異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

文字の大きさ
215 / 250
第14章 仙台方面奪還作戦編Ⅱ

第15話 シュレイダーの置き土産

しおりを挟む
 ・・15・・
 孝弘達が閉じ込められた黒いとばり。それは最悪の事態を想定したエイトールが考案し、高位能力者でもあるシュレイダーが自身の命を引き換えにして繰り出される切り札であった。彼らは驚くべきことに、可能性は著しく低いとながらも日本軍が精鋭部隊を送り自分達を奇襲する際の対策まで練っていたのである。
 常識的な観点から結界魔法は複数の魔法能力者が力を合わせ行う術式だが、高位能力者であれば相応の魔力を注げば単独発動が可能である。皇居前で一度孝弘や大輝達が閉じ込められた結界がこれにあたる。

 なおこの術式は他の魔法と同様に注ぐ魔力で威力――結界魔法の場合は強度――が変わり、魔力と威力は比例する。シュレイダーが注いだ魔力は自身の生命力をも変換したもので、単純比較が難しいものの皇居前のそれを上回る強度を誇っており、並大抵の能力者だと内側からの破壊は不可能で、外側にしても同様である。
 孝弘達は最精鋭の部類ではあるが黒い帳の強度が皇居の時以上と知る訳もなく、彼等が結界魔法によってレーダーロストした事をキャッチした璃佳達もまた同じであった。
 それだけではない。シュレイダーの置き土産の一つが彼女達に迫りつつあった。

 ・・Φ・・
「古川市西部郊外作戦区域に結界魔法が出現!!   結界範囲は直径四キロ!!   SA小隊オールレーダーロスト!!    通信途絶!!」

「ちくしょうやられた!!    あいつら奥の手を隠してたなんて!!」

 突然の事態に璃佳は拳を握ってテーブルを強く叩く。奇襲に対して敵が切り札を持っていると想定出来なかった自分が恨めしい。こんな情報が無かったのだから己を責めても仕方ないのだが、それでも孝弘達を封じられたのは旅団戦闘団だけでなく日本軍全体にとって痛手となってしまっていた。

「結界魔法の強度判明!!    皇居前に出現した同タイプと比較して約二倍から三倍です」

「ってことは.......」

「魔法であれば戦術級を叩き込む必要がありますが、それで破壊できるかは不明です。なお威力が過剰だった場合、結界は壊せても中にいる米原中佐達SAの生存は保証できません.......」

「クソっ.......!    すぐに救出部隊を編成し――」

「准将閣下!!    当該地域周辺にCT出現です!!   数は一個大隊規模!!    エンザリアCTも少数ながら確認!!」

「帝国のクソ野郎共が.......!    救出部隊を一個中隊規模で即時編成。小隊単位でピックアップ! 今!   すぐに!」

「この状況でですか!?」

「抜けた分の穴埋めは私が上級司令部に掛け合うから!」

「りょ、了解!!」

 いつもは冷静沈着な璃佳達が極度に焦るのも仕方ないことだった。
 万が一Sランク四人以外にもA+ランクやAランクで構成されている特務小隊全員が戦死して喪失となった場合、その損害は日本軍にとって計り知れないものになる。是が非でも最悪の事態は防がねばならなかった。

「一○一魔法旅団戦闘団長より方面軍HQへ。美濃部閣下へ繋いで」

『了解しました。すぐ繋ぎます』

『美濃部よ』

「美濃部閣下、一○一から選抜してのSA小隊救出部隊編成を具申します。許可を頂きたく」

『一○一から選抜しての救出部隊編成は許可出来ないわ。仙台の戦線から皇居以上の強度を持つ結界魔法を破壊可能な人員を引き抜いた場合、すぐに代替の人員を手配出来ない。こちらで問い合わせるから待ちなさい』

「し、しかし.......!!」

『いいから。落ち着きなさいな、七条准将』

「..............イエッサー」

 今すぐにでも助け出したい。叶うならば自分が出撃したい気持ちを抑え、璃佳は美濃部からの通信を待った。たったの一分、二分がずっと長く感じられた。

『七条准将、志願した部隊があったわ。無線を繋ぐわよ』

「は、はっ?」

『ウェストウィザードよりセブンスへ。SA小隊の救出作戦はわたし達が担当します』

「ウェストウィザード.......、今川大佐?!   石巻方面は大丈夫なの?!」

『向かうのは私を含め二五人で、穴埋めは海軍がしてくれるようです。それに、あそこにはわたし達の命の恩人がいます。見捨てるなんて到底出来ません』

「ありがとう.......!!   感謝する、ウェストウィザード!!」

『今こそ恩返しの時ですから』

「分かった。彼等を頼んだよ.......!」

『了解』

『というわけよ、七条准将。部下達が心配なのは分かるけど、水を飲んで深呼吸したら、貴官が今成すべきこと成してちょうだい』

『はっ。閣下とウェストウィザードに最大限の感謝を』

『いいのよ。今川大佐のように思う人は、ここには沢山いるもの』

 今川の動きは早かった。三分も経たない内に救出部隊は編成され、彼女達は古川方面へと向かっていった。
 これでようやく冷静な思考を取り戻せる。
 璃佳はそう思っていた。
 しかし一難去ってまた一難とはよくいったもので、このタイミングでシュレイダーの置き土産が彼女等に襲いかかる。

『第一機動艦隊より戦域全体へ緊急通報!!    北方よりドラゴンが出現!!    繰り返す!!   北方よりドラゴン出現!!   数は、約五○○!!』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...