。ただし攻撃方法は柔軟に変更して良し』

『BTL2よりセブンス。了解。携行の一般火器を優先で使用します』

『よろしく。――セブンスよりBTL3へ。原宿方面の対応が終わり次第、新宿の方に合流させるよう。ただし、原宿方面が苦戦しているのであればその限りでは無い。二個中隊はそのまま残し次の目的地に向かう』

『BTL3よりセブンスへ。了解っす。原宿方面は後方から友軍が続々と来ているみたいっすけど、二個中隊は残しておいた方がいいかもしれないっすね』

『セブンスよりBTL3。分かった。誰を残すかは一任する』

『BTL3よりセブンスへ。了解っす。ちゃちゃっと片付けて合流しますね。オーバー』

 第一特務連隊を始めとした新宿地区担当部隊が早々に新宿駅を確保すると、璃佳は次に現れた三個連隊への対応だけでなく本命の作戦に関する命令も飛ばしていく。

 命令を次々と出していた璃佳にせよ、新宿地区担当部隊にせよ、他地区の部隊にせよ、属国軍を含め神聖帝国軍と交戦した部隊はある感覚を抱いていた。自分達より兵力数における比率が高い魔法部隊は厄介だが、兵器の類が時代遅れの一般部隊はさほど脅威ではないと。
 彼らが抱いた感覚の答え合わせは既に出されていた。新宿駅の早期確保がその一つである。

 とはいえ、神聖帝国軍の抵抗は頑強だ。二個連隊が捻り潰されたにも関わらずすぐにやってきた三個連隊。第一特務連隊を含む諸部隊はすぐにそれらと交戦を始めることとなった。

『BTL1よりセブンス。新宿駅東口付近も確保!    ただし間もなく敵一個連隊規模と交戦。距離約七〇〇。既に統制法撃射程圏内。BT2第二大隊が上空からの制圧射撃を行うも、魔法障壁を犠牲にして接近中』

『セブンスよりBTL1。ただちに統制法撃を開始』

『BTL1よりセブンス。了解。ただちに統制法撃を始めます』

 短いやり取りを経て第一大隊は短い時間で目標照準合わせが可能な小隊規模統制法撃の用意を始める。

『第一大隊、小隊間統制法撃、火属性よぉい!    放てぇ!』

 第二大隊による上空からの制圧射撃に加えて第一大隊の統制法撃が敵一個連隊を襲う。
 魔法障壁を破壊された魔法部隊など、防御面においては障壁を持たない一般部隊と大差ない。射撃と法撃を受けて身体強化魔法で速度を上げて接近していた魔法部隊はなぎ倒されていき、後に続く通常部隊も地に倒れていく。

『三一戦車大隊、砲撃用意!    撃て!』

 間髪入れずに戦車大隊の砲撃、さらに陸軍や海兵隊の野砲類も火を噴く。

『1st.CRより連隊各員、敵一個連隊は順調に数を減らすも後続二個連隊が接近中。後続部隊に野砲を確認。第一次大戦前程度の野砲類と思われる。念の為砲撃に注意』

『陸軍一一連隊より各部隊。相互データリンクよりレーダー回復圏内の砲撃位置を特定。これより反撃を加える』

『海兵二一連隊でも確認した。データリンクより攻撃箇所の割り振り確認。攻撃を開始する』

『BTL2よりセブンス。賢者の瞳にて陸、海兵側の攻撃位置共有完了。敵魔法部隊中心への攻撃及び法撃を続行する』

『セブンスよりBTL2。了解。陸と海兵が頑張ってくれてるから控えめでも構わない。第二段に向けて消費はなるべく抑えるよう』

『BTL2よりセブンス。了解。規定通りに抑えてますので、今の形を続行します』

 陸軍・海兵隊・魔法軍の連携はほぼ完璧といってよかった。それぞれの攻撃箇所はデータリンクで重複しないよう把握がされており、的確に攻撃が行われていたからだ。既に敵三個連隊のうち一個連隊は壊滅に近い損害を受けている。中段にいた一個連隊と後段にいた一個連隊が近付いているものの、やや動きが鈍くなっていた。しかし、神聖帝国軍は元来た道に退かずむしろ決死の表情を将兵は浮かべて突撃してくる。

