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第14章 仙台方面奪還作戦編Ⅱ
第13話 いざ大崎古川へ
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・・13・・
孝弘達が古川にあるとされる神聖帝国軍司令部の奇襲が決まった二○日から仙台南部から山形県酒田市東部へ移動する二三日朝までの間にも戦況は動き続けていた。
仙台方面の戦線は東部側が苦竹まで進出し、南部方面も若林区役所付近まで到達していた。西部方面も仙台緑ヶ丘まで進み、敵地たる北部を除いて全ての戦線が仙台中心市街地の目の前まで迫るまでになっていた。
ただ、この間にもエンザリアは出現していた。その数は四日間で計二五人。緊急措置的とはいえ対処法も出来始めたことで彼我のキルレートは一二対一から九対一まで低下させたものの、それでも一人のエンザリアを倒すのに九人の兵士の命が必要という厳しい状況に変わりはなかった。
石巻方面は仙台方面に比べれば侵攻は順調であったが、大崎市の手前にあたる美里町付近まで前進した頃には神聖帝国軍の抵抗は激しくなっており、上陸直後から二、三日ほどの前進速度は維持できなくなっていた。
そのような戦況の中で、孝弘達特務小隊計二○名は酒田市東部で作戦の開始を前に準備を進めていた。
・・Φ・・
2037年3月24日
午前3時50分
山形県酒田市東部郊外・特務小隊待機ポイント
後方の人々がまだ夢の世界の中にいる午前四時前。酒田市東部郊外のある場所では二○人の強者達がとっくに起床して作戦開始の時間を待っていた。孝弘達のことである。
彼等は軍上層部が用意した公民館跡地で装備の点検を行い、後はフェアルを起動して出撃するだけの状態に。隊長である孝弘による作戦の最終確認がこれから行われようとしていた。
「小隊全員揃ったな。よく寝れたか?」
「おうとも。久しぶりにぐっすりだったぜ。仙台じゃ睡眠時間がツギハギみたいにバラバラだったからな」
「流石大輝だ。いつでもどこでも熟睡出来るお前が羨ましいよ」
「オレが鈍感だってかー?」
「図太い、の方が適切な表現かな」
「ぐうの音も出ねえや」
孝弘と大輝のやり取りに笑いが起きると場の空気はいい緩み方をするが、孝弘が一呼吸置く頃には引き締まったものに戻る。
「今回の作戦だが、はっきり言って急に決まったものだ。理由は単純明快。我々日本軍が仙台でこれ以上出血を強要されるわけにはいけないから。だから敵地を奇襲する。目標は大崎市古川にあるとされる神聖帝国軍司令部。地図にマークされている直径五○○メートルの円。そのどこかに所在しているとのことだが、目標の立場的に居場所を特定するのは難しくない。恐らくはここだろう」
孝弘がAR画面の共有で拡大したのは地元では富豪で有名な一家の邸宅。大きな屋敷だった。
「作戦行動についてはこれから話す形で進めていく。ただし、敵の動きが想定と違った場合や当該地区にいる敵兵力が想定を大きく超えた場合は作戦に変更が生じる可能性がある。その時は各自が柔軟に行動するように」
孝弘はそう言ってから説明した作戦行動は以下の通りである。
①無線封鎖状態で目標地点付近まで到達直後、フェアルの魔導エンジンを一時的に切り滑空状態へ移行。着陸地点が近づいてから再点火して着地。
②この時点で無線封鎖は解除。部隊は二手に分かれる。近接戦闘に長けるか狭い空間で戦いやすい俺、大輝、鳴海兄妹、佐治、河田、の計七名は目標地点を奇襲。残る一三名は知花を隊長として敵司令部付近を徹底的に法撃。敵を混乱させることを主任務とする。
③一三名による法撃で対象人物の護衛部隊などを攻撃している間に、俺達七名は屋敷を襲撃して屋敷内護衛戦力を掃討。対象人物を発見次第捕縛。ただしこれが難しい場合は殺害とする。
④③が成功した後、捕縛した場合は対象人物に降伏勧告をさせる。殺害した場合は速やかにセブンスへ報告し、日本軍司令部経由で神聖帝国軍司令部の破壊と指揮官殺害を仙台方面の神聖帝国軍に勧告。降伏させる。
