21 / 390
第2章 改革と戦争の足音編
第2話 初っ端からハプニングと、改革特務部の船出
しおりを挟む
・・2・・
僕はふっかふかのおっぱいに包まれ、自身の小柄で華奢な体は女性らしい柔らかい肢体に抱きしめられる。彼女から発せられる香しい匂いは僕の脳髄を直撃し、思考回路が鈍くなっていく。全身からは力が抜けていき、立つのも困難になりそうだ。
…………ってそうじゃないよ!エロゲじゃないんだぞこれは!
そもそも誰だよこの人!? 入室していきなり抱擁されるわ旦那様と呼ばれるわで僕の頭は大混乱だ。
だからだろうか、自身から発せられたのは情けないことに。
「む、むぐう……」
強く抱きしめられたことにより空気が漏れるような声だった。
「はあぁ、実物を間近で見るとちっちゃくてとても可愛らしいわ! ぎゅううっとしたらすっぽりと覆えてしまうなんて! なのに勇敢に戦い改革を提案した知性を持ち合わせるなんて完璧! まさに私の旦那様ね!」
「ぐぅ……」
「愛らしい! 強い! 賢い! 最高じゃない! よーしよしよし撫で回してしまいましょう!」
「いき、がぁ……」
「こらリイナ。いつまでそうしているつもりだ」
「あら、ごめんなさいお父様。私ったらつい!」
遠くなりつつある意識の中、後ろから呆れたマーチス侯爵の声が聞こえる。侯爵が注意をしたところ、彼女はようやく僕を解放してくれた。危ない、あやうく戦場でもないのにヴァルハラ行きになる所だった……。
…………ん、待てよ? 今この彼女、マーチス侯爵をなんて言った?
僕は乱れた衣服と髪を整えながらマーチス侯爵の方に振り向くと、彼は呆れていた表情を謝罪に変える。
「…………あの、マーチス侯爵」
「本っ当にすまない……」
「いえ……、少々驚きましたがお気になさらずに。ところで、まさかなんですが、こちらの彼女はもしかして……」
「そのもしかしてよ私の旦那様! 私はリイナ・ヨーク。連合王国陸軍魔法少佐でランクはA。本日付で改革特務部部長補佐兼秘書に就任したの。マーチス大将は私のお父様なのよ。よろしくね?」
リイナ・ヨーク。僕と同い年の二十二歳。菖蒲色(あやめいろ)の絹のように細やかで美しい髪の毛を背中まで伸ばした、緑色の瞳の女性だ。有り体に言えば美人。出るとこ出ていて引っ込んでるところは引っ込んでる、同性が羨みそうなボディスタイルだね。なるほど、そりゃ抱きしめられた時ふかふかだったわけだよ。
…………あの時の感触は置いておこう。ちなみに彼女は、本人の言う通りマーチス侯爵の長女――マーチス侯爵には長男がいるので後継はその彼になっている――で、外聞によれば頭脳明晰で魔法の才能もある絵に描いたような完璧美女。ただ、自分に釣り合う男性が現れない限りは結婚する気もなくこれまで幾つもの縁談を断ったって聞いてたんだけど僕に対していきなり旦那様呼ばわり。どういうことなのかさっぱり分からないので、これは仕事が終わり次第彼女に聞いてみた方がいいだろうね。
その彼女。妖艶に微笑むリイナに、終始彼女のペースになっている為にぽかんとしている部署一同。そりゃそうだよね。初出勤してすぐに広がった光景がこれだもん。
しかし、ここで僕がいつまでも困惑していても仕方ないので、改めて自己紹介をする。
「僕はアカツキ・ノースロード。年齢は二十二。連合王国陸軍魔法大佐で、本日から改革特務部部長に就任。王宮伯爵にもなった。魔法のランクは先日正式認証されてAマイナスかな。これから補佐してくれるんだよね。よろしく」
僕はリイナに握手を求めると、彼女は快く握り返してくれた。
突拍子もない行動の被害者たる僕がすぐに立ち直って軍人らしい振る舞いで自己紹介すると、部署の人達も感心したのかまばらではあるけれど拍手が起こる。マーチス侯爵も一安心したのかほっとしていた。
よし、軌道修正は出来たみたいだし気を取り直していこうか。