 この頃になると、日本軍の将兵にはなぜ撤退しないのだろうか。降伏しないのだろうか。と疑念が頭を過ぎるが、これまで神聖帝国軍は属国軍とはいえ降伏が多くはなかったこと。旧軍のバンザイ突撃のように無謀な突撃を行うこともあったからと、今のようになっている理由を深く考えていなかった。

 ただ、一部の指揮官クラスは違っていた。この様子を、指揮に専念しながらも怪しんでいた璃佳は心中でこう分析していた。

(二個連隊が消えたに等しい状態になり、三個連隊のうち一個連隊が壊滅判定になってもなお前進してくる。この時点で敵の損害は三個連隊で約一個旅団が溶けたようなもの。それでも神聖帝国軍は旧軍よろしく無茶な突撃をしてきていて、降伏もしてこない。……新宿から司令部があると思われる皇居・東京駅方面はもう目と鼻の先みたいなもんだけど、降伏もせずに決死の攻撃を加えてくる理由は……?    もしかして、死守命令でも出てるとか?    だとすると、嫌な予感がする。この予感が当たるのは……、まずいね……)

 腕を組み、左肘を右手の人差し指でトントンとしながら、璃佳は嫌な予感の答えを探そうとしていた。だが、すぐに何故の理由は出てこない。隣にいる熊川もどうやら璃佳と同じ違和感を抱いているようだが、敵の真意にたどり着けていない様子だった。

 そうしていると、孝弘が璃佳の隣に寄ってきた。

「どうしたの、米原少佐」

「神聖帝国軍の、それも本軍らしき相手が退かないなと」

「やっぱ君もそう思った?」

「ええ。あと、熊川少佐も同じ感じのようですね」

「ああ。どうにも引っかかる。神聖帝国軍の基本方針があの攻撃手法なら無理にでも納得出来るのだが」

「いっそのこと、三人同時に考えることでもいいますか」

「いいねそれ。せーのでいこう。――せーの」

『神聖帝国軍に死守命令が出ている』

「やっぱりね」

 璃佳が嘆息をつく。熊川はやはり、といった様子だった。

「熊川少佐、死守命令の理由は掴めそう?」

「常識的に考えるのならば、司令部があるとすればここから近いから、でしょうか。司令部を撤退させるにしても、そのままいるにしても、部隊に死守させるのは納得はできます。しかし、理由は一つに絞れません。撤退するから死守命令の可能性がかなり高いですが、何らかの理由で司令部機能を生かしておきたいから死守命令の可能性も捨てきれないかと」

「なるほどね。米原少佐は?」

「敵指揮官が兵士に相当信頼されているからこのような攻撃をしてくるといった線は薄いと思います。となると、司令部からの死守命令になるのですが、その理由となると……。一般的には、司令部機能を撤退、かと。ここは我々の国で敵に愛着はないでしょうし、東京は敵にとっても重要拠点ではありますが、あちらにとっての最重要は転移門だと思いますので」

「二人の見解は把握した。ちなみにだけど、嫌な予感はあったりする?」

「かなりあります。救出作戦の繰上げ決行が必要かと」

「米原少佐に同意です。抵抗も程々に降伏するような軍なら良かったのですが、死守命令が出ていたとしてその理由が撤退ではなく別にあった場合、救出作戦にも影響が出ると考えます」

「二人が言うなら間違いないね。私の嫌な予感が高い確率で当たるのも分かった。――作戦を変更しよう。残り二個連隊の展開地点に穴を開けたら攻撃は陸・海兵隊に任せて私達は敵地を強襲して救出作戦に移行。補給が余り出来ないのは想定外になるけど、時は金なりだ。早々に動くよ。熊川少佐、補佐よろしく」

「はっ!」

「米原少佐、君たち四人の魔力温存は解除。最前面に展開し、連隊の切っ先役になってほしい。ただし川島少佐の魔力温存は救出地点直前まで維持。彼には救出ポイント到着までは魔法障壁展開による味方のサポートをするよう言っておいて」

「はっ。了解しました」

 二人の見解を踏まえた上で、救出作戦の繰り上げを決めた璃佳。
 陸軍と海兵隊の指揮官は璃佳の方針を聞いてやや驚いたものの状況が状況だけに彼等は快諾。速やかに実行に移されることとなる。
 この作戦繰り上げ決行が吉と出るか、凶と出るか。それはまだ誰も分からない。
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