⑤④の成功後、捕縛の場合は当該人物二名を合流する回収部隊と共に福島方面へ帰投。身柄は参謀本部情報参謀部に引き渡す。殺害の場合は遺体を回収し、福島方面へ帰投とする。
「以上が改めて確認した作戦内容だ。今回の任務は出来る限り対象人物を捕縛することが目標とされているから、難易度は非常に高い。だが、ここにいる皆であれば作戦は成功すると確信している。とまあ堅苦しく言ったけど、肩筋を張らずにやろう。帰投したら我らが七条閣下は可能な範囲で願いを叶えてくれるから、今のうちに考えておくこと。ああでも、今は口に出すなよ?」
孝弘が最後に言ったことの意味を察した小隊の者達は軽く笑って頷く。知花は誰にも聞こえない声のトーンで「死亡フラグだもんね」と苦笑いしながら言った。
『セブンスよりSA。『奴等が今日の朝飯』。繰り返す。『奴等が今日の朝飯』だ』
「SA1よりセブンス。了解。行動開始します」
璃佳から作戦開始の合図となる通信を聞き取ると、孝弘達は外に出てフェアルを起動。すぐに離陸していった。時刻は四時で、まだ空は闇が支配していた。
『セブンスよりSA1。秘匿通信での無線交信を維持。高度と速度はしばらく保て。旅団戦闘団本部で誘導する。無線封鎖空域まであと四分半』
「SA1了解」
孝弘達は山形県北部の山間地を横断するように進んでいく。最上町上空に到達すると、無線封鎖空域はもう目の前だ。
『セブンスよりSA。まもなく無線封鎖空域。これより先はSA1の命令に従い任務を完遂なさい。貴官等の健闘を祈る。通信終わり』
璃佳からの激励を受けた直後、孝弘達は無線を封鎖。大崎古川空域周辺がマジックジャミングされている事に備え事前に入力したデータを元に目標地点へ翔けていく。
(目標空域到達一分前。到達後滑空モードへ。)
孝弘がハンドサインで命令を送ると、その内容はすぐに全員へ伝わる。
「フェアル魔導エンジン一時停止。滑空モードへ移行」
『滑空モードへ移行』
賢者の瞳の無機質な音声。それが奇襲作戦開始の合図であった。
孝弘達が古川にあるとされる神聖帝国軍司令部の奇襲が決まった二○日から仙台南部から山形県酒田市東部へ移動する二三日朝までの間にも戦況は動き続けていた。
仙台方面の戦線は東部側が苦竹まで進出し、南部方面も若林区役所付近まで到達していた。西部方面も仙台緑ヶ丘まで進み、敵地たる北部を除いて全ての戦線が仙台中心市街地の目の前まで迫るまでになっていた。
ただ、この間にもエンザリアは出現していた。その数は四日間で計二五人。緊急措置的とはいえ対処法も出来始めたことで彼我のキルレートは一二対一から九対一まで低下させたものの、それでも一人のエンザリアを倒すのに九人の兵士の命が必要という厳しい状況に変わりはなかった。
石巻方面は仙台方面に比べれば侵攻は順調であったが、大崎市の手前にあたる美里町付近まで前進した頃には神聖帝国軍の抵抗は激しくなっており、上陸直後から二、三日ほどの前進速度は維持できなくなっていた。
そのような戦況の中で、孝弘達特務小隊計二○名は酒田市東部で作戦の開始を前に準備を進めていた。
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2037年3月24日
午前3時50分
山形県酒田市東部郊外・特務小隊待機ポイント
後方の人々がまだ夢の世界の中にいる午前四時前。酒田市東部郊外のある場所では二○人の強者達がとっくに起床して作戦開始の時間を待っていた。孝弘達のことである。
彼等は軍上層部が用意した公民館跡地で装備の点検を行い、後はフェアルを起動して出撃するだけの状態に。隊長である孝弘による作戦の最終確認がこれから行われようとしていた。
「小隊全員揃ったな。よく寝れたか?」
「おうとも。久しぶりにぐっすりだったぜ。仙台じゃ睡眠時間がツギハギみたいにバラバラだったからな」
「流石大輝だ。いつでもどこでも熟睡出来るお前が羨ましいよ」
「オレが鈍感だってかー?」
「図太い、の方が適切な表現かな」
「ぐうの音も出ねえや」