「改革特務部の皆、書類で君達の履歴は見させてもらったけれど自己紹介をしてもらってもいいかな?これから一緒に働くんだ。本人の口から聞きたいからさ。んー、そうだな。まずは各課長から」
僕が微笑しながら言うと、流石は軍人。課長に就任した四人は僕の前まで歩いてきて一列に並ぶ。
「それじゃあ鉄道改革課から」
「はっ! 本日付より改革特務部鉄道改革課課長を承りました、ジェフ・フリードウッドです。先日までは陸軍輸送部輸送研究課に所属しておりました。階級は大尉であります!」
鉄道改革課課長のジェフ大尉は二十代後半は快活がウリと言った様子の金髪の好青年な男性だった。敬礼も模範的だし、明るそうな雰囲気は好印象だね。
「よろしくね、ジェフ大尉」
「はい! こちらこそよろしくお願いします! 鉄道に先進的な視点を持たれておられるアカツキ大佐の下で働けて光栄であります!」
「専門的な事を聞くことになるだろうか、お願いね。次、兵器改革課課長かな」
「は、はい。自分は本日付で兵器改革課課長を仰せつかりました、ジョセフ・デニスです。階級は中尉から大尉に昇進しました。ぼ、ぼくが課長につけるなんて思ってなかったので驚いています。前は兵器管理局にいました。そ、その、どうかお手柔らかにお願いしますっ」
兵器改革課課長のジョセフ大尉はジェフ大尉とは対象的におどおどした様子の、青い髪の毛の青年だった。歳は僕より半世代上だったはず。身長は僕より二周りも高い百七十シーラもあるのに、百五十シーラしかない上に下手すれば女の子っぽく見られる僕に対して少し怯えている節がある。そんなにびくびくしなくてもいいんだけどなあと思いつつも。
「ジョセフ大尉。課長に選ばれたってことは君が将来、あるかもしれない第二次改革の兵器部門中核を担う事になる可能性もある。だからもっと自信を持っていいよ?」
「ひぇ、アカツキ王宮伯爵閣下は第二次まで考えられているんですか。すごいなあ……」
「まだこれから第一次だからどうなるか分かんないけどね。あぁ、それと僕のことはアカツキ大佐でいいよ」
「す、すみません! アカツキ大佐!」
「たはは……。ジョセフ大尉もこれからよろしくね」
「はいっ」
「さて、次は情報改革課の課長だね」
「はいはーい! あたしは本日付で情報改革課の課長になったキャロル・エンフィールドっす! 階級は魔法大尉っすよー。ランクはBっす。ほら、無線装置は魔法使える人じゃないと扱えないっすから。ここに来るまでは軍の情報局情報研究部に所属してたっす。改革なんて楽しそうな部署に配属されてとてもワクワクしてるっす! これからよろしくお願いします!」
情報改革課課長のキャロル大尉は二十代半ばのメガネをかけた、ショートカットで茶髪のやや小柄な女性だった。軍服の上に白衣を纏っている、この部署では珍しい出で立ちでいかにも技術者って感じだった。性格は喋り方から話しやすそうな様子なので円滑にコミュニケーションは取れるだろうね。ちなみに僕が持っている書類には配属前の部長からコメントが付いていて、生粋の研究畑の者なので暴走しがちな面はあるが有能なので手綱をしっかりと握ってやってくださいと書いてあった。まあ、それくらいなら問題ないだろう。改革なんて傍目から見たらぶっ飛んだ事をする部署なんだから多少ネジの飛んだ人材でも構わないし。
「情報伝達は軍にとって重要事項。キャロル大尉には期待してるよ」
「おまかせあれっす!」
「最後は兵站改革課の課長だね」
「はっ。自分は兵站改革課課長になりましたロイド・ハンコックであります。階級は中尉から大尉に昇進となりました。前配属は兵站管理局であります。兵站は地味な部署ではありますが、アカツキ大佐においては兵站部門にも改革のメスを入れるとのこと。大変嬉しく思います。これからよろしくお願いします」
兵站改革課課長のロイド大尉は三十代初頭の、大柄で少し寡黙な男性だ。髪の毛の色はジェフ大尉と同じ金髪だけど、結構短くしてある。典型的な軍人タイプっていいのかな。質実剛健を体に現したような人だし。いやあ、大柄っていいよねえ……。軍服がすごく似合うし。