孝弘と大輝のやり取りに笑いが起きると場の空気はいい緩み方をするが、孝弘が一呼吸置く頃には引き締まったものに戻る。
「今回の作戦だが、はっきり言って急に決まったものだ。理由は単純明快。我々日本軍が仙台でこれ以上出血を強要されるわけにはいけないから。だから敵地を奇襲する。目標は大崎市古川にあるとされる神聖帝国軍司令部。地図にマークされている直径五○○メートルの円。そのどこかに所在しているとのことだが、目標の立場的に居場所を特定するのは難しくない。恐らくはここだろう」
孝弘がAR画面の共有で拡大したのは地元では富豪で有名な一家の邸宅。大きな屋敷だった。
「作戦行動についてはこれから話す形で進めていく。ただし、敵の動きが想定と違った場合や当該地区にいる敵兵力が想定を大きく超えた場合は作戦に変更が生じる可能性がある。その時は各自が柔軟に行動するように」
孝弘はそう言ってから説明した作戦行動は以下の通りである。
①無線封鎖状態で目標地点付近まで到達直後、フェアルの魔導エンジンを一時的に切り滑空状態へ移行。着陸地点が近づいてから再点火して着地。
②この時点で無線封鎖は解除。部隊は二手に分かれる。近接戦闘に長けるか狭い空間で戦いやすい俺、大輝、鳴海兄妹、佐治、河田、の計七名は目標地点を奇襲。残る一三名は知花を隊長として敵司令部付近を徹底的に法撃。敵を混乱させることを主任務とする。
③一三名による法撃で対象人物の護衛部隊などを攻撃している間に、俺達七名は屋敷を襲撃して屋敷内護衛戦力を掃討。対象人物を発見次第捕縛。ただしこれが難しい場合は殺害とする。
④③が成功した後、捕縛した場合は対象人物に降伏勧告をさせる。殺害した場合は速やかにセブンスへ報告し、日本軍司令部経由で神聖帝国軍司令部の破壊と指揮官殺害を仙台方面の神聖帝国軍に勧告。降伏させる。
⑤④の成功後、捕縛の場合は当該人物二名を合流する回収部隊と共に福島方面へ帰投。身柄は参謀本部情報参謀部に引き渡す。殺害の場合は遺体を回収し、福島方面へ帰投とする。
「以上が改めて確認した作戦内容だ。今回の任務は出来る限り対象人物を捕縛することが目標とされているから、難易度は非常に高い。だが、ここにいる皆であれば作戦は成功すると確信している。とまあ堅苦しく言ったけど、肩筋を張らずにやろう。帰投したら我らが七条閣下は可能な範囲で願いを叶えてくれるから、今のうちに考えておくこと。ああでも、今は口に出すなよ?」
孝弘が最後に言ったことの意味を察した小隊の者達は軽く笑って頷く。知花は誰にも聞こえない声のトーンで「死亡フラグだもんね」と苦笑いしながら言った。
『セブンスよりSA。『奴等が今日の朝飯』。繰り返す。『奴等が今日の朝飯』だ』
「SA1よりセブンス。了解。行動開始します」
璃佳から作戦開始の合図となる通信を聞き取ると、孝弘達は外に出てフェアルを起動。すぐに離陸していった。時刻は四時で、まだ空は闇が支配していた。
『セブンスよりSA1。秘匿通信での無線交信を維持。高度と速度はしばらく保て。旅団戦闘団本部で誘導する。無線封鎖空域まであと四分半』
「SA1了解」
孝弘達は山形県北部の山間地を横断するように進んでいく。最上町上空に到達すると、無線封鎖空域はもう目の前だ。
『セブンスよりSA。まもなく無線封鎖空域。これより先はSA1の命令に従い任務を完遂なさい。貴官等の健闘を祈る。通信終わり』
璃佳からの激励を受けた直後、孝弘達は無線を封鎖。大崎古川空域周辺がマジックジャミングされている事に備え事前に入力したデータを元に目標地点へ翔けていく。
(目標空域到達一分前。到達後滑空モードへ。)
孝弘がハンドサインで命令を送ると、その内容はすぐに全員へ伝わる。
「フェアル魔導エンジン一時停止。滑空モードへ移行」
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賢者の瞳の無機質な音声。それが奇襲作戦開始の合図であった。
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