「兵站は平時有事に関係無く軍には不可欠な存在。有事ともなれば兵站管理の不届きは死活問題になるからね、重要性はよく知ってるよ。弾が無くちゃ戦えないし、食糧なくちゃ飢えちゃうでしょ?」
「ご最も。、その通りであります。しかし、有事、でありますか」
「二百五十年の平和が続くのが一番いいけど、平和がいつまでも続くのは盲信さ。備えあれば憂いなしってね」
「勉強になります、アカツキ大佐」
「ロイド大尉もそう畏まらなくていいからね。これからよろしく」
「はっ!」
そう言われて少しだけ口角を上げたロイド大尉はまるで歴戦の戦士の笑顔のようだった。実際は兵站管理局の人だから戦うとかはないだろうけど。
「よーし。課長クラスの自己紹介も終わったし次は各員の自己紹介を。短くになっちゃうけど、お願いね。マーチス侯爵、お時間はよろしいですか?」
「構わん。元からある程度の時間は取ってあるし、オレも知っておきたいからな」
「ありがとうございます。じゃあ、鉄道改革課の人からよろしくー」
各員の自己紹介は一人あたり三十秒程度で、三十名以上いることもあってそれなりに時間はかかったけれど滞りなく終えることが出来た。テキパキとこなしていく様を隣にいるリイナ少佐はうっとりした表情で眺めているけれど、気にしたら負けだ。負け。
さて、全員の自己紹介が終わると僕は。
「では、続いてこの改革特務部の直轄管理されるマーチス大将閣下からお言葉を頂きます。マーチス大将閣下、よろしくお願いします」
「うむ。――諸君達、知ってはいると思うが、マーチス・ヨークだ。この部署は大臣直轄部署であり、アカツキ大佐の上司はオレになる。つまりは諸君等もオレの直属の部下となるわけだ。この改革は勅令によって遂行される。早い話が国王陛下肝いりの政策というわけだ。本改革が成功すれば我が王国、我が軍は飛躍的に発展、進化を遂げるだろう。諸君達はその先頭に立って行動する事となる。全力を持って取り組んでくれ。以上だ」
マーチス侯爵の訓示が終わると拍手が起こり、僕はそれを見回してから。
「マーチス大将閣下、ありがとうございました。それでは、今日からこの改革特務部は動き出すからみんな、よろしくね!」
『はっ!』
僕の号令に、全員が威勢よく敬礼して答える。リイナ少佐はというと、相変わらず恍惚たした表情を浮かべて僕を見つめていた。うん、仕事が終わったら絶対に話をしよう。
まあ、何はともあれだ。入室の際にハプニングはあったけれど、改革特務部はこうして無事船出となったのだった。
僕はふっかふかのおっぱいに包まれ、自身の小柄で華奢な体は女性らしい柔らかい肢体に抱きしめられる。彼女から発せられる香しい匂いは僕の脳髄を直撃し、思考回路が鈍くなっていく。全身からは力が抜けていき、立つのも困難になりそうだ。
…………ってそうじゃないよ!エロゲじゃないんだぞこれは!
そもそも誰だよこの人!? 入室していきなり抱擁されるわ旦那様と呼ばれるわで僕の頭は大混乱だ。
だからだろうか、自身から発せられたのは情けないことに。
「む、むぐう……」
強く抱きしめられたことにより空気が漏れるような声だった。
「はあぁ、実物を間近で見るとちっちゃくてとても可愛らしいわ! ぎゅううっとしたらすっぽりと覆えてしまうなんて! なのに勇敢に戦い改革を提案した知性を持ち合わせるなんて完璧! まさに私の旦那様ね!」
「ぐぅ……」
「愛らしい! 強い! 賢い! 最高じゃない! よーしよしよし撫で回してしまいましょう!」
「いき、がぁ……」
「こらリイナ。いつまでそうしているつもりだ」
「あら、ごめんなさいお父様。私ったらつい!」
遠くなりつつある意識の中、後ろから呆れたマーチス侯爵の声が聞こえる。侯爵が注意をしたところ、彼女はようやく僕を解放してくれた。危ない、あやうく戦場でもないのにヴァルハラ行きになる所だった……。
…………ん、待てよ? 今この彼女、マーチス侯爵をなんて言った?
僕は乱れた衣服と髪を整えながらマーチス侯爵の方に振り向くと、彼は呆れていた表情を謝罪に変える。
「…………あの、マーチス侯爵」
「本っ当にすまない……」
「いえ……、少々驚きましたがお気になさらずに。ところで、まさかなんですが、こちらの彼女はもしかして……」
「そのもしかしてよ私の旦那様! 私はリイナ・ヨーク。連合王国陸軍魔法少佐でランクはA。本日付で改革特務部部長補佐兼秘書に就任したの。マーチス大将は私のお父様なのよ。よろしくね?」
リイナ・ヨーク。僕と同い年の二十二歳。菖蒲色(あやめいろ)の絹のように細やかで美しい髪の毛を背中まで伸ばした、緑色の瞳の女性だ。有り体に言えば美人。出るとこ出ていて引っ込んでるところは引っ込んでる、同性が羨みそうなボディスタイルだね。なるほど、そりゃ抱きしめられた時ふかふかだったわけだよ。
…………あの時の感触は置いておこう。ちなみに彼女は、本人の言う通りマーチス侯爵の長女――マーチス侯爵には長男がいるので後継はその彼になっている――で、外聞によれば頭脳明晰で魔法の才能もある絵に描いたような完璧美女。ただ、自分に釣り合う男性が現れない限りは結婚する気もなくこれまで幾つもの縁談を断ったって聞いてたんだけど僕に対していきなり旦那様呼ばわり。どういうことなのかさっぱり分からないので、これは仕事が終わり次第彼女に聞いてみた方がいいだろうね。
その彼女。妖艶に微笑むリイナに、終始彼女のペースになっている為にぽかんとしている部署一同。そりゃそうだよね。初出勤してすぐに広がった光景がこれだもん。
しかし、ここで僕がいつまでも困惑していても仕方ないので、改めて自己紹介をする。
「僕はアカツキ・ノースロード。年齢は二十二。連合王国陸軍魔法大佐で、本日から改革特務部部長に就任。王宮伯爵にもなった。魔法のランクは先日正式認証されてAマイナスかな。これから補佐してくれるんだよね。よろしく」
僕はリイナに握手を求めると、彼女は快く握り返してくれた。
突拍子もない行動の被害者たる僕がすぐに立ち直って軍人らしい振る舞いで自己紹介すると、部署の人達も感心したのかまばらではあるけれど拍手が起こる。マーチス侯爵も一安心したのかほっとしていた。
よし、軌道修正は出来たみたいだし気を取り直していこうか。
「改革特務部の皆、書類で君達の履歴は見させてもらったけれど自己紹介をしてもらってもいいかな?これから一緒に働くんだ。本人の口から聞きたいからさ。んー、そうだな。まずは各課長から」
僕が微笑しながら言うと、流石は軍人。課長に就任した四人は僕の前まで歩いてきて一列に並ぶ。
「それじゃあ鉄道改革課から」
「はっ! 本日付より改革特務部鉄道改革課課長を承りました、ジェフ・フリードウッドです。先日までは陸軍輸送部輸送研究課に所属しておりました。階級は大尉であります!」
鉄道改革課課長のジェフ大尉は二十代後半は快活がウリと言った様子の金髪の好青年な男性だった。敬礼も模範的だし、明るそうな雰囲気は好印象だね。
「よろしくね、ジェフ大尉」
「はい! こちらこそよろしくお願いします! 鉄道に先進的な視点を持たれておられるアカツキ大佐の下で働けて光栄であります!」
「専門的な事を聞くことになるだろうか、お願いね。次、兵器改革課課長かな」
「は、はい。自分は本日付で兵器改革課課長を仰せつかりました、ジョセフ・デニスです。階級は中尉から大尉に昇進しました。ぼ、ぼくが課長につけるなんて思ってなかったので驚いています。前は兵器管理局にいました。そ、その、どうかお手柔らかにお願いしますっ」
兵器改革課課長のジョセフ大尉はジェフ大尉とは対象的におどおどした様子の、青い髪の毛の青年だった。歳は僕より半世代上だったはず。身長は僕より二周りも高い百七十シーラもあるのに、百五十シーラしかない上に下手すれば女の子っぽく見られる僕に対して少し怯えている節がある。そんなにびくびくしなくてもいいんだけどなあと思いつつも。
「ジョセフ大尉。課長に選ばれたってことは君が将来、あるかもしれない第二次改革の兵器部門中核を担う事になる可能性もある。だからもっと自信を持っていいよ?」
「ひぇ、アカツキ王宮伯爵閣下は第二次まで考えられているんですか。すごいなあ……」
「まだこれから第一次だからどうなるか分かんないけどね。あぁ、それと僕のことはアカツキ大佐でいいよ」
「す、すみません! アカツキ大佐!」
「たはは……。ジョセフ大尉もこれからよろしくね」
「はいっ」
「さて、次は情報改革課の課長だね」
「はいはーい! あたしは本日付で情報改革課の課長になったキャロル・エンフィールドっす! 階級は魔法大尉っすよー。ランクはBっす。ほら、無線装置は魔法使える人じゃないと扱えないっすから。ここに来るまでは軍の情報局情報研究部に所属してたっす。改革なんて楽しそうな部署に配属されてとてもワクワクしてるっす! これからよろしくお願いします!」
情報改革課課長のキャロル大尉は二十代半ばのメガネをかけた、ショートカットで茶髪のやや小柄な女性だった。軍服の上に白衣を纏っている、この部署では珍しい出で立ちでいかにも技術者って感じだった。性格は喋り方から話しやすそうな様子なので円滑にコミュニケーションは取れるだろうね。ちなみに僕が持っている書類には配属前の部長からコメントが付いていて、生粋の研究畑の者なので暴走しがちな面はあるが有能なので手綱をしっかりと握ってやってくださいと書いてあった。まあ、それくらいなら問題ないだろう。改革なんて傍目から見たらぶっ飛んだ事をする部署なんだから多少ネジの飛んだ人材でも構わないし。
「情報伝達は軍にとって重要事項。キャロル大尉には期待してるよ」
「おまかせあれっす!」
「最後は兵站改革課の課長だね」
「はっ。自分は兵站改革課課長になりましたロイド・ハンコックであります。階級は中尉から大尉に昇進となりました。前配属は兵站管理局であります。兵站は地味な部署ではありますが、アカツキ大佐においては兵站部門にも改革のメスを入れるとのこと。大変嬉しく思います。これからよろしくお願いします」
兵站改革課課長のロイド大尉は三十代初頭の、大柄で少し寡黙な男性だ。髪の毛の色はジェフ大尉と同じ金髪だけど、結構短くしてある。典型的な軍人タイプっていいのかな。質実剛健を体に現したような人だし。いやあ、大柄っていいよねえ……。軍服がすごく似合うし。
「兵站は平時有事に関係無く軍には不可欠な存在。有事ともなれば兵站管理の不届きは死活問題になるからね、重要性はよく知ってるよ。弾が無くちゃ戦えないし、食糧なくちゃ飢えちゃうでしょ?」
「ご最も。、その通りであります。しかし、有事、でありますか」
「二百五十年の平和が続くのが一番いいけど、平和がいつまでも続くのは盲信さ。備えあれば憂いなしってね」
「勉強になります、アカツキ大佐」
「ロイド大尉もそう畏まらなくていいからね。これからよろしく」
「はっ!」
そう言われて少しだけ口角を上げたロイド大尉はまるで歴戦の戦士の笑顔のようだった。実際は兵站管理局の人だから戦うとかはないだろうけど。
「よーし。課長クラスの自己紹介も終わったし次は各員の自己紹介を。短くになっちゃうけど、お願いね。マーチス侯爵、お時間はよろしいですか?」
「構わん。元からある程度の時間は取ってあるし、オレも知っておきたいからな」
「ありがとうございます。じゃあ、鉄道改革課の人からよろしくー」
各員の自己紹介は一人あたり三十秒程度で、三十名以上いることもあってそれなりに時間はかかったけれど滞りなく終えることが出来た。テキパキとこなしていく様を隣にいるリイナ少佐はうっとりした表情で眺めているけれど、気にしたら負けだ。負け。
さて、全員の自己紹介が終わると僕は。
「では、続いてこの改革特務部の直轄管理されるマーチス大将閣下からお言葉を頂きます。マーチス大将閣下、よろしくお願いします」
「うむ。――諸君達、知ってはいると思うが、マーチス・ヨークだ。この部署は大臣直轄部署であり、アカツキ大佐の上司はオレになる。つまりは諸君等もオレの直属の部下となるわけだ。この改革は勅令によって遂行される。早い話が国王陛下肝いりの政策というわけだ。本改革が成功すれば我が王国、我が軍は飛躍的に発展、進化を遂げるだろう。諸君達はその先頭に立って行動する事となる。全力を持って取り組んでくれ。以上だ」
マーチス侯爵の訓示が終わると拍手が起こり、僕はそれを見回してから。
「マーチス大将閣下、ありがとうございました。それでは、今日からこの改革特務部は動き出すからみんな、よろしくね!」
『はっ!』
僕の号令に、全員が威勢よく敬礼して答える。リイナ少佐はというと、相変わらず恍惚たした表情を浮かべて僕を見つめていた。うん、仕事が終わったら絶対に話をしよう。
まあ、何はともあれだ。入室の際にハプニングはあったけれど、改革特務部はこうして無事船出となったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる